発話流暢性障害(吃音、クラタリング)
発話流暢性障害
発話流暢性障害は、言葉を話すときに滑らかに話せない疾患です。吃音とクラタリング(早口言語症)が含まれています。また、吃音には幼少期に発症する発達性吃音とほかの病気やストレスが原因で発症する獲得性吃音があります。
発達性吃音
発達性吃音は2~5歳ごろに発症します。発症率(吃音になる確率)は8~10%ですが、その大部分は自然に治癒するため、成人での有病率(吃音がある確率)は0.7~1%ほどと言われています。発症率や有病率は国や言語によって差がありません。原因はまだはっきりしていない部分がありますが、遺伝的な要因が大きいだろうと考えられています。男性に多いのも特徴です。
症状
吃音の中核症状(主な症状)は以下の3つです。
・繰り返し(連発):お、お、お、お母さん
・引き伸ばし(伸発):ぼーーくの鉛筆
・ブロック、阻止(難発):、、、、、とけい
これら中核症状は下記の特徴があります。
・一貫性:特定の単語、音、行(カ行、タ行など)をより苦手とすること
・波現象:吃音の症状が出やすい時期と、出づらい時期があること
・適応効果:どもった単語を一度言えてしまうと、その後は言いやすくなること
・随伴症状:話すときに、首や手足が動いてしまうこと
このほかにも斉読(だれかと一緒に読む)、歌、ひとりごとではどもりにくいという特徴があります。
吃音の進展
吃音は言語症状だけでなく思春期以降様々な症状が伴うことがあります。そのことを吃音の進展と呼んでいます。
・予期不安:「この言葉は吃音が出そうだな」と予感できるようになってきます。
・言い換え:予期不安が出た言葉に対してとっさに言葉を言い換えることです。例えば「くるま」と言おうとしましたが吃音が出そうだと感じた場合、「じどうしゃ」ととっさに言い換えたりします。
・回避行動:吃音が出やすい場面に対して不安を感じ、人前や電話など話す場面を避けてしまいます。
こういった症状が強くなってきますと、社交不安障害を伴っていると判断される場合があります。病院に来る成人吃音の半分程度は社交不安障害を伴っているとするデータもあります。
支援
吃音の治療は年齢に応じて様々で、確実な治療法はまだないと言われています。どの年齢にも共通して言えることは吃音が生じたとしても安心して話せる環境を作ることです。また近年では治癒が望める年齢においては、リッカムプログラム(Lidcombe Program)やRESTART-DCMといった治療法が出てきています。社交不安障害を伴うような成人の吃音では、安心して話せる環境を作るとともに認知行動療法といった心理療法を応用した支援が良いと考えられています。
獲得性吃音
獲得性吃音は、脳梗塞などの脳の病気の後遺症として生じる神経原性吃音と、心的ストレスによって引き起こされる心因性吃音とに分類されます。発達性吃音と症状は基本的に同じですが、波現象が少ないなど少し特徴が異なっています。
クラタリング(早口言語症)
クラタリング(早口言語症)は吃音と症状が似ていますが、特徴の異なる発話流暢性障害です。
症状
吃音のところで挙げた中核症状に加えて下記の特徴があります。
・早口
・言葉の折り畳み(Telescoping):単語の途中の音を省略して発音してしまう。例:「ホッチキス」を「ホキ」と発音する。
・「えーと」などの挿入や言い直しが多い。
・文の中の語順や話す内容の順序があべこべで、まとまりがないように話してしまうことがある。
ただしこれらのクラタリングに特徴的な症状には本人の自覚が少ないことが多いです。そのため自分の症状を「吃音だ」と勘違いすることがあり、実際吃音だと思って受診する方の何割かはクラタリングだと言われています。また、「ゆっくり話そう」「落ち着いて話そう」と症状に注意を向けることで、一時的に改善することがあります(吃音では一般的に逆のことが多いです)。
支援
吃音と同様年齢によって異なりますが、まずはクラタリングであると理解することが重要です。ゆっくり、伝わりやすい話し方を身に着けることを目標とします。
慶應義塾大学病院での取り組み
全国的にも少ない吃音の専門外来を設置しています。言葉の訓練の専門家である言語聴覚士やカウンセリングの専門家である臨床心理士と協働して、個々の患者さんに応じた支援をしています。
受診希望の方が多数いらっしゃるため、予約が取りにくくなっております。
さらに詳しく知りたい方へ
文責:耳鼻咽喉科
最終更新日:2022年12月1日