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ファブリー(Fabry)病

ふぁぶりーびょう

概要

ファブリー病は、イギリスの皮膚科医師アンダーソン(Anderson)とドイツの皮膚科医師ファブリー(Fabry)により、別々に「びまん性体幹皮角血管腫」として1898年に初めて報告されました。この病気は、細胞内のリソゾーム(ライソゾーム)の酵素がなくなったり、酵素の働きが低くなることで、体の中で様々な症状が引き起こされる「代謝異常症(たいしゃいじょうしょう)」の一つです。この病気の原因は、ある遺伝子の変異が原因です。

からだの中でリソゾームの酵素(α-ガラクトシダーゼ)がなくなると、からだの細胞に必要のない糖脂質(とうししつ)(グロボトリアオシルセラミド(Gb-3)、別名セラミドトリヘキソシド:CTH))が溜まるため、手足に激しい痛みを感じたり、皮膚や尿の異常、また下痢や脳梗塞、心臓の病気など、全身に症状が現れます。病気が悪くなると、腎臓、心臓、脳などに臓器障害を来し、突然死することもあります。

ファブリー病は今まで、X染色体劣性遺伝と呼ばれていたため、主に男性の疾患と考えられていました。しかし、近年では女性でもファブリー病に特有の臨床症状がみられるため、X染色体性遺伝とされています(Kobayashi M et al. (2008))。通常、古典型ファブリー病は、欧米では40,000(男性)~110,000人に1人の割合といわれていますが、最近での新生児マススクリーニングでは、約7,000人に1人の割合でファブリー病の患者さんが認められたという報告もあります(Inoue T et al. (2013))。また、心臓のみに現れる心ファブリー病も、一般に考えられるよりも多く存在しているといわれております。後に説明示しますが、鹿児島大学のグループでは左心室肥大の男性230例中7例(3%)にファブリー病患者がいることを報告しています(Nakao S et al. (1995))。遺伝子の異常があるため、遺伝子を持った本人から、子どもに伝わる可能性があり、家系の中で代々受け継がれていくケースも多くみられます。

また、ファブリー病は国が難病(特定疾患)と指定している「ライソゾーム病」に分類されている病気です。ファブリー病は、適切な治療や生活環境を整えることで、病気の進行を遅らせ、日常生活における生活の質の改善を期待することができます。

心ファブリー病

心ファブリー病を含むファブリー病は、循環器内科領域においては心筋疾患のなかで「特定心筋症」として分類されており、まれな病気と考えられていました。心ファブリー病とは、ファブリー病の亜系で、主に心臓の筋肉に、糖脂質が溜まる病気です。 最初は、心臓の筋肉が厚くなり、肥大型心筋症(ひだいがたしんきんしょう)のように心肥大がみられますが、病期の進行とともに一部もしくは全体の左室壁運動低下が出現し、拡張型心筋症となり、心不全や不整脈を起こします。

疫学と分類

ファブリー病は大きく分けて、3つに分類できます。さらに、男性は古典型と、亜型(表1)に分類され、女性はヘテロ接合体とされております。

  • 古典型 (男性)
    「ファブリー病の症状」が、ほとんど全て出現します。α-ガラクトシダーゼの酵素活性はほとんどありません。

  • 亜型(Later-onset型)(男性)
    発症年齢が遅く、症状が一部に限られる場合です。そのうち、心ファブリー病は主に心臓のみに症状が現れ、腎ファブリー病は主に腎臓に症状が現れます。
    古典型に比べわずかに酵素活性を持つといわれています。

  • ヘテロ接合体(女性患者)
    重い症状を示す人から、ほとんど症状を示さない人まで、いろいろです。しかし、年齢が進むと多くの人に何らかの臓器障害(心臓、腎臓、神経など)が出現するといわれています。最近は、女性のファブリー病の患者も注目されております。

表1. ファブリー病の分類

表1. ファブリー病の分類

(衞藤 義勝.日本内科学会雑誌.98巻4号.p.875-882(2009)より表を引用)

症状

ファブリー病は、細胞内リソソーム(ライソゾーム)の加水分解酵素の一つである「α-ガラクトシダーゼ(α-GAL)」という酵素の遺伝的欠損や活性の低下により起こる病気です。

この酵素は「GL-3(グロボトリアオシルセラミド、別名セラミドトリヘキソシド:CTH)」という糖脂質を分解する働きを持ちますが、活性が不十分だと分解されなかったGL-3が徐々に全身の細胞や組織、臓器に蓄積していきます。蓄積したGL-3がある一定量を超えると、疼痛を含む神経症状、被角血管腫(ひかくけっかんしゅ)、角膜混濁(かくまくこんだく)などのほか、心機能障害、腎機能障害など、様々な症状が出現します(図1、表2)。

