概要
子宮と膣の中に治療用の器具(アプリケータ)を挿入して、その中に放射線の線源を通すことで、体の内部から病巣に放射線を集中させる方法です。慶應義塾大学病院では、主に子宮頸がんに対する初回治療、もしくは術後再発に対する治療として実施しています。
子宮頸がんの放射線治療では一般的に、直線加速器(リニアック)と呼ばれる大型の機械を使用して体外から放射線を照射する外部照射と、子宮や膣内に挿入した器具に放射線源を通して照射を行う腔内照射を組み合わせて行います。
腔内照射は外部照射と比べて、線源の周囲に集中して高い線量の放射線を照射できるため、周囲の正常臓器の線量を抑えながら、病巣には高線量を投与することが可能です(図1上)。
その一方で、線源から離れた部位への線量は低くなるため、器具を挿入する子宮内腔や膣から離れた病変(リンパ節転移や巨大病変など)の治療には適しません。
そのため、通常の腔内照射では治療がやや困難と判断される腫瘍に対しては、通常の腔内照射用アプリケータに加えて腫瘍に直接針を刺入する(=組織内照射を併用する)ハイブリッド照射を提案しています(図1下)。
個々の患者さんの状態に応じて、化学療法(薬物療法)と組み合わせた同時化学放射線療法(concurrent chemoradiotherapy :CCRT)を行うこともあります。
図1
実際の流れ
- 子宮腔内に器具を挿入することになるため、手技に伴う痛みが発生する場合があります。そのために、事前に鎮痛剤や鎮静剤(坐薬や点滴)を使用します。
- 専用の腔内照射室で砕石位といわれる仰向けで両足を持ち上げた姿勢で行います。必要な器具(アプリケータ)を子宮や膣内に挿入した後で、膣の中にガーゼを詰めた状態で固定します。
- CTを撮像して、器具が正確に留置されていることを確認し、目的とした場所に放射線がきちんと照射されるように専用の計画装置で線量計算を行います。
- 計算後、留置したアプリケータや針に線源を通し、治療開始となります。照射中に痛みを伴うことはありませんが、照射室内に人が立ち入ることはできません。照射時間は1回あたり10~20分程度で終了となります。
- 1週間に1~2回で2~4回程度行います。
文責:
放射線治療科
最終更新日:2021年9月1日