キアリ奇形
概要
キアリ奇形は、小脳の形成異常に関連した奇形ですが、キアリ1型と2型が主なものです。キアリ1型奇形は、小脳の一部(小脳扁桃)が頭蓋骨の下縁にある大後頭孔より下垂した状態をいいますが、脳幹が下方へ偏位していることもあります。頭蓋骨と頸椎移行部に骨の異常が多くみられるために、後頭骨の低形成がキアリ1型奇形の原因と考えられています。しばしば脊髄の中に空洞が生じる脊髄空洞症を合併します。一方、キアリ2型は、小脳と脳幹がともに脊椎管内へ陥入した状態で脊髄髄膜瘤を合併します。ほぼ全例に水頭症がみられます。脊髄髄膜瘤に伴う奇形であるため、髄膜瘤の修復術が必要ですが、水頭症の治療時期を含め、患者さんの状態により治療法が異なります。ここでは、キアリ1型の症状と治療法について説明します。
症状
頭痛、頸部痛が頻度の高い症状ですが、咳き込んだりくしゃみによって頭痛が誘発されることも特徴の1つです。小脳扁桃の下垂が強い場合は、めまい、誤嚥、嗄声、歩行障害などの症状が出ます。また、合併する脊髄空洞症により、腕から手にかけてのしびれや筋力低下を自覚することが多く、これらの症状は数年から十数年かけてゆっくり進行します。
診断
頭部MRI検査がもっとも重要で、小脳扁桃が大後頭孔より下垂していると、キアリ1型と診断されます。脊髄MRIにより脊髄空洞症の有無を検査します。また、CTやX線で、頭蓋骨の形成異常、側弯など脊椎の変形を調べます。
治療
基本的には小脳扁桃が下垂して空間が狭くなり、延髄などが圧迫されている大後頭孔部の減圧術(大孔部減圧術)を行います(図1)。
図1.大孔減圧術
後頭骨の一部を削除した後、人工硬膜を用いて硬膜を形成して、空間を拡げます。この手術で合併する脊髄空洞症も改善する場合がほとんどです。改善しない場合は、空洞内にカテーテルを入れて、溜まった水をくも膜下腔へ流す手術(空洞-くも膜下腔短絡術)を行う場合があります。
文責:
脳神経外科
最終更新日:2018年3月23日