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膵管癒合不全と再発性膵炎の内視鏡治療

すいかんゆごうふぜんとさいはつせいすいえんのないしきょうちりょう

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概要

膵管癒合不全とは、膵液の通り道である膵管の生まれつきの形成異常です。アジア、アフリカでは1~2%程度にみられ、欧米では6~10%程度であり、一般的に多く見られる疾患であり、多くの患者さんは症状はありません。胎児の時期に腹側膵管と背側膵管の2本が癒合して膵管となりますが、この癒合がされない方が膵管癒合不全となります。癒合しないため、背側膵管(副膵管、Santorini管)と腹側膵管(主膵管、Wirsung管)は、それぞれが膵液の排出を受け持つことになります。しかし、もともと細い副膵管に膵液が流れて副乳頭から膵液を排出することから、膵液の流れが滞り、膵炎を起こしやすくなります。

後天性因子としては、飲酒、過食、肥満が加わることで膵炎を起こしやすくなるといわれています。膵管癒合不全は、背側膵管と腹側膵管の両者の間に完全に交通がない完全型と、わずかでも交通を有する不完全型があります。症状がある患者さんは、膵炎の治療後は生活改善を推奨しています。繰り返し膵炎を来す場合は、副膵管の膵液の出口である、副乳頭を切開し出口を広げる「副乳頭切開術」や膵液の流れを良くするために、ステント留置術を行うことがあります。

図1.胆膵の形成

図1.胆膵の形成
腹側膵と背側膵が癒合するが、癒合不全では背側膵管と腹側膵管が癒合しない

図1.膵管癒合不全

図2.膵臓の解剖と不完全癒合不全、完全癒合不全

症状

膵管癒合不全のほとんどの患者さんは症状はありません。急性膵炎を併発した場合は腹痛を来します(急性膵炎の項参照)。また、膵炎を繰り返すことで慢性膵炎となると慢性的な疼痛、体重減少、消化不良、栄養失調を来します(慢性膵炎の項参照)。

診断

1) 採血検査

膵炎が疑われる場合には、膵酵素(アミラーゼ/リパーゼ/トリプシン)の上昇がないかを確認します。感染合併例では白血球や炎症反応の上昇を来すこともあります。

2) 画像検査

CT検査では、膵炎を起こした場合に、膵腫大、膵や膵周囲への炎症の波及を認めることがあります。MRI検査は磁気を利用した画像検査です。特にMRCPという胆汁・膵液を強調した撮影法は診断性能が高く有用です。

3) 超音波内視鏡検査(EUS) 

内視鏡の先端に超音波プローブが取り付けてあり、胃や十二指腸から超音波で膵臓自体の炎症や膵管を観察します。日帰りの外来での検査を行います。

4)内視鏡的逆行性膵胆管造影検査(ERCP)

十二指腸鏡あるいは側視鏡といわれる、横向きにカメラがついた特殊な内視鏡を用いて胆管や膵管の中に細い管(カテーテル)を挿入し造影剤を流すことで膵管の形を評価します。ERCP検査は膵炎などの重大な偶発症が起こりえるため、検査時には十分な説明をさせていただきます。

治療

症状がなければ治療は不要です。急性膵炎については別項(急性膵炎)に準じて治療します。膵炎を繰り返して生活にも支障がある場合は、膵炎を予防するための治療を検討する必要があります。

1) 内視鏡治療

副膵管の出口が狭いことで膵液の流れが悪くなるため、内視鏡で副膵管の出口である副乳頭を電気メスで切って拡張する、「内視鏡的副乳頭切開術(EMPST)」が行われます。同時に内視鏡的副乳頭バルーン拡張術や、ステント留置を追加する場合があります。もともと針の穴ほどもない大変細い管を広げていく処置であり、通常の内視鏡治療に比して、成功率も低く、難易度も高い処置です。また、処置に伴い膵炎を来すこともあります。胆膵疾患の専門施設で十分な説明を受け、治療の利益と不利益をご理解の上で治療を受けることをお勧めします。

図3. 内視鏡による膵管治療

図3. 内視鏡による膵管治療

2)外科治療 

膵液の流れが悪くなると、膵石ができたり、腹痛を繰り返す慢性膵炎になる患者さんもいらっしゃいます。慢性膵炎については、膵頭十二指腸切除術、副乳頭括約筋切開術、括約筋形成術などが行われます。それぞれの患者さんに適した対応が必要であり、習熟した医療施設にご相談いただくことをお勧めします。

慶應義塾大学病院での取り組み

内視鏡検査や内視鏡治療には特殊な技術や知識、医療設備が必要です。当院では、十分な研鑽を積んだ胆膵専門の内視鏡医が検査、内視鏡を行っています。内科的治療から外科的治療まで、幅広く必要な治療を選択し、提供することが可能です。

文責:消化器内科外部リンク
最終更新日:2021年11月12日

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