腸重積症
ちょうじゅうせきしょう
概要
腸重積症(ちょうじゅうせきしょう)は、腸管の一部が連続する腸管の肛門側に引き込まれてしまうことによって生じる病気です。進行すると腸管の血行不全で壊死を来します。成人ではがんに伴って生じることが多く、比較的まれですが、小児では日常的によく遭遇する急性腹症の代表です。
病因
成因は特発性が多いですが、再発例や2歳以降の発症例では、メッケル憩室、ポリープ、腸管重複症、悪性リンパ腫などの器質的疾患の存在を考慮しなければなりません。感冒症状をきっかけに発症することもあります。近年使用されるようになったロタウイルスワクチン接種によるリスクが報告されていますが、ロタウイルスワクチン接種による入院回避や救命効果は合併症とされる腸重積を踏まえても有用とされ、現状では投与を控えることはないといわれています。
- 発症の頻度
- 80%が2歳未満で発症します。ほとんどが、小腸末端である回盲部といわれる部分に発生します。
- 1歳未満では2,000人に1人程度に発症するといわれ、6歳以上での発症は少なく、男児多いです。
症状
間欠的腹痛(啼泣、不機嫌)、嘔吐、苺ゼリー状の粘血便が3徴候であり、触診では、ソーセージ様の腹部腫瘤を触知します。
診断
腹部超音波検査が有用で、典型例ではtarget sign(的のように見える)(▽)を認めます。
治療
- 非観血的整復術(高圧浣腸)
この方法は診断と治療とを兼ねています。静脈路を確保した後に透視室で行います。先進部(▽)を押し戻す方法は造影剤整復法と空気整復法があります。また、透視を使わずに、超音波装置を使いながら、整復する方法もあります。施設によって、選択される方法は異なっていますが、その整復率には大きな差はありません。各施設で、慣れた方法をとることが安全、確実です。 - 観血的整復術
非観血的整復術の不成功例、全身状態不良例、穿孔例、発症から24時間以上経過した例、腹部X線でイレウス(腸閉塞)像が著明な例は、外科的治療の適応となります。開腹後、重積腸管の先進部を用手的に押し戻す操作(Hutchinson手技)を行いますが、重積解除不能例や解除後に血行障害が強い例では、腸切除を行います。
整復後は最低24時間の入院管理が原則です。再発する率が数%から20%ぐらいあり、その30%が24時間以内とされています。 頻回に再発を繰り返す場合や2歳以上で再発する場合は、注腸二重造影法や内視鏡検査にて腸重積を起こす原因疾患の検索が必要です。文責: 小児外科
最終更新日:2020年10月15日