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ホーム > 病気を知る > 脳・脊髄・神経の病気 > 四肢の末梢神経障害 > 手根管症候群

手根管症候群

しゅこんかんしょうこうぐん

概要

手根管症候群は、手の関節部分の手根管と呼ばれるトンネルで正中神経(せいちゅうしんけい)が圧迫され、手指のしびれや痛み、母指の運動障害が生じる疾患です。この症候群は圧迫により生じる神経障害(絞扼性神経障害)の中で最も多い末梢神経障害で、一生涯の中で手根管症候群を発症する確率はおよそ10%といわれており、両側例も多いです。家事や仕事などで手を酷使する女性に特に生じやすく、妊娠中の方や糖尿病の方、透析中の方にも多いことが知られています。

症状

主な症状は、母指から中指あるいは環指までのしびれ、痛み、感覚障害で、典型的には夜間や明け方に症状が悪化することが知られています。また手根管症候群の症状が進行すると母指を動かす筋肉(母指球筋)が痩せてしまい、親指の運動が制限されて物を掴む力が低下してしまいます。これによってボタンかけができなくなってしまうなどの生活障害が生じます。

診断

上記の症状に加えて、以下の臨床所見を評価します。また電気生理学的検査や超音波検査などを組み合わせて、最終的に手根管症候群の診断を行います。

ティネル様徴候

手根管の直上をたたくと指先にしびれの症状が放散する場合は、手根管症候群を疑うサインです。これは末梢神経の障害されている部位では神経が刺激を受けやすくなっていることを利用した診断方法です。

ファーレンテスト

両方の手関節を屈曲して手の甲同士を押し合わせて、次第に指先のしびれの症状が出てくる場合は、手根管症候群が疑われます。 これは手関節を屈曲することにより手根管の内圧が上昇し、手根管症候群の症状が誘発されるという診断方法です。逆に手関節を伸展して手のひら同士を押し合わせる方法を逆ファーレンテストといいますが、検査の目的は同じです。

パーフェクトO徴候

手根管症候群の重症例では親指を動かす母指球筋が麻痺して萎縮してしまうことにより母指対立が障害され、親指と人差し指でOKサインがうまく作れなくなってしまいます。 なお、手根管症候群に似た症状を呈するほかの疾患(頸椎症など)が疑われる場合は、それに対する検査を行うことがあります。

治療

保存療法

手指の安静や日常生活動作の改善を行い、手関節を夜間サポーターや弾性包帯で固定することで症状が改善することがあります。症状が強く早期に症状を軽減したい場合には、手根管内へのステロイド注射が有効です。

手術療法

保存療法を行っても症状が改善しない場合や症状が強い場合、母指球筋の萎縮を高度に認める場合、手術療法を行います。

手術では、手根管の屋根になっている横手根靱帯を切離することにより正中神経の圧迫を解除します(手根管開放術)。手術により、多くの方々の症状が改善します。特に夜間や明け方に強いしびれや痛みがあって睡眠が障害されていた方は、手術後早期にその効果を大きく実感することができます。また、患者さん個人個人の病態や主治医の治療方針によりますが、当院では内視鏡を用いた低侵襲手術も行っています(鏡視下手根管開放術)。鏡視下手根管開放術では手術の傷が小さいため、手術後の痛みが少なく、日常生活に早く復帰することが期待できます。いずれも日帰り手術で実施可能です。

また、母指の対立障害が強い方には、他の筋肉を利用して母指対立運動を獲得する母指対立再建術を行うことがあります。この手術は当院では全身麻酔で行っていますが、入院期間は1週間以内です。なお、母指対立再建術では手術後に1か月程度のシーネ固定が必要になります。

近年、致死的疾患である心アミロイドーシスの初発症状として、手根管症候群を発症する例が多いことが明らかになりました。当院では、状況に応じて手根管開放術の際に神経周囲の組織を採取して病理検査を行っており、特定のアミロイドが検出された場合には循環器内科に依頼し、心アミロイドーシスの早期発見・早期治療を目指しています。

さらに詳しく知りたい方へ

文責: 整形外科外部リンク
最終更新日:2021年6月1日

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四肢の末梢神経障害

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