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ホーム > 病気を知る > 膠原病と免疫の病気 > びまん性筋膜炎(diffuse fasciitis)、好酸球性筋膜炎(eosinophilic fasciitis)

びまん性筋膜炎(diffuse fasciitis)、好酸球性筋膜炎(eosinophilic fasciitis)

びまんせいきんまくえん、こうさんきゅうせいきんまくえん

概要

びまん性筋膜炎は、手足の皮膚硬化を特徴とし、皮膚硬化組織を顕微鏡で詳細に検討すると、皮下にある筋膜に好酸球を伴うびまん性の炎症を来すことが明らかとなり、1975年にShulmanによって報告された疾患です。当初は血液中の好酸球の比率が高いこともその特徴として報告され、好酸球性筋膜炎と呼ばれていましたが、その後、好酸球の比率が高くない例や、組織で好酸球がそれほどみられない症例が明らかとなり、現在はdiffuse fasciitis with or without eosinophilia(好酸球増加を伴う、または伴わないびまん性筋膜炎)の病名が使用されています。

頻度は比較的まれで、これまで300例ほどの報告がある程度です。報告例の男女比はほぼ1:1で、好発年齢は30~60歳ですが、小児の報告もみられます。約半数で激しい運動や外傷を契機に発症することが知られていますが、病気の原因は不明です。過剰な免疫反応と炎症性サイトカインの関与が推測されています。ほかに薬剤、感染症、血液疾患、悪性腫瘍、自己免疫疾患などが背景にあることが発症に関与しているとされています。

症状

比較的早い経過で、手足の左右対称性なむくみと皮膚の硬化が進行します。手の甲から腕に向かって、また足の甲から足、太もも、体に向かって広がりますが、手の指と顔は障害されません。むくみが数週間のうちに皮膚の固さとなり、静脈と一致した皮膚の凹み(grooveサイン)や、腕や太ももの皮膚表面の凹凸(orange-peelサイン)がみられることがあります。病変主座は真皮深層から筋膜であり、表皮から真皮表層は侵されないため、皮膚はつまみあげられないものの圧迫によりシワを生じます(板状皮膚硬化)。筋肉の痛みがあることもあります。多くの症例で手の曲げづらさ、足の関節の動かしにくさがあり、手根管症候群や関節炎を来す例もあります。別の章に述べる全身性硬化症(強皮症)と異なり、レイノー現象や爪上皮の変化や内臓の病変、自己抗体は通常みられません。また炎症が高度の場合には体重減少や疲労感を来すこともあります。

検査所見

血液の検査では約80%の症例で好酸球の増加がみられますが、なくても否定はできません。炎症反応やガンマグロブリン値は高値を示します。リウマチ因子や抗核抗体は通常陰性で、10%程度で陽性となることもありますが、低力価でこれまでに特異自己抗体の報告はありません。筋膜の炎症が筋におよぶと、筋肉の酵素であるクレアチンキナーゼやアルドラーゼが上昇することがあります。

硬化した組織を顕微鏡でみると、真皮、皮下脂肪組織、筋膜に線維化と炎症性細胞が集まっている像が特徴的です。MRI検査では筋膜に沿った著明な肥厚と浮腫を呈し、診断および生検部位の特定、治療効果の判定にも有用です。また最近では超音波検査やFDG-PET/CTでも筋膜の炎症が検出でき、その有用性が報告されています。

診断

現在のところ世界的に受け入れられている診断基準はありません。激しい運動などの誘因、急性の経過、特徴的な身体所見と検査結果からこの病気を疑い、強皮症などほかの皮膚が固くなる疾患を否定することが診断の手がかりとなります。参考として2014年にスペインのグループより提案されている診断基準を以下に示します。

大基準

  1. 対称性、あるいは非対称性で、四肢、体幹と腹部のびまん性あるいは四肢の限局性の、皮膚と皮下組織の腫脹、硬化、肥厚。
  2. 組織を取って顕微鏡でみる検査で、リンパ球とマクロファージ(ともに免疫に働く細胞)が集まった筋膜の肥厚を確認。好酸球の集まりはあることとないことがある。

小基準

  1. 好酸球増多>500/μL
  2. 高ガンマグロブリン血症>1.5g/L
  3. 筋肉の弱さ、アルドラーゼの上昇は伴うことと伴わないことがある。
  4. Grooveサイン、あるいはOrange-peelサイン
  5. MRIで筋膜の炎症の所見

除外診断:全身性強皮症
大基準を2つ満たす、あるいは大基準1つと小基準2つを満たすと診断になる。
(Autoimmunity Reviews, 2014; 13: 379-382より引用)

治療

中等量から大量の副腎皮質ステロイド(体重1kgあたり0.5~1mg)で治療を開始し、2~4週ごとに減量します。高度の浮腫を伴う場合や進行が急速な場合は、ステロイドパルス療法が用いられることもあります。治療の目標は皮膚の固さが改善することと関節の動きが良くなることで、そのためには早く治療を開始することが重要です。治療効果が不十分な例や再発例では、ステロイドの増量やメトトレキサートなどの免疫抑制剤が併用されます。発症してから早く治療を開始すれば、ほとんどの例で寛解が達成でき、1~2年で治療を中止することが可能です。生命予後は良好ですが、関節拘縮による機能障害が日常生活動作の低下をもたらすことがあります。

慶應義塾大学病院での取り組み

慶應義塾大学病院には数名の患者さんが通院しています。皮膚科などのほかの診療科とも連携を取りながら、適切な診断・治療を心掛けております

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文責: リウマチ・膠原病内科外部リンク
最終更新日:2024年9月9日

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