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骨関節疾患のリハビリテーション

こつかんせつしっかんのりはびりてーしょん

概要

骨関節疾患とは、骨や関節が壊れたり変形したりして生じる病気のことです。骨は、人間の身体を支えたり、動かしたりするときに軸となる大事なものです。関節は骨と骨の連結部分で、身体の動きをスムーズに行う役割を果たしています。動きを滑らかにするために、骨と骨の間には、隙間があいており、クッションの役割をする軟骨や、水分(滑液)などが含まれています。関節の変形が起こってくると、クッションの役割をする軟骨がすり減って、徐々に骨と骨の間が狭くなり、重症になると骨の変形も来して、骨同士がくっついてしまうことになります。
膝や肩などの関節、たくさんの関節から構成される背骨(脊椎)の変形によって、痛みや関節の動きにくさ(固さ)が生じて、腰が曲がったり、腰痛や首の痛みが出現します。そのため、日常生活での動作や歩行などに制限が出てきます。1998年の全国調査では、(全国1億2,500万人のうち)腰痛を訴える人は1,160万人、肩こり1,140万人、手足の関節の痛みが680万人となっており、多くの方々が痛みに悩んでいます。
また、骨や関節は、身体を動かすことにおいて非常に重要な役割を果たしていますので、それらの障害によって、痛みだけでなく、上手に動けなくなる、歩きにくくなるといった、運動の障害を生じることがあります。
骨関節疾患という分類に含まれる疾患の種類は、非常に多くあります、ここでは、その中から変形性股関節症・膝関節症、変形性腰椎症・頸椎症、骨折、骨粗鬆症、肩関節周囲炎(四十肩、五十肩)について説明します。

変形股関節症・膝関節症

  1. 原因
    股関節は、骨盤と大腿骨の間の関節です。股関節の変形が生じる原因としては、先天性股関節脱臼の後遺症や、生まれつき股関節に少し変形のあるような形成不全が多いです。膝関節変形の原因としては、生まれつきの変形というよりも、加齢によって立つことや歩くことなど、膝への負担が積み重なることで、関節の変形が進行します。そのため、肥満や重労働を行ってきた方などに多く見られます。また、事故やけがによる外傷も、股関節・膝関節いずれの変形の原因にもなります。
  2. 症状
    最初は、立ち上がったときや歩き始めに痛むという症状が見られます。変形の進行に従って、徐々に痛みが強くなり、また動きの制限も出てきます。しゃがむことができない、正座ができないなど、日常生活に不自由さを感じるようになります。さらに進むと、変形のある足に体重をかけることが難しくなり、歩くことができる距離が短くなってしまいます。
  3. リハビリテーション
    変形の進行によっては、手術を行うことがあります。手術は、変形した関節を人工の関節に変えるというものです。手術を行うほどの変形ではない、あるいは手術を行った方がいいが、何かしらの理由によって行わない場合には、痛みを薬や注射で抑えるような薬物治療やリハビリテーションなどのいわゆる保存的療法を行います。
    • 保存的療法としてのリハビリテーション
      痛みがあると、運動量が減少して、筋力が弱くなってきます。関節の周りの筋肉は、関節を守る働きをするために、筋力が低下すると、更に痛みが強くなってしまいます。そのため、筋力を強くする運動は、痛みの軽減にも役立ちますし、動作をスムーズに行えるようになります。
      また、装具や杖の使用や、痛みを少なくするような動作方法の指導によっても、日常生活を少しでも楽に行い、また活動性を上げることが可能になります。
      関節の動きをできるだけ保つために、関節を動かす訓練(関節可動域訓練)も行います。
    • 手術前後のリハビリテーション
      手術を行うことになった際にも、リハビリテーションは非常に重要です。慶應義塾大学病院では、人工股関節、膝関節の置換手術では、手術の前からリハビリテーションを開始しています。そのことによって、手術前の状態の評価や、手術後のスムーズなリハビリテーションが可能になります。
      慶應義塾大学病院整形外科における人工膝関節置換の手術後の治療計画(クリニカルパス)を表1に示します。リハビリテーションは、手術の翌日より開始され、筋力訓練や関節可動域訓練、歩行訓練などを行います。

表1.人工膝関節置換術を受けられる方の入院から退院までの予定
(※クリックすると拡大画面が表示されます)

