診療科の垣根を超えたアレルギー診療を目指して ― アレルギーセンター ―
はじめに
現在、国民の2人に1人がアレルギー疾患をもつといわれています。そこで2017年12月にはアレルギー疾患対策基本法施行の運びとなり、国を挙げたアレルギー対策の取り組みが始まっています。慶應義塾大学病院でも、これまでアトピー性皮膚炎、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息など数多くのアレルギー疾患に対して、皮膚科、小児科、眼科、耳鼻咽喉科、消化器内科、呼吸器内科など複数の診療科が、個別に最新の専門性の高い医療を行ってきました。しかしながら、複数のアレルギー疾患を合併している患者さんは、それぞれの診療科を受診しなければなりませんでした。また、重症アレルギー疾患を抱えた思春期患児の成人診療科への移行についても全国的な課題となっています。
そこで、当院アレルギーセンターは、各診療科の高い専門性を維持しながら、診療科の垣根を越えた連携を行い、また専門知識を共有しながら、患者さんがより質の高いアレルギー診療を受けられることを目標に開設されました。さらに、小児期から成人期までの連携が十分になることで、近年注目されている抗体製剤治療やアレルギー免疫療法を導入することがより円滑になると考えています。
アレルギーセンターの特徴
複数の診療科による相互連携
当院の皮膚科、小児科、眼科、耳鼻咽喉科、消化器内科、呼吸器内科にはそれぞれアレルギー診療の専門医師がおり、それぞれが次のような疾患を担当しています。
- 皮膚科: 蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、薬疹など
- 小児科: 15才以下の食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、気管支喘息など
- 眼科: アレルギー性結膜炎、春季カタルなど
- 耳鼻咽喉科: アレルギー性鼻炎、好酸球性副鼻腔炎、好酸球性中耳炎など
- 消化器内科: 好酸球性食道炎、好酸球性胃腸炎など
- 呼吸器内科: 気管支喘息、アレルギー性気管支肺真菌症、好酸球性肺炎、成人食物アレルギー、NSAIDs不耐症など
このような多様なアレルギー疾患に関わる医師たちが、「アレルギー」をキーワードにして、その連携を強化した体制を構築しています(図1)。
複数のアレルギー疾患を合併する患者さんへの抗体製剤やアレルゲン免疫療法の適応、小児アレルギー症例の成人診療科への円滑な移行などについて相談するために、定期的なカンファレンスを開催しています。そしてディスカッションを通じてアレルギー疾患の病態への理解や新たな知見の共有を行い、当院のアレルギー診療の質をより高めて、アレルギー疾患に苦しむ患者さんに還元したいと考えています。
図1.アレルギーセンターの診療体制
臨床・基礎研究への展開
アレルギー診療に関わる医師が集まり、カンファレンスを繰り返す中で生じた疑問や意見を集約して、臨床研究あるいは基礎研究へ発展させ、アレルギー診療の進歩に貢献します。
次世代のアレルギー専門医の育成
診療や研究を通じて、診療科の垣根を越えた総合アレルギー専門医の育成を行っていきます。
おわりに
2018年9月に発足したアレルギーセンターは、複数の診療科の垣根を越えてアレルギーに苦しむ患者さんたちに、より質の高い医療を提供すべく今後ますます努力を重ねてまいります。そして今後、最新のアレルギー診療が提供できるように、外来診療体制の充実を図ってまいります。
アレルギーセンターのスタッフと関係者一同(2023年7月撮影)
関連リンク
- 皮膚・アレルギーチーム(慶應義塾大学医学部周産期・小児センター)
文責・執筆:アレルギーセンター
最終更新日:2023年9月12日
記事作成日:2019年1月7日
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