概要
子宮頸部に原発するがんを子宮頸がんといいます。我が国では子宮頸がん検診が普及した結果、子宮頸がんの罹患数は漸減傾向でしたが、近年はやや漸増傾向です。その原因としては20~30代の若年発症例が急速に増加していることが挙げられます。
子宮頸がんの発生には、その大部分にヒトパピローマウイルス(HPV:Human papillomavirus)の感染が関与しているといわれており、近年、子宮頸がんの一次予防対策として主に思春期の女性を対象にHPVワクチンの接種が可能となっています。
子宮頸がんは通常、初期の段階では症状がないことが多いです。症状がなくても定期的に子宮頸がんの検診を受けることが勧められています。子宮頸がんの病変の広がりとともに不正出血などの症状がみられる場合があります。
症状
- 不正出血(性交時接触性出血)
- おりもの
- 骨盤部や腰の痛み
- 足のむくみなど
診断
検査
治療
子宮頸がんに対しては主に、手術療法、化学療法、放射線療法の3つの治療法があります。頸がんの病状に合わせて、それらを単独、あるいは組み合わせるなどで使い分けています。
手術療法
手術療法には子宮を摘出する術式のほか、子宮の摘出を伴わない術式があります。
- 子宮頸部円錐切除術
子宮頸部を円錐状の組織として切除する手術で、子宮を温存することのできる術式です。この手術の目的は、診断を確定することと同時にどの程度の追加治療が必要であるのかを明らかにすることにあります。手術検体の病理診断によっては追加治療が必要となることもあります。(子宮頸部レーザー円錐切除術)
- 広汎/準広汎子宮全摘出術
患部を子宮と腟の一部、周囲の組織を含め骨盤壁近くから広い範囲にわたって切除します。子宮頸がんに関連する所属リンパ節も同時に切除します。 - 広汎子宮頸部摘出術
将来的な妊娠の可能性を残したい方に実施する治療法です。現時点ではある意味で臨床研究中の治療法であり、対象症例も限られますので担当医にご相談ください。
(子宮頸がんに対する広汎性子宮頸部摘出術)
化学療法
化学療法は、抗がん剤を用いて体内のがん細胞の増殖抑制を狙います。薬剤は、通常、点滴静注注射で投与を行います。化学療法は、子宮頸がんが子宮の外に拡がっている場合や再発した場合に対象となります。
放射線療法
放射線治療には、がん細胞に障害を与え腫瘍を縮小させるために、高いエネルギーのX線が用いられます。実際に放射線治療を行う場合、体外から照射を行う外照射と局所に行う腔内照射の2種類の方法を組み合わせて行うことが多いです。化学療法と組み合わせた同時化学放射線療法(concurrent chemoradiotherapy :CCRT)を行うこともあります。
- 外部照射
直線加速器(リニアック)と呼ばれる大型の機械で、体の外から体内の病巣部に放射線を照射します。通常は、1日1回の治療を5~6週間かけて行います。治療が必要な範囲の形に合わせた正確な照射範囲を定めるために、専用のコンピュータを用いて最適な照射計画を選択します。
- 腔内照射・組織内照射
子宮内に治療用器具を挿入し、子宮の中から放射線治療を行う方法です(下図)。子宮の近くにたくさんの放射線をあてることができます。1週間に1~2回で2~4回程度行います。通常の腔内照射では十分な線量投与が困難な比較的大きな腫瘍などの場合には、通常の腔内照射と組織内照射を併用するハイブリッド照射を行います。
慶應義塾大学病院での取り組み
婦人科では治療後のフォローアップを目的とした子宮頸部腫瘍外来(水曜午後)を開設しています。詳しくは担当医にお尋ねください。
さらに詳しく知りたい方へ
- 患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン / 日本婦人科腫瘍学会編集 第2版.
東京 : 金原出版, 2016.4 - 子宮頸癌治療ガイドライン. 2017年版 / 日本婦人科腫瘍学会編集
東京 : 金原出版, 2017.07