音声ブラウザ専用。こちらよりメニューへ移動可能です。クリックしてください。

音声ブラウザ専用。こちらよりメインコンテンツへ移動可能です。クリックしてください。

KOMPAS 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト
お探しの病名、検査法、手技などを入れて右のボタンを押してください。
慶應義塾
HOME
病気を知る
慶應発サイエンス
あたらしい医療
KOMPASについて

ホーム > 病気を知る > 皮膚の病気 > 皮膚の腫瘍 > 悪性黒色腫

悪性黒色腫

あくせいこくしょくしゅ

症状

皮膚を構成している細胞の中に、メラニン色素を産生する細胞があり、これを色素細胞(メラノサイト)と呼びますが、この細胞ががん化したものが悪性黒色腫です。通常、皮膚の悪性黒色腫は黒く「ほくろ」のように見えるので、「ほくろのがん」と言った方が理解しやすいと思いますが、通常の良性のほくろは簡単に悪性に変化するものではないと考えられています。しかし、一般の方が良性のほくろと思っているものの中に、悪性黒色腫の始まりのものが含まれることもあります。
皮膚の悪性黒色腫は大きく4つの病気のタイプに分けることができます。それぞれ、1) 末端黒子型(足底や手のひら、爪などに生じる、平らなほくろ状のもの)、2) 結節型(しこりをつくるもの)、3) 表在拡大型(小さなしみが拡大し、中央にしこりを作るもの)、4) 悪性黒子型(濃淡のある不整形のしみに似たもの)と呼ばれます。

図1.足の指に生じた悪性黒色腫

図1.足の指に生じた悪性黒色腫

診断

最初は黒いシミとして始まり、徐々に不規則な形をとって拡がります。早期の悪性黒色腫とホクロとを肉眼的に鑑別するのは困難ですが、診断のポイントとして、1) 全体の形が非対称的で、2) 縁どりが凹凸不整、 3)黒色、茶褐色、青色などが入り混じり、色の濃さが不均一、4) 大きさが7mm以上、5) 隆起している箇所がある、6) 大きさや形が変化してきている 、などの徴候がみられる場合は要注意です。 従来、医師が肉眼で観察し、悪性・良性を見分けていましたが、近年、診断に有用なツールである「ダーモスコピー」が普及し、悪性黒色腫の検査精度が格段に向上しています。足の裏などに数多く刻まれた「皮溝(ひこう)」と呼ばれる細い筋と、皮溝と皮溝の間で丘のように高くなった「皮丘(ひきゅう)」の観察が、診断に役立つことが分かったためです。悪性黒色腫では逆に、皮丘部に黒い色素が見られます。

図2.悪性黒色腫のダーモスコピー

図2.悪性黒色腫のダーモスコピー
太矢印が皮丘、細矢印が皮溝です。色素が皮丘に強く見られる。

治療

基本的に病期(病気の進み具合)に合った治療方針で行います。従来の治療経験や研究データから推奨された治療法が確立されてきて、それが標準的治療とされています。まず、最初に発生した部位は手術により広めに切除します。リンパ節の転移に対して、その領域のリンパ節を全部切除するリンパ節廓清術(がん転移の可能性があるリンパ節を外科的に除去すること)という手術を行う場合もあります。手術でがんが取り切れたと思われる場合でも、将来的に転移が起こる危険性が高いと考えられる病期の場合は、予防的手段として術後に抗がん剤の点滴やインターフェロンという薬の注射をすることがあります。インターフェロンはそれ自体が、黒色腫に対する効果を持つ一方で、患者さんの腫瘍に対する免疫力も増強し、転移を防ぐ効果があります。もう1つ、悪性黒色腫の治療方針を大きく変えたのがセンチネルリンパ節生検です。センチネルリンパ節とは、がんの病巣から最初にがん細胞が流れていくリンパ節です。ここに転移がなければ、その先にも転移はない。したがって、リンパ節郭清を行う(腫瘍が発生した部位のリンパ節を全部切除する)必要はないとする考え方です。慶應義塾大学病院皮膚科では放射線科と協力して、皮膚悪性腫瘍におけるセンチネルリンパ節生検を施行しています。

進行期(切除不可能もしくは他の臓器に転移がある状態)においては、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、イピリムマブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ、エンコラフェニブ、ビニメチニブ、ベムラフェニブといった抗がん剤治療を行います。近年は新薬や細胞療法などの開発が進んでおり、治験や臨床研究を実施している場合があります。

生活上の注意

欧米では悪性黒色腫の主な発生原因も紫外線と考えられています。悪性黒色腫をはじめ、その他の皮膚がんの発生数も年々増加傾向にあり、海水浴やスポーツ、仕事などで長時間、過度の紫外線を受ける場合は、皮膚を紫外線から防御することが非常に大切です。

慶應義塾大学病院での取り組み

当科では、ダーモスコピーや各種画像検査(CT、PET-CT、MRI、エコーなど)および病理組織検査の結果に基づいて正確に診断し、外科的治療、薬物療法(化学療法)、放射線治療など、患者さんの病態に合わせた治療法を選択していただけるよう努めております。また、治療後も外来で定期的な検査や診察を行うことによって、万が一再発した場合でも、早期発見・早期治療が可能となります。当科で皮膚の悪性腫瘍と診断された患者さんの多くが腫瘍外来(火・水・金・土)に定期的に通院されております。腫瘍外来では、定期的な血液検査(腫瘍マーカーなど)、画像検査による治療後のフォローアップ、外来化学療法を行っております。 当科では、転移のある患者さんを対象とした先進医療B「KIT遺伝子変異のある進行期悪性黒色腫に対するKIT阻害薬と抗PD-1抗体併用療法外部リンク 」を実施しております。

さらに詳しく知りたい方へ

  • 皮膚悪性腫瘍ガイドライン外部リンク(日本皮膚科学会)
    全国の皮膚科医が参加して構成する学会組織の患者さん向けのWebサイトです。日本における悪性黒色腫の治療ガイドラインも閲覧可能です。
  • 腫瘍外来外部リンク(慶應義塾大学病院皮膚科)
    当院の腫瘍班の取り組みが書いてあります。
  • 悪性黒色腫を対象とした先進医療・患者申出療法パンフレット外部リンク (NPO法人Dermy)
    NPO法人皮膚がん・免疫・アレルギー疾患治療支援センターが作成した悪性黒色腫の患者さん向けパンフレットが閲覧可能です。
  • 皮膚科外部リンク(東京女子医科大学東医療センター)
    当院で特殊外来を担当されていた田中勝教授の作成されたダーモスコピーに関する情報です。

文責: 皮膚科外部リンク
最終更新日:2020年10月22日

▲ページトップへ

慶應義塾HOME | 慶應義塾大学病院