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声帯の病気

せいたいのびょうき

声帯とその障害

声帯は"のどぼとけ"を形成する甲状軟骨の中にある1~1.5cm程度の器官です。声は、左右二本の帯状の声帯が振動して生じます。男性の会話では毎秒100回、女性では毎秒250回も声帯が振動します。この、楽器の弦のような声帯の振動に異常があると、嗄声(させい:声がれのこと)を生じます。

診断

喉頭ファイバースコピー検査、喉頭ストロボスコピー検査、発声機能検査などにより比較的簡単に、安全に各病気を診断できます。
声帯がん(喉頭がん)を疑う声帯の所見があるときには、組織を取って調べる病理組織診断が必要になります。

生活上の注意

どの病気においても、普段から声の衛生観念をもって過度の喫煙、飲酒や乾燥した空気を避け、声帯を大事にすることが大切です。声帯の病気になりやすい声を使う環境を考慮しないと、症状が悪化したり、治療後に病変が再発する可能性があります。
喫煙者の方はがんの可能性も念頭に入れて、嗄声が続く場合には耳鼻咽喉科での診察を受けることをおすすめします。

声帯の代表的な病気について

声帯ポリープ

声帯にこぶのような腫瘤(ポリープ)が生じた状態で、血管の破たんによるものとされています。

  • 原因
    無理な発声が一番の原因となり、歌手や学校の先生など、声を多く使う人によくみられます。喫煙や局所の急性炎症も誘因となるため、風邪でのどに炎症があるときに無理に発声した後などにも生じます。
  • 症状
    嗄声が主症状ですが、のどの違和感を感じることもあります。また、いつもは歌えていた歌が歌いにくくなり、話すと疲れを感じることがあります。
  • 治療
    できて間もないポリープであれば、声を使わずに声帯を休めたり、消炎剤の吸入や内服で消えることもあります。保存的治療で改善しない場合や高度の病変の場合には、外科的切除が望まれます。手術は、喉頭顕微鏡下手術(ラリンゴマイクロサージェリー)といって、顕微鏡による拡大視のもとに行われます。

声帯結節

声帯に生じる結節状の隆起(ペンだこのようなもの)です。声を出すときに、もっとも強くこすれあう声帯の中央部分に生じます。そのため両側にできることが多く、若い女性や学童期の男児に好発します。

  • 原因
    声の乱暴な使いすぎが原因となります。しかも、その環境が長期間にわたって続いている場合に、多くみられます。
  • 症状
    嗄声、声域の幅の減少とのどの違和感などが主な症状です。
  • 治療
    保存的治療として声の衛生についての指導と音声治療で治る場合もあります。保存的治療を行っても効果がないときや病変が高度な場合は、注意深く結節を切除する喉頭顕微鏡下手術が有効です。また、手術をした後も手術前と同様に声を酷使した場合、再発してしまう可能性があるので、日頃から声の衛生概念を持って生活することが重要です。

ポリープ様声帯

ポリープ様声帯は声帯が全長にわたり浮腫状に腫大した(むくんだようにはれた)状態をいいます。声帯ポリープや声帯結節は声帯の一部に限られた病変ですが、ポリープ様声帯では声帯全体が病変になります。多くの場合、両側に生じます。

  • 原因
    患者さんにヘビースモーカーが多いことから、喫煙が原因といわれています。
  • 症状
    嗄声(低音のだみ声となることが多い)を生じます。それ以外に、のどの違和感や乾燥感などの症状を生じることもあります。
  • 治療
    まず、禁煙が大切です。これが達成されるだけでも、声帯の腫れが軽度のものであれば治ることがあります。また、消炎薬の投与やステロイドホルモンの吸入治療が効果を示すこともあります。しかし、特に声帯の腫れが中程度から高度なものでは、保存的治療は無効なことが多く、声帯粘膜下の浮腫状組織を取り除く喉頭顕微鏡下手術が行われます。