また、図2に示すように、年齢により症状が変化することが特徴的です。5~10歳頃より四肢疼痛の神経症状や被角血管腫という皮膚の病変を認めます。30歳代になり、若くして脳血管障害、心機能障害、腎臓機能障害を認めるようになります。

表2. ファブリー病の症状 

障害される臓器

症状

脳血管障害(のうけっかんしょうがい)

皮膚

低汗症(ていかんしょう)、被角血管腫(ひかくけっかんしゅ)

神経

四肢疼痛(ししとうつう)、知覚障害(ちかくしょうがい)

角膜混濁(かくまくこんだく)、白内障(はくないしょう)

心臓

心肥大(しんひだい)、不整脈(ふせいみゃく)

腎臓

タンパク尿(たんぱくにょう)、腎不全(じんふぜん)

消化器

腹痛(ふくつう)、下痢(げり)、便秘(べんぴ)、嘔吐(おうと)


図1. ファブリー病患者さんの角膜混濁

図1. ファブリー病患者さんの角膜混濁
(Susanne Pitz et al. PLoS One, Vol 10, 2015より引用)


図2. ファブリー病患者さん の自然経過

図2. ファブリー病患者さんの自然経過
(Ales Linhart et al. Heart, Vol 93, 2007より図を改変)

診断

ファブリー病の確定診断

以下のような診断方法をいくつか組み合わせて、ファブリー病の確定診断を行います。

  • 症状の確認・家族歴の確認
    ファブリー病に特徴的な症状があるかどうかを、症状の聴取から精密検査を用いて調べます。また、遺伝をすることが多いので、ご家族における症状の確認も必要となります。ただし、ファブリー病は家族歴のないde novo変異(突然変異)として発症する場合もあります(Kobayashi M. Mol Genet Metab Rep 1(2014):283-387)。

  • 酵素診断
    血液中の血漿(けっしょう)、白血球、あるいは尿中のα-ガラクトシダーゼ(α-GAL)活性の測定を行います。酵素活性の欠損または低下があれば確定診断となります。

  • 生化学的診断
    主に血液や尿を採取し、特殊な糖脂質(GL-3、Lyso-Gb3)が蓄積しているかを調べます。もしくは、臓器の組織中のGL-3の量を調べることもあります。

  • 病理診断
    皮膚や腎臓、心臓などの組織のごく一部を採取して、異常があるかどうかを顕微鏡で調べます。

  • 遺伝子診断
    血液や皮膚の細胞を使って、遺伝子を検査します。女性のファブリー病では、酵素活性のみでは診断できない場合があり、遺伝子診断が行われることもあります。しかし、日本人のファブリー病家系の約5%でGLA遺伝子変異を特定できないことが報告されております(Kobayashi M et al. (2019))。

診断に関する近年の研究

(1)心エコーでの所見

2006年に、イタリアから心エコー図検査にて心内膜側の"binary appearance"が診断に有用であると報告されています。この所見は、肥大型心筋症では確認できないことから両者の鑑別点として挙げられました(図2)が、現在はその鑑別は明確ではありません。

図3. ファブリー病の心臓エコー所見

図3.ファブリー病の心臓エコー所見
(Maurizio Pieroni et al. Journal of the American College of Cardiology Vol. 47, No. 8, 2006より図を引用)

(2)心臓MRIでの検査所見(T1mapping)

2013年に、イギリスから心臓MRI検査で、T1 mappingという特殊な検査法にて心ファブリー病を診断する方法が報告されています(図4)。当院でも同様の検査を行うことが可能です。

図4. ファブリー病の心臓MRI所見

図4. ファブリー病の心臓MRI所見
(Sado et al. Circulation Cardiovasc Imaging, Vol 6, 2013より図を引用)

(3) 尿沈渣でのマルベリー小体、マルベリー細胞

近年では、尿中に存在するマルベリー小体・マルベリー細胞がファブリー病の早期診断に重要です。マルベリー小体は渦巻き状の構造で、マルベリー細胞は桑の実に類似しており、尿細管細胞または糸球体上皮細胞などに蓄積したGb3(GL-3)が元になっていると考えられています。マルベリー小体・細胞からファブリー病の診断へと繋がった報告も多数あります(図4)。 特徴的な所見として、変更をかけると十字架のように見えます。「マルタの十字」とも言われております(図5)。

図5. 尿中マルベリー小体・マルベリー細胞(上段:マルベリー小体、下段:マルベリー細胞)

