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不妊症

ふにんしょう

不妊症とは?

妊娠を希望している夫婦が、「一定期間」通常の性生活を行っても妊娠しない状態を不妊症といいます。この「一定期間」ですが、アメリカ生殖医学会(ASRM)では1年、国際産科婦人科連合(FIGO)では2年としています。

わが国では2年以上経過しても妊娠が成立しない場合を不妊症と診断するのが一般的でした。従来、健康な男女が通常の性生活を営んでいる場合、1年以内に約80%、2年以内では約90%が妊娠するといわれてきました。従って、残りの10%がこの定義でいう不妊症のかた、ということになります。

しかし、女性の結婚年齢が高齢化していること、女性の年齢が高いほど妊娠しにくくなることから、20代前半、20代後半、30代前半、30代後半のそれぞれの年代で、1ヶ月あたりの妊娠率は25%、15-20%、10%、8.3%と次第に低下し、一方妊娠するまでにかかる月数は4ヶ月、5ヶ月、10ヶ月、12ヶ月と次第に延長します。つまり妻の年齢が上がると妊娠する確率が低下したり、妊娠するまでの時間が長くなることは重要です。このように、女性の年齢は不妊にかかわる非常に重要な因子です。

では、"いつ産婦人科を受診するのがよいのか"というと、20代であれば半年くらいで、30代でも1年で妊娠することがほとんどなので、普通に性生活を営んでも1年して妊娠しなければ受診したほうがよいといえます。ただし、妻の年齢が高め(35歳以上など)の場合は、できるだけ早期に治療を開始したほうが妊娠するチャンスが多くなるので、半年でも妊娠しない場合には治療対象と考える意見もあります。これは、半年待って妊娠する可能性より、半年時間が過ぎて妊娠できなくなるリスクのほうが大きいという考え方からでています。

また、月経不順や月経困難症(強い月経痛)がある場合、以前に婦人科の手術(子宮筋腫や卵巣嚢腫など)を受けたことがある場合なども早めに受診を考えた方がよいでしょう。

さらに、一度も妊娠した既往がない場合を原発性不妊症、妊娠の既往があるもののその後の妊娠がみられない場合を続発性不妊症といいます。

不妊症の原因

まず、妊娠の仕組みについて説明します。

  1. 脳から卵巣を刺激するホルモンが分泌され、卵巣で卵子が成熟し排卵する。
  2. 卵巣から排出された卵子が卵管采にとりこまれる。
  3. 精子が膣内から、子宮内、卵管へと上昇する。
  4. 卵管内で卵子の周囲に精子が集まり、受精する。
  5. 受精卵が卵管内を胚分割しながら、子宮まで運ばれる。
  6. 受精卵が子宮内に着床する。(妊娠の成立)

これらすべての過程がうまくいった場合に妊娠が成立します。つまり、どこかひとつでも障害がおこると妊娠しにくくなるため、障害部位・不妊原因にはさまざまな原因があることがわかるとおもいます。
次に不妊症の主な原因について説明しましょう(表1参照)。まず、大きく女性側と男性側による原因に分けられます。その割合は一般的に、1/3が女性側、1/3が男性側、1/3が両者によるものと言われていて、決して女性側に多いというものではありません。
また、現在の診断技術では原因を見つけることができない場合があり、このような不妊を原因不明不妊と呼び、不妊症の約10%を占めるといわれています。しかし、最近では晩婚化により患者年齢が高くなっているため、年齢因子を含む原因不明不妊は確実に増加しています。

表1

 

原因(頻度%)

卵管因子
(35%)

卵管が細くなったり、詰まったり、周りの組織と癒着をおこして動きが悪くなったりすると、精子と卵子が卵管の中で出会えなくなって不妊になる。クラミジアによる卵管炎、子宮内膜症、手術の既往などが原因になる。

排卵因子
(15~20%)

卵巣にある未熟な卵子は、脳から放出されるホルモンの作用によって成熟し、卵巣から放出される(排卵)。卵子が成熟しなかったり、成熟しても外に出られなかったりする場合、妊娠しにくくなるが、これを排卵障害という。脳からのホルモン分泌不全、高プロラクチン血症、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、甲状腺機能の異常、卵巣機能低下などが原因になる。

子宮因子(15%)

