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消化管間質腫瘍 (GIST)

しょうかかんかんしつしゅよう

概要

消化管間質腫瘍(GIST(ジスト): Gastrointestinal stromal tumor)とは胃や小腸(大腸、食道は稀)など、消化管の壁にできる転移、再発を起こす悪性腫瘍の一種(肉腫といいます)で、粘膜から発生する胃がん大腸がんとは異なる性質を示します(図1,2)。消化管の壁の筋肉の層にある、特殊な細胞(カハール介在細胞)が異常に増殖し腫瘍となったものです。

図1.がんと肉腫の違い

図1.がんと肉腫の違い

図2.消化管悪性腫瘍におけるGISTの位置づけ

図2.消化管悪性腫瘍におけるGISTの位置づけ

GISTは腫瘍細胞の細胞膜にあるKIT、またはPDGFRαという蛋白の異常が主な原因であることが分かっています(図3)

図3.蛋白変異部位と頻度

図3.蛋白変異部位と頻度

この蛋白は、通常は特定の物質の刺激を受けたときにのみ細胞の増殖を促しますが、異常が起こると常に増殖の合図を出してしまうため、細胞が異常に増殖し続けてしまいます(図4)。これを放置しておくと、腫瘍がどんどん大きくなってしまいます。また、GISTは胃がんや大腸がんに比べて症状が現れにくく、症状があっても軽度であることが多いため、診断が遅れ病気が進んでから発見されることも少なくありません。

図4.病気の原因

図4.病気の原因

診断

内視鏡検査、超音波検査消化管造影検査CT検査MRI検査、FDG-PET/CT検査などで診断を行います。

診断を確定させるためには、腫瘍組織を採取した上で、顕微鏡で腫瘍細胞の形や染色像(免疫染色)の確認を行う必要があります。必要に応じて内視鏡による生検や超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)を施行します。

治療

GISTの治療では、基本的に手術が最も有効ですので、外科手術を第一に検討します。手術は腫瘍の大きさ、症状の有無、増大傾向、リスクに応じて判定します(図5)。

図5.GISTの治療(手術)

図5.GISTの治療(手術)

・日本では、5cm以下のGISTに対して腹腔鏡手術が実施されることがあります。最大のメリットは開腹手術に比べて侵襲性が低いということです。

・初発の術後のリスク判定で再発リスクが高かった場合、アジュバント治療(術後補助療法)として、イマチニブ(グリベック®)の服用を勧められることがあります。

・完全な切除ができない場合には、分子を標的とした薬剤イマチニブ(グリベック®)による治療が行われます(図6,7)。

図6.GISTの治療戦略

図6.GISTの治療戦略

図7.イマチニブの作用

図7.イマチニブの作用

・治療の経過中にイマチニブが効かなくなる(耐性)場合があります。その際には、スニチニブ(スーテント®)・レゴラフェニブ(スチバーガ®)といった薬剤が選択されます。腫瘍の状態によっては、手術療法が選択される場合もあります。

生活上の注意

  • まず、あわてないこと。冷静に主治医と相談して病気を学びましょう。
  • あせって行動せずに、ひとつひとつの治療をシンプルかつ丁寧に治療を続けることが大切です。
  • 時にはセカンドオピニオンや患者会などを利用して、第三者の意見も参考にしてみることも考慮しますので、遠慮せずに申し出ください。
  • なお病気を「放置」してはいけません。信頼関係を築いた医師と必要に応じた治療や、適切な「経過観察」を行い病気と長く、正しくお付き合いしていくことが良いでしょう。

慶應義塾大学病院での取り組み

<各領域の専門家の協力とチームワーク>

図8.慶應GISTチームの医療体制

図8.慶應GISTチームの医療体制

内科

薬物療法は腫瘍センター医師や消化器内科・消化器外科医師を中心に適切に診療を実施します。常に最新のエビデンスと標準治療を意識したうえで、難しい医学用語を分かりやすく丁寧に説明します。

外科

手術が必要な場合には、消化器外科を中心とし各診療科が協力体制のもとで安全な手術を実施します。
ご参考:粘膜下腫瘍・GIST 胃粘膜下腫瘍に対する新しい治療外部リンク(慶應義塾大学医学部 一般・消化器外科 上部消化管班)

病理

診断医は病理医と画像診断医が、常に協力体制を敷いておりますので安心して治療を受けられます。

文責: 消化器内科外部リンク
最終更新日:2022年6月28日

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