図5. 尿中マルベリー小体・マルベリー細胞(上段:マルベリー小体、下段:マルベリー細胞)

心肥大の患者さんの中に心ファブリー病は潜在している

近年の診断技術の進歩により、心肥大などを持つ患者さんに対して採血や遺伝子診断などを用いて、ファブリー病を発見しようという試みがなされています。1995年に鹿児島大学のグループでは左室肥大の男性230例中7例(3%)にファブリー病患者がいることを報告しています(図3)。また、イタリアのグループでは肥大型心筋症の女性34例中4例(12%)にファブリー病の存在を確認しています。よって、心ファブリー病は、原因不明の左室肥大の患者さんの中で、これまで考えられていたよりも高い確率で心ファブリー病が存在していることが考えられます。

心ファブリー病では、心筋生検を施行し、図4のように通常の顕微鏡写真では、心筋細胞の淡明化、空胞変性がみられ、電子顕微鏡写真では、高い封人体を有する異常なライソゾームが多数確認できる「ミエリン・フィギュア」と称される層状構造が観察されます。

図6. 心ファブリー病の心筋生検(A:光学顕微鏡写真、B・C:電子顕微鏡写真)

図6. 心ファブリー病の心筋生検(A:光学顕微鏡写真、B・C:電子顕微鏡写真)
(Nakao S et al. THE NEW ENGLAND JOURNAL OF MEDICINE Vol.333 No.5 1995 288-293より図を引用)

最近、この病気に対する根本的治療法の一つである「酵素補充療法」が我が国でも可能となり、心障害に対する有用性が報告されはじめています。このため、原因不明の左室肥大を有する患者さんにおいて心ファブリー病を発見し、症状が進む前から診断および治療を開始することが臨床的にきわめて重要であると考えられます。
もはや、「心ファブリー病は、治療可能な心筋症」になりつつあると考えられています。

心ファブリー病の簡便な診断-循環器内科における臨床試験-

上記のように、「心ファブリー病は、治療可能な心筋症」になりつつあります。早期発見のために、我々慶應義塾大学病院循環器内科は、以下のように検査・診断を行っております。

当院循環器内科の外来あるいは入院の患者さんから、心臓エコー、心臓MRI検査にて心筋の壁が厚い方を対象として、個別に十分にお話をさせていただきながら診断を進めております(図7)。少しでも、心ファブリー病が気になるようでしたら、お気軽に当院循環器内科外来へご相談ください。

図7. 心肥大が疑われる患者のファブリー病のスクリーニング

図7. 心肥大が疑われる患者のファブリー病のスクリーニング(男性の場合)

治療

ファブリー病の治療には、根本的な治療法と症状を緩和させる対症療法があります。ファブリー病の根本的な治療には、酵素補充療法、シャペロン療法があります。また、現在は基質合成抑制療法、遺伝子治療が現在臨床試験を行っております。

対処療法

疼痛に対しては、ジフェニルビダントイン(フェニトイン)およびカルバマゼピンが有用であり、現在も広く使われています。腎障害に対しては、ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬、ARB(アンジオテンシンll受容体拮抗薬)が用いられています。ファブリー病に対しては、伝導障害に対する抗不整脈薬のほか、消化器症状、中枢神経症状に対して、症状にあわせて薬物療法が行われます。末期腎不全に対しては腎移植、血液透析を行います。

酵素補充療法(こうそほじゅうりょうほう)

ファブリー病は、「α-ガラクトシダーゼ」という酵素が欠損したり、活性が低下しているために起こる疾患です。酵素補充療法は、体内に足りない「α-ガラクトシダーゼ」を点滴で補充し、からだに蓄積している、ヒトにとって不要な糖脂質(GL-3)を分解する治療法です。これにより、症状の改善や病気の進行を抑えることができます。

日本では現在、3つの遺伝子組換え製剤がファブリー病の酵素補充療法治療薬として認められています。くすりは、2週間ごとに外来に受診し、点滴で補充します。1回の投与につき約40分~3時間程度かかります。当院では、3号館南棟(免疫包括医療センター)にて、"快適に" 酵素補充療法を行うことができるようになりました。

薬理学的シャペロン療法(やくりがくてきしゃぺろんりょうほう)

薬理学的シャペロン療法は、2018年3月に承認された新しい治療法です。患者さんの体内に存在する不安定な酵素を安定化されることで、細胞内において酵素が本来の働きをできるようにサポートします。2日に1回経口で服用するお薬となります。服用を開始する前に遺伝子の変異型を調べ、お薬の効果が得られることが確認された患者さんに処方されます。

さらに詳しく知りたい方へ

文責: 循環器内科外部リンク
最終更新日:2021年6月15日

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