声帯萎縮

声帯萎縮は、声帯の容積が減少することにより、声を出そうとしても隙間ができてしまう状態をいいます。

  • 原因
    声帯萎縮をきたす代表的な疾患としては、声帯麻痺、声帯溝症、加齢に伴う変化などがあります。声帯溝症は、声帯粘膜の縁に前後に走る溝状の凹みができたもので、生まれつきのこともありますが、後から炎症などが原因となって生じることもあります。加齢に伴う変化は、高齢者(特に男性に多い)の声帯全体が弓状に萎縮して生じます。急な体重減少によることもありますが、特に誘因がない場合もあります。
  • 症状
    嗄声、声の出しにくい感じ、よわよわしい感じを生じます。
  • 治療
    保存的治療としては、音声治療があります。声帯に強い力が働くようにするといった訓練を行います。その他、手術的治療には、アテロコラーゲン、自家脂肪などを用いる声帯内注入術があります。術後は、音声療法により発声練習などが重要となります。

喉頭乳頭腫

喉頭乳頭腫は声帯や仮声帯に好発する良性の腫瘍です。乳頭腫自体は本来良性ですが、多発性、再発性の症例においては治療に難渋することが多くみられます。

  • 原因
    ヒト乳頭腫ウイルス6型および11型が喉頭の乳頭腫形成に関与しているとされ、若年発症の症例は、出生時の母親からの産道感染であると推定されています。通常の生活で周囲のヒトへ感染することはありません。
  • 症状
    ほとんどが腫瘍により嗄声を生じますが、生後1年未満に発症した症例では高度の呼吸困難で発見されることもあります。
  • 治療
    外手術的治療として、現状では顕微鏡下のCO2レーザーによる治療が主流ですが、日帰りでの経喉頭ファイバー下のレーザー手術も有効な治療として行っています。乳頭腫は粘膜上皮の疾患であることから、必要最低限の処置に留めることが大切であると考えられています。
    保存的治療(補助療法)として、抗腫瘍効果、抗ウイルス効果、免疫力亢進を期待して、漢方や、キャベツなどの十字花科植物の主成分であるI3Cを補助療法として用いることがあります。

声帯麻痺(反回神経麻痺)

声帯麻痺は声帯の動きが悪くなる病態です。片側の麻痺と、両側の麻痺で症状や治療法が異なります。

  • 原因
    声帯を動かす反回神経が何らかの原因で障害されることで生じます。手術時の挿管や肺、甲状腺、食道などの病気が原因となることがあります。はっきりとした原因が分からないこともあります。
  • 症状
    片側の麻痺では、嗄声が主な症状になります。食べ物や唾液が気管に入る誤嚥の症状も生じやすくなります。両側の麻痺では、麻痺した位置によっては呼吸困難が生じます。
  • 治療
    片側の麻痺では、動かない方の声帯の位置を調整することによって、声を出しやすくする手術が可能です。手術の術式は、披裂軟骨内転術、甲状軟骨形成術Ⅰ型、声帯内注入術などがあり、声帯の位置や全身状態によって術式を決定します。音声治療を行うこともあります。両側の麻痺では、緊急の場合気管切開を施行して、呼吸の通り道を確保します。緊急ではない場合は、レーザーでの声帯の切除や声帯を外側に引っ張るEjnell法といった手術で呼吸の通り道を広げます。

慶應義塾大学病院での取り組み

手術について

声帯の手術は、喉頭顕微鏡下手術(ラリンゴマイクロサージェリー)として行われ、全身麻酔で行うため入院が必要です。手術の前日に入院していただき、入院期間は約3日間です。また、病理組織検査で悪性の有無をチェックするので、喉頭がんとの区別も同時に可能になります。この手術のあとには声帯の傷の安静のために、1週間前後の沈黙期間を要します。
年間の手術件数は約230件と全国でも有数の件数です。

さらに詳しく知りたい方へ

文責: 耳鼻咽喉科外部リンク
最終更新日:2023年3月6日

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