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非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)

ひあるこーるせいしぼうせいかんしっかん

概要

肝臓内に脂肪が蓄積した状態を脂肪肝と呼びます。多量飲酒者では脂肪肝が起きることが知られていましたが、飲酒歴のない人、またはほとんど飲酒しない人(男性 30g/日、女性 20g/日未満(エタノール換算))にも同様の脂肪肝が起きることが分かり、これを非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease : NAFLD)と呼びます。NAFLDは肝臓内に脂肪沈着するのみの単純性脂肪肝と、線維化が進行し、肝硬変や肝がんとなる危険性のある非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis : NASH)に大別されます。脂肪が肝内に沈着する単純性脂肪肝の状態に、インスリン抵抗性、酸化ストレス、炎症性サイトカインなどの何らかの刺激が加わることで非アルコール性脂肪肝炎、肝硬変と進行すると考えられています。

NAFLDの患者さんは国内では人口の約3割とされており、NASHはそのうちの約2割とされています。また、非肥満者(BMI25未満)にもNAFLDが合併することがあり、有病率は非肥満者全体の7~20%と報告されています。NAFLDは食生活の欧米化に伴い増加傾向にあり、今後も増加していくと予想されています。

NAFLDの原因には、肥満糖尿病脂質異常症高血圧といった生活習慣病のほかに、睡眠時無呼吸症候群乾癬、多嚢胞卵巣症候群、甲状腺機能低下症、下垂体機能低下症などの疾患、膵頭十二指腸切除術、空回腸バイパス術などの手術後の中心静脈栄養や薬剤(タモキシフェン、バルプロ酸、アミオダロンなど)などがあります。しかし、単純性脂肪肝からNASHへ進展する直接の原因に関しては、インスリン抵抗性、酸化ストレス、遺伝的素因など様々な影響が報告されていますがまだ定まったものはありません。

症状

単純性脂肪肝、NASHの段階に特徴的な症状はなく、無症状で経過することがほとんどです。肝線維化、肝硬変への進展に伴い、他の原因同様、全身倦怠感、掻痒感、黄疸などの症状がみられるようになります。

診断

NAFLDの診断は、1)画像または組織学的に肝臓に脂肪蓄積(肝細胞の5%以上)があり、2)アルコール・薬剤・遺伝子疾患による二次性脂肪肝を除外する、とされています。NASHの病理所見として、大滴性脂肪変性、好中球を中心とした炎症性細胞浸潤、肝細胞の風船様変性、Mallory-Denk体、巨大ミトコンドリア、好酸性脂肪壊死、核の空砲化、大小の脂肪肉芽腫、線維化としてはpericellular fibrosis、perisinusoidal fibrosisが特徴的とされています。組織学的診断に必要な肝生検は負担がかかることから、体にやさしく簡便に肝線維化を定量化できる装置として超音波エラストログラフィや、MRIを使用したMRエラストグラフィが開発されています。いずれも肝臓の線維化と脂肪沈着の両方を同時に測定可能であり、NAFLDおよびNASHの診断に有用です。また、身体所見や採血結果を用いてNASHが疑われる患者さんを選別するスコアリングシステムもいくつか報告されています。代表的なものとして、NAFIC スコア(フェリチン、空腹時インスリン、4型コラーゲン7Sを用いた指標)、NAFLD フィブロシススコア(年齢、BMI、糖尿病、AST/ALT比、血小板、アルブミンを用いた指標)、FIB-4 index(年齢、AST、ALT、血小板を用いた指標)があります。

治療

NAFLDの治療として大事なことは、単純性脂肪肝の患者さんはNASHに移行させないこと、NASHの患者さんは線維化の進行を抑え肝硬変・肝がんへと移行させないこととなりますが、現時点で確立された治療法はなく、第一に食事・運動療法です。減量は非常に有効です。過去の報告では5%の体重減少で日常生活の質が改善し、7%以上の減量で肝脂肪化や炎症細胞浸潤、風船用腫大を軽減することが分かっています。NAFLDに対する有酸素運動の効果は広く知られていますが、近年レジスタンス運動も有用と報告されました。糖尿病や脂質異常症、高血圧などを合併している場合は、それらの治療に伴って改善します。また、その他の薬物療法として抗酸化剤であるビタミンEや、胆汁酸を刺激物質とする核内受容体であるFXR作動薬のオベチコール酸、糖尿病治療薬であるピオグリタゾン・SGLT2阻害薬・GLP-1アナログ薬がNASHの改善に有効であると報告されています。その他、現在国内では線維化を改善する薬の治験も行われています。高度の肥満がある場合(BMI≧37など)は、外科治療として減量手術(腹腔鏡下スリーブ状胃切除)もあります。

文責: 消化器内科外部リンク
最終更新日:2022年6月28日

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