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高安動脈炎 (Takayasu arteritis: TA)

たかやすどうみゃくえん

概要

高安動脈炎は、全身の大血管に炎症が起こる疾患のうちの一つです。大血管とは、大動脈とそこから分岐する血管であり、頭や腕、足、内臓に血液を送る血管です。高安動脈炎は1908年に日本の眼科医 高安右人博士によって報告されたことからこの名がつきました。海外でも一般的に"Takayasu arteritis"と呼ばれ2012年のCHCC(Chapel Hill Consensus Conference)において大血管の血管炎に分類され、その疾患概念は【大動脈およびその第1分枝を優位に侵す、しばしば肉芽腫性となる血管炎であり、一般的に50歳より若年に発症するもの】と定義されています。脈が触れない症状から「脈なし病」、大きな血管を侵すことから「大動脈炎症候群」とも言います。これらの血管に炎症が起こることで、血管が狭くなったり、逆に壁が薄くなり拡張するなどして、様々な症状をもたらします。明確な原因はわかっておりませんが、血管炎の組織の中にはマクロファージやT細胞といった多くの免疫を担当する細胞が見られること、ステロイドや免疫抑制薬などによる免疫抑制療法が効果を示すことが多いことなどから、免疫異常が関与していると考えられています。また、一部にはHLA-B52やHLA-B39、HLA-Bの近傍にあるMICA遺伝子と発症との間に遺伝的な関連性も指摘されています。

高安動脈炎は厚生労働省の定める特定疾患に指定されています。特定疾患は、患者数が比較的少ないために原因の究明や治療法の開発が困難となりうることから、公費助成の対象となっています。特定疾患などの調査から、推定患者数は約6,000人と言われています。関節リウマチが推定70万人であることを考えると、まれな病気と言えます。また、男女比は日本人の場合1:9で女性が多く、発症年齢は女性の場合20歳前後にピークが見られますが、男性の場合は発症年齢にはっきりとしたピークが見られません。

症状

初期の症状として、発熱、全身倦怠感、体重減少などが挙げられますが、他の症状は、障害を受けた血管の部位により異なります。最も多く見られる症状は、腕へ流れる血管が障害されることによる、血圧の左右差であり、厚生労働省の報告では46%程度の患者さんに見られるとされています。他には、手首の脈が触れにくくなり(約31%)、腕が疲れやすくなります(約25%)。また、頭へ流れる血管に障害が起こると、めまい(約20%)、失神(約3%)、頭痛(約20%)、視力障害(約10%)などが起こります。腎臓へ流れる血管が障害されると高血圧が出現したり(約41%)、腎機能が低下する(約11%)こともあります。年単位の経過中に血管の拡張病変が生じ、大動脈瘤や心臓の弁の周囲が拡張し、大動脈弁閉鎖不全が起こり、息切れや動悸を来す(いずれも20%程度)ことがあります。時として心臓への血管が障害され狭心症(約15%)を起こすこともあります。また、指先の色調変化(レイノー現象)を来したり、皮膚に潰瘍ができることもあります。以上のように、症状は様々であり、症状出現から診断までに年単位で時間がかかることがしばしばあります。

診断

上記の症状に加えて、血液検査では、血沈やCRPの上昇、白血球の増加など炎症に伴う異常がみられますが、これらは高安動脈炎に特徴的なものではなく、血液検査では顕著な異常が現れない場合もあります。したがって、CT検査、MRI検査、血管造影検査、PET-CT検査などで血管の形状や病変の分布や炎症の度合いを評価することは、診断や血管病変の進行の評価に有用です。特に若い方に画像検査で大動脈とその第1分枝に閉塞性あるいは拡張性病変を多発性に認めた場合は、炎症反応が陰性であっても、高安動脈炎を第一に疑います。

また、血管の分布する各臓器の状態を把握するために、腎臓に対しては検尿や血液検査やエコー検査を行い、血尿・蛋白尿・腎機能低下などを見ます。心臓に対しては心エコー検査などを行います。眼に関しては眼底検査を含めた眼科での検査が必要になります。
手術検体から病理組織が得られる場合もありますが、病初期には大動脈を栄養する血管(大動脈の周囲にあって大動脈に酸素などを送っている細い血管)への細胞浸潤を伴う外膜の単核細胞浸潤、中膜の小梗塞、それを取り囲むリンパ球を主体とした炎症細胞の浸潤が見られます。

