慶應義塾大学病院KOMPAS

HOME

検索

キーワードで探す

閉じる

検索

お探しの病名、検査法、手技などを入れて右のボタンを押してください。。

肝生検

かんせいけん

戻る

一覧

概要

肝生検とは、腹部に生検針を刺し、肝臓の組織の一部を採取する検査です。様々な肝臓疾患の原因や病態を把握し、診断や治療方法を決定するために必要な検査です。また、肝移植を受けた方の場合は、拒絶反応などを調べるために行うことがあります。肝臓の中に腫瘍があり、かつ画像検査で診断が困難な場合にも、肝生検を行うことがあります。この検査でも確定診断がつかないケースもありますが、多くの場合、治療法を選択するための有用な所見が得られます。

所要時間

検査自体は20分程度、安静時間も含めて約4~6時間(経皮的針生検の場合)

検査を受ける前に

肝生検には、局所麻酔で針生検のみを行う経皮的針生検と、全身麻酔下に腹腔鏡下で観察し、楔状生検(くさび状に肝組織を十分量採取する)を行う腹腔鏡下肝生検とに大別されます。

経皮的針生検は、通常1泊2日の入院にて行います。入院当日に施行し、翌日午前中まで入院していただいています。退院後も、1週間程度は遠出や激しい運動は避けていただきます。肝臓は出血しやすい臓器ですが、通常は生検した部位は自然止血します。しかし、血液を固まらなくする薬剤を飲んでいる方は出血が止まらない可能性がありますので、主治医に伝えてください。

一方、腹腔鏡下肝生検は基本的に全身麻酔が必要になります。肝表面の形態を観察できるうえ、十分な組織量が採取できるので、原発性胆汁性肝硬変原発性硬化性胆管炎のような生検部位による相違がみられる疾患では、針生検と比較し、十分な診断ができるので有用です。しかし、全身麻酔に伴う危険性と入院日数が必要になりますので、適用されるケースは少なくなります。
以後、合併症については、一般的な経皮的針生検について述べさせていただきます。

検査の実際

肝生検の方法

経皮的針生検は、病室で点滴を入れた後、超音波検査装置で場所を確認しながら生検します。まず、皮膚と肝表面に局所麻酔をした後、肝臓に専用の生検針(肝生検や腎生検に用いられている組織を採取する専用の針)を刺して、組織の一部を採取します。針を刺している間は、約20秒間息を止めていただきます。生検後は、刺した部分の止血のため、約4~6時間ベッド上で安静にしていただかなければなりません。一般的には、穿刺した部位は自然止血しますが、遅れて出血等の合併症が起こることがあるので、翌日午前中まで入院していただきます。採取した肝臓の組織は後日、顕微鏡で病理医が診断します。診断結果が出るまでに、通常1週間程かかります。

一方、腹腔鏡下肝生検は、基本的に全身麻酔が必要になります。全身麻酔下に腹腔鏡で肝臓の表面を観察しながら、その一部を止血し採取します。全身麻酔からさめて、傷口に問題がなければ退院となります。

以後、合併症については、一般的な経皮的針生検について述べさせていただきます。

検査後の注意

検査の合併症について

経皮的肝生検は比較的安全な検査です。特に、超音波ガイド下で(超音波でみながら)施行するようになってからは、穿刺時の軽度の疼痛以外はほとんどみられていませんが、次のような合併症が報告されています。

  • 局所麻酔に伴う副作用(ごくまれに局所麻酔薬の過敏性反応として血圧低下、意識混濁(意識がもうろうとなること)、痙攣(けいれん)等を起こすことがあります。局所麻酔薬にアレルギーがある方は事前にお申し出ください。)
  • 出血(肝臓は血流豊富な臓器ですので、穿刺により出血しますが自然止血します。ごくまれに、止血しない場合や遅れて再出血することがあり、輸血や緊急手術が必要となる場合があります。)
  • 腹痛(多くは皮膚や肝被膜の軽微な損傷に由来する痛みであることが多いです。まれに出血による症状であることがあります。)
  • 発熱(皮膚からの感染や胆道の穿刺に伴う胆汁の漏れ、胆管炎等を原因として起こります。)
  • 一過性の肝機能障害
  • 気胸(検体採取の際に肺に穴が開き、気胸を起こすことがあります。)
  • 他臓器損傷(胃・小腸・大腸などの消化管や、胆嚢、血管などを意図せず穿刺した場合、臓器を損傷することがあります。重篤な場合、手術を要することがあります。)
  • 肝臓内の肝腫瘍を生検する場合には、まれにがん細胞を撒き散らすケースが報告されています。

慢性肝疾患に対する非侵襲的・非観血的な肝線維化検査

慢性肝疾患に対して、肝臓の繊維化・肝硬度を知ることは非常に重要です(詳しくは、肝硬変の項をご参照ください)。 肝硬度を測る検査として、近年、肝生検に代わる新たな検査であるTransient elastography(FibroScan®)やShare wave elastographyなどがあります。
超音波などの特殊な波の振動をみることにより、体を傷つけることがなく、肝臓の硬さを測る検査です。
検査時間はおよそ5~10分程度で、針を刺したりしないため出血することもなく、外来検査が可能です。
現在、慶應義塾大学病院でも肝生検とともに上記のような痛みのない検査を併用しながら、慢性肝炎・肝硬変の患者さんの診療に役立てています。

文責: 消化器内科外部リンク
最終更新日:2023年11月24日

ページTOP