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デバイス補助療法(DAT: device aided therapy)

でばいすほじょりょうほう

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概要

パーキンソン病の治療には薬物療法のほかに、刺激発生装置やポンプなどの機械を用いるデバイス補助療法があります。デバイス補助療法は英語でdevice aided therapyですので、頭文字をとってDAT(ダット)と呼ぶこともあります。具体的には、パーキンソン病に対しては脳深部刺激療法、レボドパ・カルビドパ配合経腸用液療法、ホスレボドパ・ホスカルビドパ水和物持続皮下注、アポモルヒネ皮下注といったものがあります。進行期のパーキンソン病患者さんでみられる症状の日内変動(ウェアリングオフ現象)やジスキネジアといった運動合併症を軽快するために行います。

脳深部刺激療法(DBS: deep brain stimulation)

脳深部刺激療法は、脳の中の神経核にボールペンの芯ほどの太さの電極を挿入し、前胸部に埋め込んだパルス発生器(IPG)から発生させた電気信号で高頻度刺激を行うことでパーキンソン病の症状の改善を図る治療です。進行期のパーキンソン病患者さんに行うことで症状の日内変動(ウェアリングオフ現象)やジスキネジアといった運動合併症、薬剤抵抗性の振戦(ふるえ)を軽快することが期待されます。電極とIPGは前頭部から前胸部まで皮下を通じてリードで接続されます(図1)。脳内の電極先端の位置(刺激部位)は症状により異なりますが、視床下核(ししょうかかく)、淡蒼球内節(たんそうきゅうないせつ)、視床(ししょう)と呼ばれる部位になります。近年、技術の進歩により刺激に方向性を持たせることや脳内の微小電場を感知することで、より良い症状の改善と副作用の予防が可能となっています。前胸部のIPGは皮膚上より設定変更が可能で、手術後も症状の変化に対応した刺激パラメータ(刺激の強さなど)の細やかな調整が可能となります。

図1.脳深部刺激療法

図1.脳深部刺激療法

レボドパ・カルビドパ配合経腸用液療法 (LCIG: Levodopa-carbidopa continuous infusion gel therapy、デュオドーパ®)

レボドパ・カルビドパ配合経腸用液療法は、ゲル状になったレボドパ製剤(レボドパ・カルビドパ水和物配合剤)を胃ろうから挿入したチューブを通して空腸に持続的に投与する治療です。薬の投与のために専用の注入ポンプを用います(図2)。レボドパの吸収部位である空腸に直接持続的に薬を投与することで血液中の薬の濃度が安定し、症状の日内変動(ウェアリングオフ現象)やジスキネジアといった運動合併症が軽快することが期待されます。ポンプの流速(薬の投与量)を調整することで、症状の変化に対応した調整が可能です。当院ではまず鼻から挿入した管を介して本薬剤を投与し治療の効果を実感していただいた後、効果があった患者さんに対して胃ろうの造設を行います。1日の使用時間は最大16時間で、残りの時間は内服薬などで対処する必要があります。また、チューブの閉塞を予防するため、チューブのお手入れを毎日行う必要があります。

図2.レボドパ・カルビドパ配合経腸用液療法(デュオドーパ®)

図2.レボドパ・カルビドパ配合経腸用液療法(デュオドーパ®)

ホスレボドパ・ホスカルビドパ水和物持続皮下注(ヴィアレブ®)

レボドパ・カルビドパのプロドラッグ(体内で代謝されてから作用を及ぼすタイプの薬)であるホスレボドパ・ホスカルビドパ水和物を体外のポンプで持続的に皮下注射することで、症状の日内変動(ウェアリングオフ)の改善を期待することができます。皮下注射でありほかのデバイス療法と比較すると侵襲性が低いことが特徴の治療法です。皮下に投与するため皮膚トラブルが起こりえること、激しい運動は控えることなどに注意が必要です。ポンプの流速(薬の投与量)を調整することで、症状の変化に対応した調整が可能となります。2022年12月に日本で製造販売承認されましたが、2023年4月現在はまだ使用できません。

アポモルヒネ皮下注(アポカイン®)

ドパミン受容体刺激薬であるアポモルヒネを専用の注入器(インジェクター)を用いて皮下注射する治療です(図3)。海外ではアポモルヒネの持続皮下注射が承認されていますが、日本では動けなくなってしまった時(オフ時)にレスキューとして注射することのみが承認されています。注射をする場所としては主にお腹や太ももです。注射すると20分で効いてきて(即効性)、効果の持続時間は1時間程度ですので、オフ状態から一時的にオン状態にするのに役立つ治療法です。注射は自己注射式で、患者さんもしくはご家族が注入器に薬液をセットし、注射ボタンを押す必要があります。

図3.アポモルヒネ皮下注(アポカイン®)

図3.アポモルヒネ皮下注(アポカイン®)

慶應義塾大学病院での取り組み

慶應義塾大学病院では脳深部刺激療法、レボドパ・カルビドパ配合経腸用液療法、アポモルヒネ皮下注の全てを行うことが可能です(ホスレボドパ・ホスカルビドパ水和物持続皮下注は、2023年4月現在まだ使用できません)。これらのデバイス補助療法の効果を最大限に発揮するためには適切なご病状の患者さんに適切な時期に行うことが非常に重要です。当院ではデバイス補助療法の適応判断から手術、術後管理まで複数の診療科、部門からなるパーキンソン病センター外部リンクが対応し、安心、安全に最適な治療を行う体制を整えています。ご受診をご希望の方は、神経内科の火曜日午前(担当:関)もしくは土曜日午前(担当:二瓶)の初診外来にご紹介いただくようお願いいたします。詳しくはパーキンソン病センター外来診療担当表外部リンクをご参照ください。

文責: パーキンソン病センター外部リンク神経内科外部リンク
最終更新日:2023年5月1日

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