
アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎について
アレルギー性鼻炎は1型アレルギーといわれるもので、スギ花粉、ダニ、ハウスダスト(ホコリ)などが原因(抗原と呼びます)となっているものが多いといわれています。
特に、1970年代から爆発的に患者数が増加したスギ花粉症は国民病といわれており、社会問題にもなっています。また、私たちの調査でもアレルギー性鼻炎を治療しないと学業、仕事の効率や活動性の低下、睡眠の質の低下など生活に支障をきたすことがわかっています。
ここではアレルギー性鼻炎について一般的なことに加えて、患者さんからよく質問されることを中心に記載しています。ここには書ききれない内容もありますし、患者さんによって症状・病気の状態もさまざまですので、より詳細な話については外来で個別にご相談ください。
症状
くしゃみ、鼻水、鼻づまり、鼻のかゆみ、などがあります。
<なぜ症状が起こるのか?>
抗原がやってくるとアレルギーの体質がある患者さんの鼻の中では、1型アレルギーの反応が起こります。ヒスタミンやロイコトリエンという物質が鼻の粘膜に作用して、鼻づまりなどの上記の諸症状を引き起こします。
診断にいたるまでの検査
- 症状を伺い、アレルギー性鼻炎があるかどうか検討します。
たとえば、症状を伴いやすい時期、季節や、ペットの飼育など) - 鼻の中を観察し、鼻腔形態の異常があるかを観察します。鼻の粘膜(具体的には、下鼻甲介の粘膜のことです;図1矢印を参照してください)の腫れの程度や軟骨の曲がり具合(彎 曲;わんきょく)、ポリープの有無などを観察します。
- 原因抗原の特定を行います。これは通常血液検査を行います。結果が出るのに一週間ほど時間がかかります。
- 副鼻腔炎の有無を調べるために、レントゲンあるいはCT、MRIなどを撮影する場合があります。

図1.鼻内所見
矢印は下鼻甲介粘膜を示しています。この隙間(黒い部分)から鼻呼吸がおこなわれています。
(「高周波ラジオ波メスを用いたアレルギー性鼻炎の治療」神崎晶著 より抜粋)
<アレルギー性鼻炎に類似した疾患>
血管運動性鼻炎 温度差(寒暖差)などが原因でアレルギー性鼻炎と類似した症状がでます。原因抗原は特定できません。治療は薬物治療を用いることが多いです。
<アレルギー性鼻炎に合併しやすい疾患>
慢性副鼻腔炎を合併している場合があります。この場合は、レントゲン、鼻副鼻腔CT撮影などを行います。

治療
基本的にはアレルギー疾患 診断・治療ガイドラインに沿って行っています。
図2は治療の概略を示しています。

図2.治療の概略
<原因抗原の除去>
血液検査などで原因抗原(たとえば花粉、ホコリなどの除去)がわかっていればそれらの除去を行うようにします。それでも症状が緩和しなければ、下記の加療(薬物治療、免疫療法、手術)を検討します。
<薬物治療>
ほとんどの患者さんがこの薬物治療を選択しています。内服薬として、抗ヒスタミン剤、抗ロイコトリエン剤、Th2阻害剤、外用剤として、ステロイド点鼻、抗ヒスタミン点鼻薬、粘膜収縮剤があります。市販されている花粉症の薬は医療機関で処方される薬と比較して眠くなる頻度が高いと言われています。最近でも新しい抗ヒスタミン剤やステロイド点鼻薬が使用できるようになりました。
<免疫療法>
原因抗原を調査し、抗原エキスを低濃度から徐々に注射していく治療です。根本的な治療として唯一の治療法ですが、最初は頻回の治療が必要になります。(現在当院では準備中です)。
<手術>
- 手術はどんな方にお勧めできるでしょうか?
薬物療法で解決しない鼻づまりがある場合や、ダニ、ハウスダストなどの通年性アレルギー性鼻炎がある場合、鼻腔形態の異常を伴う場合は手術を検討する場合があります。 - 手術はどんな方にはお勧めできないか?
上記にあてはまっても、患者さんの理解や協力が得られない場合、麻酔薬にアレルギーがある場合、痛がりやすい場合、医師がお勧めできない理由があるなど、幼児にはお勧めしておりません。
手術にも方法がいくつかあります。
- 下甲介焼灼術 (日帰り手術)
レーザー・高周波ラジオメスによって、下鼻甲介焼灼表面を焼灼します。鼻の軟骨が曲がっていて、レーザーが届かずに焼灼できない場合でも、高周波ラジオメスによって焼灼できる場合があるため、ラジオメスによる手術を行う場合もあります。(ただし、いずれの方法でも症状の軽減は一時的です(平均2年くらいしか持続しません)。術後一過性の鼻づまりが悪化したり、鼻水の量が増えたりします。
- 鼻腔形態(鼻の構造を改善する)手術
たとえば、鼻中隔弯曲症(鼻の中隔の軟骨が曲がっている)がある場合には、鼻中隔矯正術を行います。下鼻甲介粘膜(鼻の通り具合に関係している粘膜)が肥厚しているなど鼻腔に異常がある場合、下鼻甲介切除を行います。
《慢性副鼻腔炎の合併》
もしアレルギー性鼻炎に加えて、副鼻腔炎を合併していれば、そちらの手術を施行することも多々あります。
個別のご相談は火曜日 午前 アレルギー・嗅覚外来 神崎まで (文責:神崎)
さらに詳しく知りたい方へ
慶應義塾大学耳鼻咽喉科のwebサイトをご覧ください。
文責:
耳鼻咽喉科
最終更新日:2017年3月22日

耳・鼻・のどの病気