子宮内腔や内膜に異常があると、受精卵が着床できず不妊になる。子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮腺筋症、子宮奇形、感染症や妊娠中絶による子宮内腔の癒着、子宮内膜の増殖不全(子宮内膜が厚くならないこと)などが原因になる

子宮頚管の異常
(10~15%)

子宮頚管の粘液は排卵期に量が増え、サラサラとした状態へ変化して精子が運動しやすい状態になる。頚管に先天的異常や炎症、腫瘍などがある場合や、粘液の性状が悪い場合は精子の遡上が妨げられ不妊になる。また抗精子抗体(精子に結合して運動や機能を障害する抗体)もその原因のひとつと言われる。

黄体機能不全

排卵後の卵巣から分泌される黄体ホルモンは、子宮内膜を受精卵が着床しやすい分泌期内膜へ変える。黄体ホルモンの分泌不全や子宮内膜のホルモンに対する反応不全を黄体機能障害という。

子宮内膜症

本来は子宮内腔にしか存在しない子宮内膜が、卵巣や腹膜など異所性に発生する病気である。内膜症が不妊を引き起こす原因は多岐にわたるが、未だ不明な点も多い。内膜症患者の約30%が不妊を合併し、また原因不明の不妊患者の約50%に腹腔鏡検査で内膜症が見つかると言われる。

子宮筋腫

筋腫は30歳以上の女性の20~30%に認められる。一般的に不妊の原因と考えられやすいが、筋腫があっても妊娠することも多く、不妊原因となっているのはその一部である。ただ、一般に子宮内腔に飛び出した形の筋腫(粘膜下筋腫)は不妊原因となる可能性が高く、反対に子宮の外側に飛び出した形の筋腫(漿膜下筋腫)は不妊の原因となりにくいといわれる。筋腫が不妊の原因となっているかどうかを確実に判断する方法はないが、筋腫以外の不妊原因がない患者に筋腫をとる手術をすると、手術の後妊娠する確率は約50%と言われる。

造精機能障害
(70~90%)

精液検査の正常値はWHOマニュアルによると、精液量:2ml 以上、精子濃度:2000万/ml以上、運動率:50%以上とされている。造精機能低下の原因は不明なことが多いが、精索静脈瘤、内分泌異常、染色体異常なども原因になる。

精路通過障害

精子の通り道である精巣上体、精管、射精管に閉塞などの障害が生じた場合。鼠径ヘルニア手術後、先天的欠損などが原因になる。

副性器障害

前立腺、精嚢、精巣上体に炎症などの障害が生じた場合。

性機能障害

勃起障害や射精障害など。


不妊症の治療法

 まず不妊症の基本的な検査(別項参照)を行って不妊原因を探し、治療法を選択します。(表2)

表2

原因

治療法

卵管因子

主に手術療法と体外受精がある。手術療法は腹腔鏡や、卵管鏡といった特殊な内視鏡を用いて卵管と周囲の癒着をはがしたり、詰まっている卵管の通りをよくしたりする。このような手術をすると、自然に妊娠することもあるが、一方手術をしても長い間妊娠しない場合や重症の卵管の障害がある場合や、年齢が高い場合には体外受精を選択することもある。

排卵因子

主にクロミフェン(内服薬)やゴナドトロピン製剤(注射薬)などの排卵誘発剤を用いる。高プロラクチン血症の場合はプロラクチンを下げる薬を、また甲状腺機能が異常の場合はそれにあった内服薬で治療する。また、PCOSの場合は、手術療法(卵巣表面に電気メス、レーザーなどで穴を開けて排卵しやすくする)が選択される場合もある。

子宮因子

子宮鏡などを用いて、子宮腔内の病変を切除する。

子宮頚管の異常

頚管粘液の性状が悪い場合は主に人工授精を行う。もし、炎症を認める場合は抗生物質を投与する。

黄体機能不全

主に高温期に黄体ホルモン(内服薬、注射、腟剤)の補充やhCG(絨毛性性腺刺激ホルモン)注射を行う。

子宮内膜症

軽度の場合は、原因不明不妊と同様に扱う。重症の場合は、腹腔鏡手術などで病変を切除した後自然妊娠を期待するか、あるいは卵管の状態や年齢を考慮して早めに体外受精を検討する。

