臍帯ヘルニア・腹壁破裂
概要
近年、母体の超音波検査などにより、胎児期(お腹の中にいる間)に診断されることが多くなり、出生前の管理も問題となります。
腹壁破裂:お臍(へそ)のすぐ右側に腹壁の亀裂があり、欠損孔が3cm以下と小さく、羊膜(ヘルニア嚢)がないことが特徴で、ほとんど全ての小腸と大腸が脱出しています。腸管の壁は肥厚し短くなっています。胎生5~8週または8週以降(大部分は8週以降)のお腹の壁が形作られる過程で生じるお臍の右側の弱い部分が破れて生じるものと考えられています。脱出臓器を無理にお腹の中に戻すことは危険なため、人工膜を使用し、段階的に修復を行うこともあります。
臍帯ヘルニア:臍帯からの腹腔内臓器の脱出であり、欠損孔が5cm以上で、羊膜および腹膜により被覆されています。胎生5週以前のお腹の壁を形成する過程の異常により発症すると考えられています。腹壁破裂と違い腹腔の発達は悪く、脱出臓器を無理にお腹の中に戻すことは危険なため、人工膜を使用し段階的修復を行うこともあります。5,000~10,000人に1人の割合で発生します。 ほぼ全例に腸回転異常症を伴います。ときに小腸閉鎖症の合併が認められます。
治療
術前処置・管理として、加湿した暖かいクローズクベース(閉鎖式保育器)に入れて低体温と脱水の予防を行います。脱出腸管が屈曲して腸管の血行が妨げられないよう配慮します。呼吸の安定、腸管サイズ縮小、腸浮腫の防止のため浣腸による胎便の排出を促します。
- 一期的腹壁閉鎖手術
腸管をお腹の中に戻すことが可能な腹壁破裂、臍帯ヘルニア
※ 腸管の還納が可能な条件:下大静脈の閉塞、屈曲による静脈還流の障害や腹腔内圧の過度の上昇がないことが条件です。 - 多期的腹壁閉鎖手術
巨大なヘルニアについてはお腹に戻して閉鎖することにより呼吸障害、腸が腐ってしまう恐れがあるので数回に分けて手術を行います。
治療法:
- Allen-Wrenn(アレン・レン)法:腹直筋と人工布を縫合しサイロを形成、徐々に縫縮し2週間以内に腹壁閉鎖を図る方法。
- Skin closure:上記の方法で感染や合併症を生じた場合、一期的に閉鎖をすることが困難な場合や、重症合併症のある場合、新生児期に皮膚のみで脱出腸管を被覆し、後に腹壁閉鎖を行う方法があります。
- 最近では下記のようにwound retractorという手術中に創部を拡げておく、ナイロン袋の中に腸をはめ込み、次第に絞っていきお腹を閉じる方法がよく使われています。
術後経過
新生児集中治療室で管理となります。一般的には予後は良好ですが、中には胎内死亡や出生直後に重篤な呼吸器合併症で死亡する症例もあります。
文責:
小児外科
最終更新日:2020年10月21日