病気を知る
脊柱変形とは
概要
脊椎の基本と生理的弯曲
脊椎は頚椎・胸椎・腰椎・仙椎から構成されます。正面から見ると原則としてまっすぐですが、側面(横から見た場合)では頚椎前弯・胸椎後弯・腰椎前弯といった矢状面の生理的弯曲により、S字状を呈します。年齢とともに胸椎後弯は増加する傾向があり、加齢変化を考慮した評価が重要です。
脊柱変形の定義
脊柱変形とは、このような正常な脊椎の形がさまざまな原因により三次元的にゆがんだ状態を指します。正面から見て10度以上の側方カーブがある場合に側弯症と診断され、多くは回旋(ねじれ)を伴います。一方、横から見た場合(矢状面)に、生理的な前弯または後弯が過剰に増加または減少し、体のバランスが崩れた状態が矢状面弯曲異常となり、後弯症や前弯症などがあります。成人では体が前に傾く、いわゆる「腰曲がり」となると生活の質が低下することが報告されており、治療の対象となります。
代表的な原因と病型
側弯症として最も多いのは特発性側弯症で、主に思春期の女性に見られ、成長期に進行します。原因は明らかではありませんが、遺伝の関与があることが推測されています。その他、脊骨の異常がある場合には先天性側弯症、ほかの病気に伴って生じる場合には症候性側弯症、神経や筋肉の異常により生じる場合には神経筋原性側弯症と分類されます。側弯は軽度であれば経過観察のみでよいことが多いですが、成長期にカーブが25度を超えてくる場合には装具(コルセット)の使用を検討する必要があります。治療の詳細は側弯症の項目を参照してください。
また、加齢に伴い椎間板変性や骨粗鬆症による骨折、筋力低下などが関与し、体の重心が前に傾くと、長く立っていたり、歩行したりすることが困難になり、成人脊柱変形と診断されます。逆流性食道炎や便秘などの消化器症状を来し、全身状況にも悪影響を及ぼします。
以上述べたように、側弯や矢状面弯曲異常は背骨だけの問題ではなく、全身にも悪い影響を与えることがあるため、正しく評価、診断し、必要に応じて治療を受けることが重要です。治療の詳細につきましては側弯、後弯の項をそれぞれご参照ください。
特発性側弯症の自然経過
アメリカのアイオワ大学では、思春期に発症する特発性側弯症の患者さんを、50年以上にわたって追跡した研究があります。この研究から、100度を超える重度の側弯では、心臓や肺が圧迫されて呼吸や循環に問題が起こり、寿命にも影響することがあることが分かりました。一方で、それほど大きなカーブでなければ、腰背部痛の頻度が高く外見上の問題は残るものの、寿命や生活の質に関しては大きな差がない結果でした。結婚や仕事、出産も可能ですが、帝王切開になる割合がやや高い傾向があると報告されています。また、成人期以降もカーブが徐々に進行する例があるため、成長期を過ぎた後も定期的な経過観察が推奨されています。
評価・治療
評価は脊椎全体を撮影したX線写真を撮影し、側弯の程度、矢状面のバランス、回旋の程度を評価します。そのうえで、今後の自然経過や患者さんの症状などを考慮に入れ、治療方針を決定します。背骨のことでお困りのことがあればいつでもわれわれにご相談ください。