子宮筋腫

筋腫以外の不妊原因が明らかではない場合、あるいは筋腫に伴う自覚症状(腹痛や過多月経など)を認める場合は手術(子宮筋腫核出術)療法を考慮する。

造精機能障害

軽症では内服薬が有効な例もあるが、一般的には精液所見にあった治療、人工授精(軽症)→体外受精→顕微授精(重症)を選択することが多い。精巣の血液の流れが悪くなって精子の力が弱くなる精索静脈瘤という病気に対しては、手術が有効であるという報告もある。また、夫に全く精子がない場合(無精子症)には、第三者から精子を提供してもらう非配偶者間人工授精(AID)という治療法もある。

精路通過障害

精子輸送路再建手術で自然妊娠を期待するか、あるいは最近では精巣や精巣上体の精子を用いて顕微授精を行うことが多い。

副性器障害

炎症がある場合は、抗生物質や消炎剤を用いる。

性機能障害

人工授精など。


 次に、不妊原因がつきとめられない原因不明不妊の治療法について説明します。この状態ではどこに原因があるかがわからないため、基本的に患者さんに負担が少ない自然の妊娠に近い治療法から開始して、妊娠に至らない場合に次のステップへ移るのが普通です。

Step 1:タイミング療法

排卵期を予測し、性交渉のタイミングを指導いたします。
超音波による卵胞径のモニタリング、基礎体温表、または市販キットによる尿中ホルモンのモニタリングにより排卵期を予測し、タイミング指導を行います。タイミング療法を継続する期間に関しては明確なエビデンスは示されていませんが、年齢、不妊期間、既往妊娠の有無、不妊原因を考慮し、3-6回までのタイミング療法が目安となり、それまでに妊娠しない場合は次のステップに進みます。

Step2:人工授精(AIH)

精液から運動性良好な精子を集め、子宮内に注入する方法です。
機能性不妊の場合、1回のAIHでの妊娠率は約7%、患者あたりの累積妊娠率は約25%(但し、患者年齢により変わる)、排卵誘発を行った際の1回のAIHでの妊娠率は約12%と高い妊娠率が得られる一方、多胎妊娠率は平均13%と高いのが問題となり、治療法の選択を考慮します。妊娠例の多くは、3-6回位までのAIHで妊娠しますので、それまでに妊娠しない場合は次のステップに進みます。

Step3:体外受精(IVF)

卵子を取り出し、体外で精子と受精させ、できた受精卵を子宮内に戻す方法です。
1回のIVFでの妊娠率は約25%であり、カップルによっては妊娠成立までに数回の治療を繰り返す必要があります。累積妊娠率はIVFを施行して6回までは上昇曲線をたどりますが、それ以降は上昇傾向は認められないことから、治療法を再考する必要があります。重度の造精機能障害やIVFで受精障害を認める場合などは更に次のステップへ進みます。

Step4:顕微授精(ICSI)

卵子を取り出し、体外で1つの精子を直接卵子の中に注入して授精させる方法です。精巣や精巣上体から採取した精子でも用いることが可能です。
IVFでの受精障害症例や高度の男性不妊症例でIVFで受精が得られないことが予想される症例が適応となります。繰り返してICSIを実施した場合、その累積妊娠率を検討した結果、男性不妊症においては全妊娠例の80%以上が5回目までに妊娠しており、受精障害例においては、累積妊娠率では全妊娠例の80%以上は4回目までに妊娠しているのが現状です。
原因不明不妊の主な原因と考えられているのは、(1) 排卵した卵子を卵管采でpick upする過程の障害、(2) 加齢に伴う卵子の質(妊孕性)(にんようせい)の低下、と考えられています。(1) については、体外受精が有効ですが、(2) については現在有効な治療法はありません。そのため、女性年齢が上がる(38歳以上など)、あるいは卵巣予備能(抗ミュラー管ホルモンAMH)が低下するほど、たとえステップアップして体外受精まで試みても妊娠に至りにくくなるので、年齢の高い患者さんほど早めのステップアップが必要となります。
卵子が赤ちゃんをつくる力を失うのは人によって差があるために、38歳を過ぎてからあまり自然なかたちでの妊娠にこだわったり、同じ治療法を長く続けることは、妊娠できる期間を無駄に使っている危険性もあります。そのため、どのステップから治療を開始するか、あるいはどの段階で次のステップへ進むかという判断は、その方の病態や年齢を十分に考慮して決めていく必要があるといえます。

文責: 産科外部リンク
最終更新日:2014年6月26日

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