はじめに
2022年4月より、慶應義塾大学病院小児科では小児リウマチ性疾患や自己炎症性疾患に関する精査・加療を専門に行う「小児リウマチ・膠原病外来」を開設しています。
小児リウマチ・膠原病外来では、若年性特発性関節炎や全身性エリテマトーデスといったリウマチ性疾患と診断された患者さんの治療だけでなく、「リウマチ疑いと言われたけど、どうしたら良いか分からない」という方へのセカンドオピニオンや、「原因不明の発熱を繰り返している」「発熱がずっと続いている」患者さんへの原因検索も行います。以下に小児リウマチ・膠原病外来の診療内容について具体的にお示しします。
小児リウマチ性疾患、自己炎症性疾患とは
小児リウマチ性疾患
リウマチ・膠原病は結合組織に起こる炎症によって、全身の様々な部位に障害が起きる病気の総称です。その中で小児期(16歳未満)に発症したものを小児リウマチ性疾患と呼びます。
具体的な病名は若年性特発性関節炎(若年性関節リウマチ)、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、多発性筋炎/皮膚筋炎、シェーグレン症候群、ベーチェット病などです。また、血管の炎症が主体となる川崎病、IgA血管炎(ヘノッホ・シェーンライン紫斑病)、高安動脈炎、ANCA関連血管炎(顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症)などもこの疾患群に含まれます。
自己炎症性疾患
近年、周期的に発熱を繰り返す疾患や長期に発熱を来す疾患の中に免疫に関連した遺伝子の異常により発症するものがあることが分かってきており、自己炎症性疾患と呼ばれています。具体的には家族性地中海熱やPFAPA症候群(周期性発熱・アフタ性口内炎・咽頭炎・頚部リンパ節炎症候群、原因遺伝子不明)、慢性再発性多発性骨髄炎/慢性非細菌性骨髄炎(CRMO/CNO、原因遺伝子不明)などがあります。これらの疾患も小児リウマチ・膠原病外来で対応いたします。
治療の概要
小児リウマチ性疾患はステロイドと免疫抑制剤による治療が中心でしたが、2008年にトシリズマブという生物学的製剤が全身型および多関節型若年性特発性関節炎に対して承認されて以来、次々と生物学的製剤の導入が進み、患者さんの予後改善、QOL上昇につながっています。
生物学的製剤とは、バイオテクノロジーを用いて製造された薬剤で、特定の分子を標的とした治療を行います。
表1.生物学的製剤の種類と適応疾患
生物学的製剤 一般名 |
標的分子 |
適応疾患 |
---|---|---|
トシリズマブ |
IL-6レセプター |
若年性特発性関節炎、大動脈炎など |
エタネルセプト |
TNF-α,β |
若年性特発性関節炎 |
アダリムマブ |
TNF-α |
若年性特発性関節炎 |
アバタセプト |
CD80/86 |
若年性特発性関節炎 |
カナキヌマブ |
IL-1β |
クリオピリン関連周期性症候群、若年性特発性関節炎など |
インフリキシマブ |
TNF-α |
川崎病、ベーチェット病など |
生物学的製剤はリウマチ性疾患に対して高い治療効果が期待できる薬剤ですが、その使用にあたっては十分な専門的知識と経験が必要であり、小児リウマチを専門とする医師の指導下での使用が推奨されています。当外来では小児リウマチを専門とする医師が治療を担当いたします。
当外来の特徴
小児科医が担当しますので、疾患そのものや治療薬の副反応によって生じる小児特有の様々な問題に対し真摯に対応いたします。また、当院リウマチ・膠原病内科とも連携を取り、移行期医療もスムーズに行えるよう尽力いたします。
文責:小児科 小児リウマチ・膠原病外来
執筆:大西卓磨
最終更新日:2022年11月1日
記事作成日:2022年11月1日