頭痛の神経ブロック治療
概要
頭痛は様々な疾患で生じ、治療にあたる診療科も様々です。多くは、神経内科、脳神経外科、耳鼻咽喉科、眼科、整形外科などで扱う病気が原因で生じます。また、頭部だけにとどまらない病気、例えば糖尿病や睡眠時無呼吸症候群などの病気が原因で頭痛が生じる場合、それぞれの病気を治療する科が担当します。麻酔科でも頭痛を軽減する治療手段の1つとして、神経ブロック治療を行うことがあります。
慶應義塾大学病院麻酔科で治療している対象疾患には、緊張型頭痛(きんちょうがたずつう)、後頭神経痛(こうとうしんけいつう)、変形性頚椎症(へんけいせいけいついしょう)による頭痛、などがあります。変形性頚椎症では、頚部、肩、上肢の痛みを伴うことが多いため、「頚部・肩の痛み」の項で扱い、ここでは省略します。
頭痛の種類によって、トリガーポイントブロック、星状神経節ブロック、後頭神経ブロックなどを行います。局所麻酔薬によるブロックを週1~2回繰り返していくことにより、徐々に頭痛が緩和されていくことがあります。
症状
緊張型頭痛
緊張型頭痛では、頭蓋骨を覆う筋肉の緊張が高まり、締め付けられるような痛みが生じます。また、後頭部では、神経が筋肉や筋膜の中を通過するので、筋の緊張が高まると神経を刺激して痛みを生じることがあります。麻酔科での治療は、この筋の緊張をほぐしたり、刺激される神経の興奮を抑える目的で行います。トリガーポイントブロック、後頭神経ブロック、星状神経節ブロックなどの中から、それぞれの症状にあったものを選択して行います。
トリガーポイントブロックは、筋肉の中で圧痛がある部位に局所麻酔薬を注入するものです(「神経ブロック」の項参照)。緊張型頭痛の患者さんでは、特に僧帽筋に圧痛があることが多く、ここにトリガーポイントブロックを行うと、痛みと筋の緊張が緩和されることがあります。
星状神経節(せいじょうしんけいせつ)ブロックは、頭部の交感神経の緊張を緩和します(「神経ブロック」の項参照)。頭部の筋肉の緊張には交感神経の興奮が関わっている場合があるので、交感神経の興奮を抑えることで、筋の緊張を緩和しようとするものです。頚部の前方からブロックを行います。
後頭神経ブロックでは、後頭部の表面を走っている神経のまわりに局所麻酔薬を浸潤することで、神経の機能を一時的に抑え、痛みを抑えることができます(「神経ブロック」の項参照)。いずれのブロックも、1回で痛みがなくなってしまうわけではないので、症状に応じて週に数回行い、継続して治療していくことになります。
後頭神経痛(こうとうしんけいつう)
後頭神経は、左右にそれぞれ、大後頭神経、小後頭神経があり、後頭部から耳の後ろまでの知覚を司っています。後頭神経痛は、片側の後頭部から耳の後ろまでの範囲に限って生じる神経痛で、発作性に電気が走るような痛みを生じます。髪をとかす、頭を洗うなど、毛髪に触ることで痛みが誘発されます。同じような場所の痛みでも、腫瘍や炎症で痛みが生じることもありますので、画像検査や血液検査で、ほかの疾患がないことを確認した上で、神経痛の治療を行います。
後頭神経ブロックなどの神経ブロックのほかに、プレガバリン(商品名:リリカTM)や、ガバペンチン(商品名:ガバペンTM)といった、抗けいれん薬が有効なことがあり、痛みが出現している期間飲み続けていただきます。
文責:
麻酔科
最終更新日:2021年8月17日