慶應義塾大学病院KOMPAS

HOME

検索

キーワードで探す

閉じる

検索

お探しの病名、検査法、手技などを入れて右のボタンを押してください。。

鼻副鼻腔腫瘍

びふくびくうしゅよう

戻る

一覧

概要

鼻(鼻腔)の周りには「副鼻腔(ふくびくう)」と呼ばれる4つの空間(上顎洞・篩骨洞・前頭洞・蝶形骨洞)があります(図1)。それら鼻腔・副鼻腔にも腫瘍は発生します。鼻腔腫瘍の過半数、副鼻腔腫瘍の約10%は良性腫瘍とされ、代表例は乳頭腫と呼ばれる腫瘍です。このうち乳頭腫全体の半数を占める内反性乳頭腫(inverted papilloma)と呼ばれるタイプは再発傾向が強く、がん化やがんの合併も約3~7%程度みられると報告されています。鼻副鼻腔の悪性腫瘍は全悪性腫瘍の1%以下で、頭頸部がんの約3~12%を占めます。

部位は上顎洞が最も多く(約60%)、次いで鼻腔(約20%)、篩骨洞(約15%)、前頭洞・蝶形骨洞(約3%)です。最も多い上顎洞がんで年間700~800人の患者さんが国内では新たに診断されています。発生部位により組織型の頻度に差はありますが、最も多い組織型は扁平上皮がん(約55%)で、そのほかに悪性リンパ腫、腺系悪性腫瘍、悪性黒色腫、嗅神経芽細胞腫、肉腫、未分化がんなどが生じます。発症要因としては喫煙、副鼻腔炎などが挙げられます。60~80歳代が好発とされ、やや男性に多い腫瘍です。

図1

図1

症状

良性腫瘍・悪性腫瘍ともに初期では症状が出づらく、多くは進行した状態で見つかります。急性炎症性疾患の症状と重複する部分もありますが、腫瘍でみられる症状は週あるいは月単位で進行し自然回復することは少ないです。また腫瘍の圧迫や浸潤による疼痛、神経麻痺(しびれ)なども頻度が高いです。以下のような症状が、週単位・月単位で続き悪化する場合には耳鼻咽喉科・頭頸部外科を受診してください。
① 反復する鼻出血、血液の混じる鼻水
② 鼻づまり(特に片方の鼻に症状が強く続く場合)、悪臭
③ 痛み(頭痛、顔面痛、歯痛、あごの痛みなど)
④ 流涙、物が二重に見える
⑤ 顔面腫脹、鼻・顔面の変形、口が開けづらい、咀嚼しにくい
⑥ 首のしこり

診断

診断方法はほかの頭頸部腫瘍と同様に経鼻ファイバースコープ、CTMRIPET-CTなど画像診断と組織を一部採取(生検)して行う病理診断を組み合わせて行います。鼻副鼻腔腫瘍がほかの部位と異なる特徴としては、腫瘍の観察や組織採取が難しい場所に発生しうることです。そのため画像診断で病気を推定し、診断と治療を兼ねて全身麻酔あるいは局所麻酔で手術を行うこともあります。また、翼口蓋窩・側頭下窩と呼ばれる副鼻腔外周囲に発生するまれな腫瘍では生検も容易ではないことがあります。慶應義塾大学病院ではそれらにも対応しています。

治療

良性腫瘍の場合には、一般的に手術療法が選択されます。手術は経鼻内視鏡手術が多くを占めますが、腫瘍の大きさや部位、経過などから口腔(歯齦部:歯茎と上唇の間の部分)切開からのアプローチや鼻の外側の顔面皮膚切開アプローチを用いることもあります。悪性腫瘍の場合には、ほかの頭頸部がんと同様に手術療法、放射線療法、薬物療法を組み合わせた集学的治療が行われます。近年、経鼻内視鏡手術の発展に伴い、ステージI, IIの早期がんに対しては内視鏡下腫瘍摘出術が第一選択となることが増えています。しかし、ステージIII, IVの進行がんの場合では鼻の外側の顔面に皮膚切開を行う外鼻切開を用いた腫瘍摘出術が選択される場合もあります。またそれらの進行がんや悪性度の高いがんでは術後(化学)放射線療法を行うことがあります。さらにあらゆる進行度において放射線療法、重粒子線治療、陽子線治療などが行われる場合があります。

上顎洞がんの治療

鼻副鼻腔がんの中で頻度の多い上顎洞がんの治療は、基本的に進展範囲に合わせた手術療法(上顎部分切除、上顎全摘、上顎拡大全摘)±術後(化学)放射線療法です。上顎全摘や上顎拡大全摘では形成外科と合同で再建手術を行います。また当院では歯科口腔外科と合同で即時義歯を術中作成装着まで行うことで、術後早期の経口摂取を実現しています。組織型や病気の進行程度(病期)によっては手術療法を行わずに化学放射線療法のみで治療を行う場合もあります。近年では超選択的動注化学療法併用放射線療法が行われる場合があり、慶應義塾大学関連病院と連携して治療の選択を行っています。

頭蓋底手術・複数科との合同手術

鼻副鼻腔は脳(頭蓋底)・眼球・口蓋といった重要な臓器に囲まれているため、進行がんではそれらの領域も含めた手術が必要になります。当院では脳神経外科、形成外科、歯科口腔外科、眼科と連携しそれら進行がんに対しても積極的に治療を行っています。特に開頭手術(頭蓋底手術)と経鼻内視鏡手術を同時並行して行う手術は、手術時間を短縮し術後合併症も少なく治療をすることができます。手術の適応は各々異なりますので、当院にご相談ください。

慶應義塾大学病院での取り組み

鼻副鼻腔良性・悪性腫瘍の治療を積極的に行っています。特に開頭手術(頭蓋底手術)(図2)や開頭手術(頭蓋底手術)と再建手術を要するもの(図3)は、脳神経外科、形成外科、歯科口腔外科、眼科と連携し合同で手術を行っています。また当院では、嗅神経から発生する嗅神経芽細胞腫(図4)についても、経鼻内視鏡手術、開頭手術と経鼻内視鏡手術を併用した頭蓋底腫瘍切除術を積極的に行っています。

図2.副鼻腔がん(非腸管型腺がん pT4aN0M0 pStage IVA)
頭蓋底手術(脳神経外科)、経鼻内視鏡手術(耳鼻咽喉科)の同時並行手術を行った。

図3.鼻腔がん(鼻中隔 粘表皮がん cT3N0M0 cStageⅢ)
頭蓋底手術(脳神経外科)、経鼻内視鏡手術・硬口蓋部分切除術(耳鼻咽喉科)、顎義歯即時再建(歯科口腔外科)、遊離皮弁による口蓋再建術(形成外科)の合同手術を行った。

図4.嗅神経芽細胞 KadishB
頭蓋底手術(脳神経外科)、経鼻内視鏡手術(耳鼻咽喉科)の同時並行手術を行った。

さらに詳しく知りたい方へ

文責:耳鼻咽喉科外部リンク
最終更新日:2022年12月1日

ページTOP