骨腫瘍
診断
骨腫瘍の診断においては単純X線がまず施行され、最も診断において有力な情報を得ることが期待できます。しかし脊椎や骨盤など複雑な形態をとり、他臓器と重なる部位においては後に述べるMRIやCTが必要となります。これらにより病変の性状や広がり、周辺組織との位置関係を把握し診断のみならず治療計画にも役立てます。
治療
骨腫瘍には、良性骨腫瘍、悪性骨腫瘍(がん)、腫瘍類似疾患がありますが、ここでは原発性悪性骨腫瘍の代表である骨肉腫の治療について述べます。骨肉腫は腫瘍細胞が類骨、骨を形成するのが特徴の悪性腫瘍です。10歳代の成長期に膝関節の近く、つまり大腿骨遠位骨幹端部、脛骨近位骨幹端部に発生することが多い、悪性度の高い骨腫瘍です。
40年前の教科書には、早期発見、早期切断、予後(病気の見通し)は極めて不良と書かれていますが、化学療法の発達により治療成績は著しく向上しています。実際、我々の治療成績でも1990年以降の症例の5年生存率は74%を示しています。骨腫瘍は初期診断が難しいケースがあり、我々の施設に来るまでに長期間かかったものもあります。また従来の抗がん剤治療がききにくいものが20%ほどありましたが、このような症例に対し、イフォスファミドという抗がん剤が奏功することが多く、今後、さらに治療成績の向上が十分に予想できます。手術方法は大半の症例で患肢温存手術が行われています。そして骨欠損部の再建に、簡便で、膝関節機能が温存できる腫瘍用人工関節の使用や骨移植が行われています。
骨腫瘍の切除および再建には様々な方法があり、代表的な写真を掲載します(図1)。
図1
左上:良性骨腫瘍である類骨骨腫は大きく切開することなく、CTを利用して、数ミリの小さな傷から腫瘍を切除することができます。
左下: 左骨盤悪性骨腫瘍に対し、左股関節を含めて大きく腫瘍を切除したあと、機能を温存するために、腫瘍用人工関節にて再建しています。
右:大腿骨悪性骨腫瘍を切除したあと、体外で加熱処理し、腫瘍を全滅させます。これを再度体内に戻して機能再建に利用しています。このように人工関節を用いない生物学的な再建も行っています。
文責:
整形外科
最終更新日:2017年2月27日