さらに診断を進めていく上で、高安動脈炎以外の病気でないことを確認することも重要となります。高安動脈炎と鑑別が必要な病気としては、血管ベーチェット、巨細胞性動脈炎、細菌性動脈瘤、梅毒性中膜炎、炎症性大動脈瘤、動脈硬化症、先天性血管異常などが挙げられます。

MRI画像

頭や腕に行く血管の矢印の部分が狭窄しています。(MRI画像)

治療

症状の程度や体格の違いなどにより投与量は変わってきますが、原則として副腎皮質ステロイド薬が使用されます。一般的にステロイドの治療反応性は比較的良好であり、その場合は徐々にステロイド量を減量していきます。ステロイドはおよそ40%程度の患者さんでは離脱することが可能ですが、ステロイドの量がプレドニゾロン換算で10mg以下まで減量した場合に、半年以上の寛解状態が持続する可能性は30%程度とする報告もあり、これ以降の減量は慎重に行います(Herat Vessels Suppl.1992;7:133-137)。
ステロイドの効果が不十分で治療抵抗性(薬物がききにくい)の場合やステロイドの減量が難しい場合は、しばしば免疫抑制薬などを併用します。免疫抑制薬としてはメトトレキサート、アザチオプリン、シクロスポリン、シクロホスファミドなどが使用されます。また、近年新たな治療として、生物学的製剤であるTNF-α阻害剤に一定の効果が示されています。高安動脈炎では血清のTNF-αレベルが上昇しており、疾患活動性のある高安動脈炎の患者では疾患活動性の安定した患者よりもT細胞からのTNF-α産生が亢進していることが確認されています(Rheumatology.2006;45:545-8)。高安動脈炎に対するTNF-α阻害薬(多くはInfliximab;商品名:レミケード®が使用されています)の使用効果は多くの報告で確認されています(Ann Rheum Dis 2008;67:1567-9)。ただし、現在の日本においては保険未収載です。

抗CD20抗体であるRituximab(商品名:リツキサン®)やIL-6受容体拮抗薬であるTocilizumab(商品名:アクテムラ®)についても効果的であるという報告(Rituximab:Ann Rheum Dis 2012;71:75-9,Tocilizumab: Arthritis Rheum 2008;58:1197-200)がありますが、これらの薬剤も現在の日本においては保険未収載です。

これ以外に、血管の流れを改善させる血管拡張薬、血栓を作らないようにする抗凝固薬や抗血小板薬、血圧を下げる降圧薬などが必要に応じて使用されます。以上のように高安動脈炎は原則として内科的な治療を行いますが、血管病変が進行した場合、外科的治療を行います。進行した大動弁脈閉鎖不全に対しては、弁を置換したり人工血管に置換したります。心臓に分布する血管である冠動脈の狭窄に対しては、血管の通りを良くする血行再建術や他の部位の血管を利用したバイパス術、大動脈瘤に関しては、人工血管置換術などが治療選択肢となります。

治療後の見通しで重要となるものは、腎血管の障害による重症高血圧や、大動脈弁が障害されることによる心不全、心臓自体に流れる血流が障害されることによる心筋梗塞、動脈瘤などです。画像検査の普及で早期発見が可能となったこともあり、より早期に治療を行うようになったため、以前よりも長期生存が可能となっています。

生活上の注意

血管の炎症による血管壁の障害をさらに進行させないために、喫煙、肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症などの動脈硬化の危険因子を減らすよう生活習慣に気をつける必要があります。また、治療によって免疫が抑制されている場合は感染症にかかりやすく、感染症を契機に血管炎の病状が悪化することもあるため、手洗いや風邪の流行期に人ごみに行くときにはマスクをするなどの注意が必要です。規則正しい生活をして、精神的にも肉体的にもストレスを最小限にする生活を心掛けることが重要です。

慶應義塾大学病院での取り組み

血管炎症候群は、関節リウマチなどと比べてまれな疾患ですが、2010年の1年間で25名以上の高安動脈炎の患者さんが当院の外来に通院されています。このような診療実績を基に、当院では高安動脈炎の早期診断と早期治療を心掛け、病気の寛解を目指しています。

さらに詳しく知りたい方へ

文責: リウマチ・膠原病内科外部リンク
最終更新日:2017年2月23日

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