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ホーム > 病気を知る > 脳・脊髄・神経の病気 > 脳腫瘍 > 下垂体腺腫 (脳腫瘍の病気)

下垂体腺腫 (脳腫瘍の病気)

かすいたいせんしゅ

概要

下垂体腺腫は、ホルモンの中枢である下垂体前葉のホルモンを産生・分泌する腺細胞由来の腫瘍で、ほとんどは良性です。ホルモンを過剰に分泌する機能性(ホルモン産生)腺腫とホルモンを分泌しない非機能性腺腫に分けられ、ホルモン産生腺腫には、成長ホルモン産生腺腫(先端巨大症、巨人症)、プロラクチン産生腺腫、副腎皮質刺激ホルモン産生腺腫(クッシング病)、甲状腺刺激ホルモン産生腫瘍などがあります。頻度は、非機能性腺腫が約40%、プロラクチン産生腺腫が約30%、成長ホルモン産生腺腫が約20%とされています。

症状

症状は、下垂体腺腫が大きくなり、周囲組織を圧迫することによる症状と、ホルモン過剰分泌による内分泌症状の2つに分けられます。下垂体は頭蓋底正中部にあるトルコ鞍と呼ばれる骨のくぼみに存在し、下方には蝶形骨洞と呼ばれる副鼻腔が位置し、上方には視神経が存在します(図1)。

非機能性腺腫ではホルモン症状がないため、腺腫が大きくなるまで症状は出ず、典型的には視神経圧迫により両耳側半盲(視野の外側が見にくい)という視野障害が最初に生じます。さらに正常下垂体が圧迫されれば下垂体機能障害が生じ、疲れやすくなったり、色白になったり、性機能障害(男性)や月経不順(女性)が出現したりします。

成長ホルモン産生腺腫は、骨端線の閉じる前 (思春期前)では巨人症となり、成人では手足の先端や額、下顎などが肥大し先端巨大症となります。顔貌が変化し、指輪が入りにくくなります。先端巨大症のほかの症状としては、発汗、関節痛、咬合不全、睡眠時無呼吸などがあります。また、糖尿病や高血圧の合併頻度が高いことや、大腸がんや心血管障害の保有率が高いことも知られており、放置すれば寿命が約10年短くなるといわれています。

プロラクチン産生腺腫は若い女性に多く、月経不順あるいは無月経と乳汁分泌が現れます。妊娠ができない不妊症の原因の1つにもなります。

副腎皮質刺激ホルモン産生腺腫(クッシング病)は、副腎皮質刺激ホルモンの産生が亢進し、過剰となることで、顔が丸くなったり、体幹部を中心とした脂肪沈着を来す中心性肥満になるなど、様々な症状が現れます。その他、高血圧、糖尿病、骨粗しょう症や、むくみ、多毛、にきび、腹部に赤い筋が現れたりします。放置することで死亡率が高くなるといわれています。

甲状腺刺激ホルモン産生腫瘍は、甲状腺ホルモンが過剰となることで、動悸、手のふるえ、多汗、眼球が突出するなどの症状がみられます。

診断

頭部CT、MRIにて診断を行います。このうち頭部MRIは診断に最も有効な検査であり、造影剤を用いることで近くにある正常の下垂体との写り方に差が生じ、腫瘍の伸展範囲や正常構造との境界が明瞭となります。最近の画像技術の進歩により、数ミリ大の小さなものも診断できるようになりました。また、ホルモン値の異常については内分泌内科と連携し、血液検査や負荷試験などを行い、精査します。視野障害については眼科で詳細に検査します。

治療

非機能性腺腫、成長ホルモン産生腺腫、副腎皮質刺激ホルモン産生腺腫(クッシング病)、甲状腺刺激ホルモン産生腫瘍に対しては、手術摘出が第一選択となります。手術アプローチとしては、通常、脳への影響が少ない経鼻内視鏡手術(鼻からの手術)が選択されますが、腫瘍の大きさや進展方向によっては開頭術が選択されることもあります。

経鼻内視鏡手術

図1.

経鼻内視鏡手術

プロラクチン産生腺腫に対しては、カベルゴリンなどの薬物療法が第一選択とされます。ほとんどの症例でプロラクチンの正常化が得られますが、中止後に再発する可能性があります。また、薬の副作用で使用できない場合、薬の効果が十分でない場合、また微小腺腫で手術により正常化できる可能性が高い場合などは、手術を行います。

成長ホルモン産生腺腫や副腎皮質刺激ホルモン産生腺腫は、手術でホルモンの正常化が得られない場合、術後に薬物治療が行われます。また、術後残存腫瘍(主に海綿静脈洞部腫瘍)に対して放射線治療が行われることがあります。

以下、当院での手術症例です。この患者さんは、サイズの大きい下垂体腺腫でしたが、経鼻内視鏡手術にて腫瘍を全摘出することができました。術前の視野では両外側(耳側)が欠損していましたが、術後ほぼ改善しました。

慶應義塾大学病院での取り組み

当院では、耳鼻咽喉科との合同チームで経鼻内視鏡手術を行っています(文献1)。以前は、多くの施設で脳神経外科単独で顕微鏡手術によって行われていましたが、経鼻内視鏡手術における耳鼻咽喉科医の役割が大きく、米国の最先端施設では耳鼻咽喉科との経鼻内視鏡チーム手術が標準的になりつつあります。当院では、鼻内操作は耳鼻咽喉科医が、頭蓋内操作は脳神経外科医が行い、それぞれお互いの知識と経験を生かし、安全かつ確実な手術を行うことを心がけています。

下垂体腺腫の手術は、周囲に視神経、内頚動脈などの大切な器官があるため、モニタリング、ナビゲーションシステム、超音波検査などを用いることで、より安全性を高める工夫を行っています。事前の準備も大切であり、シミュレーション3D画像を作成することで、鼻腔内の構造や大切な血管、神経などの位置関係を明らかにします。

以下は、実際の3Dシミュレーション画像です(3DCTA)。緑色部分が腫瘍で、血管を巻き込んでいることが分かります。

MRIによる詳細な解析に加えて、3DCTAシミュレーション画像や術中ナビゲーションは、腫瘍を安全に摘出するために重要です。

関連リンク

参考文献

  • Kikuchi R, Toda M, Tomita T, Ogawa K, Yoshida K. Surgical Outcome of Endoscopic Endonasal Surgery for Non-Functional Pituitary Adenoma by a Team of Neurosurgeons and Otolaryngologists Adenoma by a Team of Neurosurgeons and Otolaryngologists. Turk Neurosurg. 27(1):1-7, 2017

文責: 脳神経外科外部リンク
最終更新日:2019年6月6日

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