臍ヘルニア
概要
臍ヘルニアとは、臍の緒が乾燥して取れた後、臍の根元が十分に閉鎖されていない場合、泣いたりいきんだりして腹圧が上昇したときに、臍の根元から腸が皮下まで脱出し、臍が膨らんだ状態になることです。この変化をもって診断とします。内容は指で押すと容易に腹腔に戻せます。
新生児の20~30%に認められるものの、2歳時までに90%で膨隆を認められなくなります。鼠径ヘルニアのように嵌頓(かんとん)を起こすことはほとんどありません。
症状・診断
診断は、臍の根元から腸が皮下まで脱出し、臍が膨らんだ状態になるという特徴的な臨床所見で診断されます。内容は指で押すと容易に腹腔に戻せます。
新生児の20~30%に認められるものの、多くは生後2~4ケ月にヘルニアの大きさは最大となり、以後縮小し、大半は生後6ヶ月〜2歳時までに90%の患児で膨隆を認められなくなります。鼠径ヘルニアのように嵌頓を起こすことはほとんどありません。約4%の出生児にみられるとされています。
治療
90%ぐらいは2歳までに腹壁の孔(あな)が次第に縮まって自然に治ります。そのため2歳頃までは放置してもかまいません。3~4歳になっても自然治癒しない場合や腹壁の孔(あな)が2cm以上と大きな場合は手術を行います。また孔は閉鎖しても巨大なでべその状態になり、患児が臍の形を気にするようであれば臍の形成術を行います。
手術
臍の下縁半周を切って、皮膚の下を剥がして腹壁の孔から出たヘルニアの袋(腹膜)を出し、これを切って取り腹壁の孔を閉鎖します。このとき腹直筋の膜(硬い膜)同士を糸で縫合閉鎖することが重要です。この後、できるだけ臍の形となるように陥凹(かんおう)ができるように形成します。巨大臍ヘルニアでは余剰皮膚を切って、形を整えるのが困難なこともあります。慶應義塾大学病院での入院加療は原則、手術前日に入院、手術翌日に退院とします。
*臍ヘルニア圧迫療法とは
臍ヘルニアのほとんどは自然治癒すること、圧迫療法を行っても治癒率は変わらないと考えられていたことから、何もせずに2歳まで待つことが普通でした。
しかしここ最近になり、圧迫療法を行うと治癒が早かったり、治った時の見た目が良くなったりすることが報告されるようになり、2011年に報告されたアンケート調査によると、日本の小児外科専門医の約6割がこの治療法を行っています。
具体的な方法は
- 臍ヘルニアのでっぱりを戻す。
- 臍部に上に綿の球を乗せ、しっかりと押し当てる
- 綿球を皮膚で覆って固定し、水が入らないように透明なフィルムを貼る。
臍圧迫法は外来通院で施行しますが、指導によって正しい手技を身につければ主に自宅での管理も可能です。
文責:
小児外科
最終更新日:2020年10月15日