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水疱症

すいほうしょう

症状

水疱症(すいほうしょう)は、皮膚に水疱、いわゆる「みずぶくれ」やびらん(ただれ)を生じる病気をまとめた総称です。ウィルス性、細菌性疾患ややけどなどの物理的刺激による水疱は除きます。免疫の異常によって生じる自己免疫性のものと、遺伝子の異常による先天性のものとで、病気を引き起こす原因によって2つに大別されています。ここでは、自己免疫性水疱症について解説します。

私たちの体は、細菌やウィルスといった外敵から守るために、自己と異なる異物を認識し排除する免疫というしくみを備えています。自己免疫疾患とは、その免疫系が自分自身の正常な細胞や組織に対して攻撃を加えてしまう疾患です。自己免疫性水疱症は、自分の皮膚の表皮、あるいは粘膜の上皮にある成分を攻撃する抗体が体内で作られてしまい、その結果、細胞がバラバラに離れて皮膚や粘膜に水疱を生じる病気です。人から人へとうつる病気ではありません。自己免疫性水疱症は、水疱が起こる深さによって天疱瘡群、類天疱瘡群に分かれます(図1)。

  1. 天疱瘡(てんぽうそう)
    自分自身の細胞を攻撃する抗体のことを自己抗体と呼びます。天疱瘡の患者さんでは、表皮または粘膜上皮の細胞どうしを接着する鎖のような役割を持つ、デスモグレインというタンパクに対する自己抗体が作られてしまいます。そのため、皮膚の細胞と細胞が接着することができなくなり、やけどのような水ぶくれやびらんが生じます。
    天疱瘡群の大部分は、尋常性(じんじょうせい)天疱瘡、落葉状(らくようじょう)天疱瘡です。尋常性天疱瘡は、最も多いタイプの天疱瘡です。口腔粘膜にびらんが生じて、痛みを伴い、食事がとれなくなることがあります。また、全身に発赤(はっせき)や、水疱がたくさん現れ、皮膚の表面から大量の水分が失われたり、感染を起こしたりする場合があります。落葉状天疱瘡では、全身に浅い水疱とびらんができますが、粘膜の症状は見られません。
    好発年齢は、40~60歳代で、やや女性に多い傾向があります。比較的稀な病気で、国内では4,000~5,000人の患者さんがいると推定されています。

  2. 類天疱瘡(るいてんぽうそう)
    類天疱瘡群では、自己抗体による水疱が、表皮または粘膜上皮の下で起こります。代表的な疾患である水疱性類天疱瘡では、表皮とその下の真皮の接着に重要な役割を持つ、BP180とBP230というタンパクに対する自己抗体が作られます。膜が厚い水疱が多発するのが特徴で、水疱ができる前に皮膚が赤くなり、かゆみを伴うことが多いです。類天疱瘡の患者さんは70歳以上の高齢者に多く、高齢化により、さらに患者さんが増えることが予想されます。
図1

図1

診断

診断は、視診、組織検査、血液検査によりなされます。
組織検査は、診断を確定するためには不可欠で、水疱部、水疱周囲の正常皮膚部分の皮膚を局所麻酔下に小さく採取し、水疱がどの部分で生じているか診断します。蛍光抗体直接法という検査により、皮膚に抗体が沈着しているかどうかを観察します。天疱瘡では、表皮細胞の表面に抗体が沈着し、類天疱瘡では、表皮と真皮の境界の部分に線状に抗体が沈着しているのが確認できます。

さらに、血中の自己抗体を検出するために血液検査を行います。方法には、蛍光抗体間接法、ELISA法、CLEIA法、免疫ブロット法などがありますが、特にELISA法、CLEIA法では自己抗体の量を指数で表すことができ(抗体価)、多くの患者さんで病気の勢いと相関することが知られているので、治療の指針となっています。

治療

軽症で治療が不要な症例以外では、自己抗体の産生と働きを抑える免疫抑制療法が必要となります。現状では、副腎皮質ホルモン(ステロイド)の内服が中心的な役割を果たしています。通常は入院の上、プレドニゾロン(PSL)換算で1mg/kg/日(たとえば体重60kgの人なら60mg/日)でステロイド投与が開始されます。水疱の新生がなくなり、病気の勢いが落ち着いてきたら、ステロイドの量を徐々に減らしていきます。ただし、治療を開始して2週間程度で病気の勢いが制御できない場合、ステロイドパルス療法、血液中から抗体を除去する血漿交換療法、免疫グロブリン大量静注療法などを、必要に応じて追加することもあります。また、ステロイドを減量しやすくするために、病初期から免疫抑制剤を併用することも少なくありません。

自己免疫性水疱症は、一度治療を開始すると長期にわたって経過を観察する必要があり、将来的にステロイドの内服量をPSL換算で10mg/日以下にすることが治療のゴールです。その達成のためには、病初期に十分な治療を行うことの重要性が提唱されています。治療中は、副作用の出現に注意するため、定期的に外来に通院し、血液検査などを受ける必要があります。

生活上の注意

適切な治療を受けることにより、多くの方が通常の生活を送れるまでに回復します。生活上の注意点の多くは、ステロイドの副作用に関係しています。ステロイドおよび免疫抑制剤を内服中の患者さんは、感染症にかかりやすい可能性があり、風邪などを引かないように気をつける必要があります。ステロイドの副作用に糖尿病、肥満、骨粗鬆症、高血圧などがあります。したがって、高タンパク、低炭水化物、塩分控えめ、低脂肪の食事を心がけ、食べ過ぎないようにしなければなりません。また骨粗鬆症を予防するために、適度な運動を心がけましょう。

医療費助成について

天疱瘡と類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む)は厚生労働省により特定疾患に指定されています。これらの疾患が疑われる場合、住んでいる地域の保健所に申請書類がありますので、主治医に必要事項を記入してもらい、都道府県の所轄課に申請します。認定されれば医療費が補助され、毎年1回書類により再審査を受けます。補助が受けられるのは申請日から、という点にも注意が必要です。

慶應義塾大学病院での取り組み

慶應義塾大学病院は、天疱瘡や類天疱瘡などの自己免疫性水疱症の患者さんの受診者数が多く、豊富な治療経験があります。急性期の症状の激しい時期には入院が必要ですが、症状が落ち着いた患者さんは、主に免疫病外来外部リンク(木曜午後)に通院していただいています。ステロイドや免疫抑制剤の副作用を最小限にとどめるため、ELISA法やCLEIA法で自己抗体の抗体価を定期的に検査し、きめ細やかに治療計画を立てています。

また、天疱瘡や類天疱瘡に対して実施されている、新しい治療薬の臨床試験や治験に参加していただける場合があります。詳しくは、担当医までご相談ください。

さらに詳しく知りたい方へ

文責: 皮膚科外部リンク
最終更新日:2022年10月3日

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