図1.人工膝関節置換術を受けられる方の入院から退院までの予定

変形性腰椎症、頸椎症

  1. 原因
    腰椎や頸椎とは、背骨の腰や首の部分のことをいいます。これらの骨は、レンガを積み重ねたように、たくさんの骨からなっており、それらの加齢性変化によって、変形を生じます(図1)。
  2. 症状
    骨と骨の間が狭くなったり、骨がつぶれたりすることによって、いわゆる背骨が曲がったりします。その部分の首や腰に痛みが出ることもありますし、背骨の付近には神経が走っていますので、変形した骨が触ることによって、腕や足に痛みが走ることがあります。
    また、神経の圧迫の具合によっては、しびれや運動麻痺などが生じることもあります。
  3. リハビリテーション
    リハビリテーションでは、変形した骨を治すことは不可能ですし、症状が進行して神経への圧迫が強くなり、運動麻痺が出てくるようなことがあると、手術を行わなければならないこともあります。
    リハビリテーションの目的としては、やはり骨や関節を守る働きを持つ、筋肉を柔らかく保ち、筋力を強くすることです。また、痛みをなるべく生じないように、あるいは動きの制限を補助するような動作の方法を指導します。
    以前は、いわゆる物理療法といわれる牽引や温熱、マッサージなどがさかんに行われていましたが、現在では、それらの効果については疑問視されており、行うときには十分な根拠をもって行うようにしています(当院では、牽引療法は、現在全く行っておりません)。
    図1.変形性頸椎症

    図1.変形性頸椎症

    骨折

    転倒や事故によって骨折してしまったときには、骨折した骨の場所や折れ方によって、手術を行ったりギプス固定をしたりします。
    骨折後のリハビリテーションの目的としては、手術や固定中の経過によって、筋力が弱くなったり関節が固くなったりするのをできるだけ防ぐことです。そのために、骨折部以外の筋力増強訓練や関節可動域訓練や、骨折部であっても骨折の治癒を妨げないような形での訓練を行います。
    また、転んで骨折してしまったという場合には、高齢によって転倒しやすい状態であったり、骨が弱くなっていて(骨粗鬆症)骨折しやすい状態であったりということが考えられますので、再び転倒して骨折するのを予防することが重要です。
    骨粗鬆症の治療法としては、薬を飲む、注射をするといった薬物療法を行いますが、運動をすることによっても骨が強くなりますので、運動療法(筋力訓練や歩行訓練)を加えることも有用です。転倒しやすい状態というのは、足の筋力が弱ったり、またバランスが悪くなったりして起こりますので、筋力を鍛えたり、バランスをよくする訓練を行います。また、杖を使ったり、お家の環境を整えたり(段差をなくす、手すりをつけるなど)することも、必要であれば指導します。

    肩関節周囲炎

    1. 原因
      肩関節周囲炎というのは、1つの病気ではなく、肩の痛みを生じる様々な状態をまとめていうものです。基本的には、肩を構成している骨や軟骨、靱帯や腱、筋肉などが老化して炎症を起こすことによって痛みや動きの悪さを出現すると考えられています。
    2. 症状
      重症の時にはじっとしていても痛むこともありますが、基本的には肩を動かしたとき(腕を挙げたり、後ろに回したり)に痛みが出ることが特徴的です。また、夜間痛といって、就寝中に痛みが強くなって、目が覚めたり、眠れなかったりという症状が出ることもあります。
      炎症それ自体によって動きが悪くなることもありますが、どちらかというと痛いので動かさないことによって、肩の関節が固くなることが多くみられます。
    3. リハビリテーション
      炎症の急性期には、無理に動かすことによって、炎症がさらに悪化する可能性がありますので、安静や薬、注射によって、まず炎症を抑えます。
      ただ、必要以上の安静によって、前述のように肩の関節が固まってしまうことがありますので、炎症を悪化させない程度に動かすことは必要です。
      また、急性期を過ぎたら、積極的に肩の関節可動域訓練を行います。炎症による痛みでなく、関節が固くなったことによっても痛みが出ますので、その区別を行わなければなりません。筋肉や関節の周りの組織を柔らかくし、痛みを抑えるために、温熱療法(関節の周りを温める)を行うこともあります。また、温めた後に関節可動域訓練を行うことで、訓練効果を上げることもできます。

    慶應義塾大学病院での取り組み

    当科では、整形外科からの依頼で、入院・外来の骨関節疾患の患者さんに対して、保存的療法もしくは手術前後(周術期)のリハビリを行っています。リハビリの内容は患者さん個々の状態によって個別のプログラムが作成され、対応しています。

    さらに詳しく知りたい方へ

    文責: リハビリテーション科外部リンク
    最終更新日:2018年3月1日

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