合指症
概要
合指症とは、手または足の指がくっついている(癒合している)状態です(図1)。
図1.合指症の例
疾患の概略と原因
胎児の手は、最初一枚の板状をしており、その一部が壊死(えし:組織が死滅すること)して裂け目が生じることにより手指が発生します。その分離が不十分な場合に、合指が生じます。合指症は手指・足趾の先天性疾患の中では最多であり、1,000~3,000症例に1例の割合で発生します。手では中指(なかゆび)・環指(くすりゆび)の間の発生率、足趾では第2・第3趾間に多いとされています。単独でみられる場合も多いですが、しばしば多指症・短指症・巨指症など他の手指先天性疾患を合併します。
症状
合指間で共有する組織の種類により皮膚性合指症・線維性合指症・骨性合指症に分類されます。また癒合の高さもさまざまです。
皮膚性合指では皮膚のみの共有で、各指はそれぞれ独立した骨・靭帯を持ちます。線維性合指症では腱や靭帯が癒合しており、良好な機能回復を得るにはそれらの分離が必要です。骨性合指では骨が共有されています。このタイプの合指症ではそれぞれの成分の大きさが小さいことが多く、2指の分離を行うといずれかの手指が小さくなりやすい傾向があり、指の方向のゆがみが残る可能性があります。このため、大きさの矯正のために複数回の手術が必要とされることもあります。
治療
時期
成人に比較すると乳幼児期においては手指における血管・神経は小さいです。そのため手術は通常拡大鏡を使用して行いますが、それでも解剖学的構造を把握することが困難な場合が良く存在します。したがって操作上からは、手指がある程度大きくなってから手術を行った方が有利と言うことができます。また、乳児の手指は通常、屈曲位をとっており、術後の安静を保つことが困難です。このため、5~7歳程度まで待機したのちに手術を行うべきであるという説もあります。しかし特に手指の合指症の場合には露出部でもあり、患児の社会生活的側面からは早期の手術が望ましいと言えます。さらに、合指を放置することが手指の成長のバランスを損う可能性も否定できません。加えて、たとえば拇指(おやゆび)と示指(ひとさしゆび)が合指となっているような症例においては、両指の運動方向性が大きく異なるために、一部の関節が脱臼して均衡をとっていることがあります。
以上のように、手術時期の決定にあたっては対立する要素が存在します。従って、個々の症例に応じこれらの要素を検討して上で手術時期を決定する必要性があります。当院では、症例に応じて、患者さんご家族とご相談の上、主として1歳前後~2歳で手術を行っています。
手術
合指の分離および指間の形成・皮膚欠損部への植皮術を行います。植皮の際には鼡径部を使用する場合もありますが、術後の色素沈着を来たす場合があります。外顆(がいか:くるぶしのそとがわ)・または足底部皮膚を使用する方が整容的に良好な結果が得られることが多いとされています。
また、足趾は手指に比較して長さが短く、その合指症においては治療の方法が若干異なります。手指の合指症においては指分離によって生じた指間皮膚欠損部に対しては、術後のひきつれ(拘縮)を防止するために、ほとんどの場合に内顆(ないか:くるぶしのうちがわ)・外顆よりの植皮が必要です。しかし合趾症において趾間に皮膚欠損が生じた場合でも、欠損部が比較的小さい場合には、皮膚欠損部を自然上皮化させた方が良好な結果を得られることもあります。さらに、足趾において手指と同様な方法で趾間を形成した場合、趾間が目立ちすぎ、かえって整容上不良な結果を招く可能性もあります。このような場合にはZ形成術というキズを延長する方法を使用して趾間を形成します。
固定期間・後療法
合指の程度により異なります。皮膚成分のみの合指症で、手指間に植皮を行った場合には、ギプス固定は1~2週間で解除し、リハビリを開始します。腱移行や、関節形成が必要な症例では2~3週間の固定を行います。また、皮膚欠損の範囲が大きく、術後手指拘縮の可能性が高い場合には、装具の装着を6か月程度継続します。
指の変形についてご相談のある方は、まずは下記外来にてご相談ください。
担当:荒牧典子(水曜午前)
さらに詳しく知りたい方へ
- よくわかる子どものための形成外科 / 中島龍夫編 大阪 : 永井書店, 2005.3
文責:
形成外科
最終更新日:2017年1月23日