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原発性胆汁性胆管炎(PBC)

げんぱつせいたんじゅうせいたんかんえん

概要

原発性胆汁性胆管炎(Primary biliary cholangitis: PBC)は慢性進行性の胆汁うっ滞性肝疾患です。肝臓内で作られた胆汁の流出路である胆管が免疫学的機序により破壊され、胆汁が肝臓内にうっ滞するために胆汁中の成分であるビリルビンが血管内に逆流して全身の組織にビリルビンが沈着します。炎症と肝臓内にうっ滞した胆汁により次第に肝細胞が破壊され、徐々に肝硬変へと進行します。その結果、肝臓の働きが低下すると、黄疸、腹水貯留、意識障害などの症状がみられ肝不全に至ります。

日本における原発性胆汁性胆管炎の患者数は約5万人から6万人と推定されています。ヨーロッパ諸国の有病率は日本の3-4倍といわれています。50-60歳代の中年以降の女性に好発し、男性の割合は全症例の10%前後です。

この病気の原因はまだわかっていませんが、免疫反応の異常が病態に関与していることが知られています。ほとんどの症例において、自己抗体の一つである抗ミトコンドリア抗体が陽性となります。その他遺伝学的背景や微生物感染、物理化学的因子、ストレスなどの環境要因が発症に関与することが推測されますが、詳細は明らかになっていません。

症状

皮膚のかゆみ、黄疸、食道・胃静脈瘤、腹水、肝性脳症など肝障害に基づく自他覚症状を有する症候性原発性胆汁性胆管炎と、これらの症状を欠く無症候性原発性胆汁性胆管炎に分類され、無症候性原発性胆汁性胆管炎の進行は極めて緩徐です。病名には「肝硬変」とついていますが、多くの方は実際には「肝硬変」になっていません。

現在診断を受けている患者さんの多くに自覚症状はなく、このような状態は無症候性原発性胆汁性胆管炎と呼ばれます。さらに診断後も一生無症状のまま経過する患者さんも多いです。一方で症候性原発性胆汁性胆管炎における初発症状は皮膚の掻痒感(かゆみ)が最も多く、進行すると黄疸が出現します。また、我が国ではあまり注目されていませんが、疲労感(つかれ)は欧米では原発性胆汁性胆管炎の最も一般的な症状と考えられています。疲労症状は進行度や黄疸の有無、 血液生化学検査値などとは関連がなく、むしろ心理的因子との関連が強いことが示唆されています。病気が進行して胆汁うっ滞性肝硬変の状態になると、肝炎ウイルスやアルコ-ルなど他の原因による肝硬変と同様に、浮腫・腹水や肝性脳症などの肝不全の症状がみられ、経過中に肝臓がんを合併することもあります。またこの疾患は、肝硬変の兆候である食道・胃静脈瘤が他の原因による肝障害よりも生じやすく、静脈瘤の破裂による吐血や下血ではじめてこの病気であることが分かることもあります。

原発性胆汁性胆管炎は骨粗鬆症、骨塩減少などの骨病変、口腔・眼の乾燥症状(Sicca syndrome)、脂質異常症を高率に合併します。また、他の自己免疫疾患を合併することが知られており、日本においては約20%にシェーグレン症候群、約5%に慢性関節リウマチ、約5%に慢性甲状腺炎が合併すると報告されています。また同じ肝臓の自己免疫疾患である自己免疫性肝炎(auto immune hepatitis; AIH)を合併しPBC-AIHオーバーラップ症候群と診断される患者さんもいます。実際にそれぞれ別の疾患である原発性胆汁性胆管炎と自己免疫性肝炎の2つの疾患がたまたま合併したものか、単に自己免疫性肝炎の病態が重なった原発性胆汁性胆管炎であるのか、原発性胆汁性胆管炎の病態が重なった自己免疫性肝炎であるのかについて結論は得られていません。PBC-AIHオーバーラップ症候群の正確な診断は、肝臓専門医のもとで肝生検を含めた検査により診断されます。 治療法について、原発性胆汁性胆管炎と自己免疫性肝炎が同時に重複した場合は、治療の基本であるウルソ単独内服に比べ、自己免疫性肝炎の標準治療であるステロイドを併用することにより肝硬変への進行が少ないとされています。

診断

原発性胆汁性胆管炎では、次のような臨床検査値の特徴があります。

  1. ALP、γ-GTPの上昇
    肝内胆汁うっ滞を反映して、胆道系酵素(ALP、γ-GTP)上昇。さらに進行すると黄疸の指標であるビリルビン値が上昇します。
  2. 血清IgM値
    血清IgM値は90%以上の症例で高値となります。
  3. 抗ミトコンドリア抗体
    原発性胆汁性胆管炎に特徴的な自己抗体である抗ミトコンドリア抗体が約90%で陽性となります。抗ミトコンドリア抗体は抗M1-M9の9亜型に分類され、中でも抗M2抗体が関与することが知られています。そのため、現在は直接抗M2抗体を測定します。

その他抗セントロメア抗体や抗gp210抗体が陽性になる症例もあり、診断の一助となります。基本的には上記の臨床検査値と肝生検による組織所見、臨床経過を総合して原発性胆汁性胆管炎の診断を行います。

治療

原発性胆汁性胆管炎の治療は薬物療法が中心となります。ウルソデオキシコール酸(商品名ウルソ)という薬に原発性胆汁性胆管炎の進行を抑える働きがあることが分かり、重症例以外では第1選択として広く使われています。この薬は胆汁の成分である胆汁酸の一種で、肝臓の細胞を保護する働きがあります。まれに、副作用として胃痛や下痢などの消化器症状が現れる方がいますが、多くの方ではほとんど副作用はみられず長期にわたって飲むことができます。また、脂質異常症の治療に広く使われているベザフィブラート(商品名ベザトール)という薬が有効であることが報告され、ウルソの効果が乏しい人にも効果がみられることがあります。

原発性胆汁性胆管炎に特徴的なかゆみに対しては、抗ヒスタミン薬や胆汁成分を吸着するコレスチラミン(商品名コレバイン)が処方されることがあります。さらに近年かゆみを知覚する神経の働きを抑え症状を軽減する新しい止痒薬であるナルフラフィン塩酸塩(商品名レミッチ)が開発され、原発性胆汁性胆管炎に伴うかゆみに対しても高い効果がみられることが報告されています。

原発性胆汁性胆管炎が進行して肝硬変に至った場合は、他の原因による肝硬変と同様に腹水や肝性脳症に対する治療を行います。食道や胃に静脈瘤ができ、放置しておけば出血の危険性が高いと予測される場合は予防的に内視鏡を使った治療が行われます。これら様々な内科的治療を行ってもなおその効果がみられない場合、肝移植治療を検討します。身内に肝臓を提供する方がいらっしゃる場合は生体部分肝移植が行われ、そうでない場合には脳死肝移植が検討されます。病状が進行した場合には早めに移植外科医を受診し、内科と移植外科の連携のもと治療を行う必要があります

文責: 消化器内科外部リンク
最終更新日:2016年9月6日

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