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胎児治療

たいじちりょう

概要

胎児治療とは、赤ちゃんの病気を出生前に診断して、母体の安全を確保しつつ、生まれる前の赤ちゃんに治療を行うものです。母体に薬物を投与するなど、比較的身体への負担の少ないものから、妊娠子宮を開いて直視下に胎児に手術を施すなどの負担が大きいものまで、多様な胎児治療の試みが始まっています。身体への負担が大きい治療では、治療後に妊娠を継続させる技術がまだ十分に確立されておらず、胎児が娩出される危険が高くなります。このため、胎児外科治療を適用するのは、生後の治療では救命することが極めて困難な病気や状態に限られています。小児外科領域の代表的な胎児治療には以下のようなものがあります。

治療

1.EXIT

帝王切開による分娩時に、臍帯(さいたい)を切り離すことなく臍帯の血行を確保しつつ胎児に処置を行う手技をいいます。胎児の頚部に巨大な腫瘍があるなど、通常の分娩では生直後の気道確保が困難な場合などに適しており、腫瘍を摘出し、胎児気道を確保した後に臍帯を結紮(けっさつ)・切断します。母体の安全のためには、胎児に対する手術時間を長くとることはできません。

2.先天性横隔膜ヘルニアに対する胎児治療

先天性横隔膜ヘルニアに対する胎児手術は、Harrisonらにより1960年に最初の成功例が報告されました。その後、子宮を開いた状態での直接手術は身体への負担が大きすぎるという理由で行われなくなりました。その後、母体の経腹的に胎児鏡を用いて胎児の気道をバルーンで閉塞し、出生時までの患側肺の成熟を促進する方法(PLUG)が開発されました。しかしながら生後の治療手技が進歩し、2003年のHarrisonらによる無作為比較試験の結果では生後治療とPLUGで救命率の有意差が得られないことが明らかにになり、現在アメリカでは胎児治療はほぼ行われなくなっています。一方、ヨーロッパでは、適応する患者を選択すれば治療効果があり有用であるとする立場から、胎児治療が継続して行われています。

3.胎児CCAM(先天性嚢胞状腺腫様形成異常)に対する胎児肺葉切除術

胎児の嚢胞性肺疾患の一部は出生する前に嚢胞が腫瘍の様に増大して胎児水腫から胎児死亡を引き起こします。そこで、妊婦の子宮を開き、さらに胎児の胸を開いて病変の肺葉を切除する胎児手術を行うことがあります。身体への負担が大きい治療のため、適応の決定が非常に難しいですが、重篤な経過を取る症例では唯一の救命手段となる可能性があると考えられています。

4.脊髄髄膜瘤の出生前修復

脊髄髄膜瘤に対して、妊娠子宮を開いて出生前に修復を行う治療であり、これにより生後に下肢麻痺などの神経障害を回避する可能性が期待されています。3施設における無作為比較試験の現時点の報告では、生後に治療する例と比較して水頭症に対するシャント留置率と下肢の運動に若干の改善がみられますが、母体や胎児の危険が増加することも指摘されています。

図

文責: 小児外科外部リンク
最終更新日:2020年10月15日

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