埋伏歯
概要
埋伏歯(まいふくし)とは、歯の頭(歯冠-しかん-)の全てまたは一部が、顎の骨や歯肉の中に埋まって出ていない歯のことをいいます。
歯が骨の中に完全に埋まっているものを「完全埋伏歯」、歯冠の一部が見えているものを「半埋伏歯」または「不完全埋伏歯」といいます。
埋伏歯は、1歯から数歯埋伏しているものから、同時に多数歯が埋伏しているものまで種類は様々です。
症状
一般に、完全埋伏歯ではほとんどが自覚症状はありません。しかし、完全埋伏歯は位置や方向の異常を伴うことが多く、矯正治療を行う上で抜歯が必要となったり、まれに症状のないまま埋伏歯の周りに嚢胞(膿の袋)を作り、レントゲン撮影をした際に病気に気付くことがあります。また、埋伏歯を含む顎骨腫瘍の可能性も考えられます。
半埋伏歯では汚れが溜まりやすいことから、細菌感染による炎症を周囲の歯や歯肉まで生じやすくなります。
主に多く見られる症状は、親知らず(智歯)の周りの歯肉が炎症を起こす「智歯周囲炎」です。炎症が顎や周囲の組織へ広がると、顔が腫れたり開口障害(かいこうしょうがい:炎症等により口が開きづらくなること)が出ることもあります。また、智歯の場合には手前の歯(第二大臼歯)との間に食片が入り虫歯(う蝕)や歯周病の原因となる可能性や、う蝕が進行して将来的に第二大臼歯の抜歯となってしまう可能性もあります。
また、乳歯がなかなか生え変わらなかったり、乳歯が抜けても永久歯が出てこなくて心配になる方もいらっしゃると思います。いくつかの原因が考えられますが、一つに永久歯が埋伏歯になっている可能性が考えられます。永久歯が何らかの原因で歯茎もしくは顎の骨の中で止まってしまい出てこられない状態の可能性も考えられます。永久歯が埋伏歯になると噛み合わせや歯並びに悪影響が出てしまいますので、歯科への受診をおすすめいたします。
診断
視診や触診の後、埋伏歯の方向や周囲の組織の状態を確認するため、エックス線(レントゲン)撮影を行います。また、歯根と顎の内部の神経の位置関係を詳しく見るため、歯科用CT検査を受けていただくこともあります。また、感染が起こっている場合には、採血を行い炎症の程度を確認することもあります。
図. 埋伏智歯の分類
治療
埋伏歯がある場合は、必ずしも抜歯しなければいけないことはなく、問題がなければそのままにすることもあります。しかし、噛み合わせや周囲の歯や骨に悪影響を及ぼす場合には、抜歯をすることがあります。
抜歯は、炎症がみられる場合には、通常、抗生剤や消炎鎮痛剤を投与して消炎した後に行います。炎症が歯肉だけではなく周囲の組織に広がった場合は、抗生剤の点滴を行うこともあります。
生活上の注意
炎症が生じた場合は、まず第一に口腔内の清潔を保つことが大切です。歯が原因の炎症(歯性感染症)でも重症化し生命に関わる事があります、早めの歯科・口腔外科への受診をおすすめいたします。
症状がひどくなった場合には安静にすることも必要です。
慶應義塾大学病院での取り組み
難しい埋伏歯のほかに、全身疾患を有する患者さんの抜歯にも取り組んでおります。
文責:
歯科・口腔外科
最終更新日:2018年1月12日