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腹膜透析

ふくまくとうせき

わが国の透析医療の現状

一昔前までは、透析という療法は一般的にはめずらしく「透析」という言葉さえ聞いたこともないという人も多かったと思います。しかし、この10年で患者数は爆発的に増え、2007年末の日本透析医学会のデータでは、慢性透析患者数は27万人を超えています。ご家族や知人が透析を受けているという方も多いのではないでしょうか。皆さんが耳にする「透析」というのは、おそらく血液透析をさすことが多いと思いますが、透析療法には血液透析だけではなく腹膜透析という治療法もあります。ここでは、この腹膜透析という療法がどのような治療法で、どんな意義があるのかについて説明します。


腹膜透析の原理、方法

腹腔内にチューブ(カテーテル)を留置し、そのチューブを通じて透析液を注入し、一定時間おいてから排液します。この透析液の注入や排液は落差を利用して行われます。時間は注入に7~10分、排液に10~15分ぐらいかかります。

このお腹に透析液が入っている間に、図1に示すように、腹膜の血管を通じて過剰な水分や不要な老廃物が透析液側に滲みだしていきます。

図1:腹膜透析の原理

図1:腹膜透析の原理

腹膜カテーテル留置術

腹膜透析を行うには、腰椎麻酔により腹腔内にカテーテル(チューブ)を留置する必要があり、おへその横から縦に皮膚切開を3~7cmおき、カテーテルを挿入します。またその方法は大きく分けて2つあります。一つは、カテーテル挿入と同時に腹膜透析を開始する従来の方法で、もう一つは、カテーテルの挿入の手術と腹膜透析開始(導入)とを分けて行う段階的導入法(SMAP法、SPIED法)です。

  1. 従来法
    従来法では、カテーテルを挿入し、当日より透析開始となり、1回500mlから徐々に増量し、最終的に1回2000mlとなります。この間、約2週間の入院が必要です。
  2. 段階的導入法(SMAP法、SPIED法)
    SMAP法という方法は、腎臓の機能に余裕があり、透析をするまでに時間のある場合に有効で、挿入時にカテーテルを皮下に埋没させ、創が治った後、透析が必要になるとカテーテルの出口部を作成し、透析を開始します。この方法の場合2回の入院が必要ですが、どちらも入院期間は短く1回目(カテーテル留置時)も2回目(カテーテル出口部作成時)も1週間程度で退院できます。また、計画的導入なので、患者さんの都合に合わせられます。
    SPIED法では、カテーテル挿入後創部が治癒し、カテーテルが身体になじんだ1週間後より透析が開始となり、いきなり1回1000mlの注入が可能なため、1回2000mlまで増量するまで約1週間かかり、総入院日数は約2週間となります。従来法と比べて極端に入院がのびることはなく、当院ではこの方法が中心になっております。

腹膜透析の生活リズム

腹膜透析のやり方は、大きく分けてCAPDとAPDの2つがあります。CAPDは、1日かけて3~5回透析液を入れ替えます(図2)。一方、APDは、機械を使って自動的に夜間に3~5回入れ替えし、睡眠中だけで透析を完結させることができます(図3)。ただし、透析を始めた当初は、尿も十分に出ているためCAPDといっても1日中透析をする必要がなく、2~3回実施し、残りの時間は腹腔内を空っぽにしておくことができます。

図2:CAPD患者さんの一日(例)

図2:CAPD患者さんの一日(例)


図3:APD患者さんの一日(例)

図3:APD患者さんの一日(例)



血液透析との比較

透析を大きく2つに分けると、血液透析と腹膜透析という2つの療法があります。血液透析の詳細は別章を参照していただくこととして、ここでは、この2つの療法の関係についてご説明いたします。

まず、もっとも理解していただきたい点は、この2つは相反するものではなく、お互いを補いあうものであるということです。血液透析は、毒素や余分な水分を一定時間で除くことができるすばらしい療法です。しかしどうしても拘束されてしまう時間(週3回、1回3~4時間)が発生してしまいます。

一方、腹膜透析は自宅で行う療法ですので、自分の生活に合わせて行うことができます。また夜間の睡眠中にも行うことができます。

以下にそれぞれの特徴を表に示します。

腹膜透析

血液透析

透析場所

自宅、会社

病院

管理

患者、家族

病院スタッフ

通院回数

月1~2回

月8回~13回

手術

カテーテル挿入

内シャント

体液量管理

厳格には不可能

厳格

心負荷

小さい

大きい

残腎機能

温存

急速に悪化

社会復帰

有利

不利

(表1)腹膜透析と血液透析の比較


腹膜透析の意義

以上のような特徴を有する腹膜透析ですが、具体的にはどのような意義があるのでしょうか?それは、一言で言ってつなぎの療法であるということです。社会的に重要な地位にあり、職場においてどうしても抜けられない役割があるという患者さんや腎臓移植を将来的に受けたいが、すぐに受けることはできないといった患者さんに、時間的猶予を与えることができます。また時間的な問題だけでなく、残腎機能(残された腎臓の機能で尿を生成し余分な水分や毒素を排泄する機能)を血液透析と比較してより長く維持することができるという利点があり、そのことにより、生活の質(QOL)が保たれたり、脳卒中や狭心症の発症が少ないという報告が数多くあります。



腹膜透析の問題点

それでは、腹膜透析の問題点としてどのようなことがあるのでしょうか?

  1. 自己管理能力が必要
    1つは、自己管理を要する療法であるので、自己管理が困難である患者さんが選択するのは適さないことがあります。

  2. 被嚢性腹膜硬化症(ひのうせいふくまくこうかしょう)
    もうひとつは腹膜透析特有の合併症である被嚢性腹膜硬化症という病気があることです。これは、長期間の腹膜透析の実施や、繰り返しの腹膜炎によって腸管表面があたかも火傷したかのように変性し、それに浸出液(フィブリン)が染み出し火傷の"かさぶた"のように腸管を覆い腸閉塞の症状をきたす、命にかかわる恐ろしい病気です。長期間つづけていると発症率ならびに重篤度が上がるという傾向があることがわかっています。ですから現時点では、5~8年した段階で、この病気の危険信号がでれば、腹膜透析を中止しなければなりません。この病気は、腹膜透析を中止したあとでも、発症することが分かっていますが、5~8年以内なら発症率は、2.1%と低率です。また腹膜炎を何度も起こした人もこの病気が起こりやすいことが報告されていますので、日ごろの管理も非常に重要です。


腹膜透析、血液透析、腎臓移植を組み合わせた管理方法

上述したように腹膜透析は現状では、5~8年で中止し、別の療法に変更する必要があります。別の療法とは、血液透析または腎臓移植です。

腹膜透析、血液透析、腎臓移植の3つの療法を自由に組み合わせて、管理することでそれぞれの欠点を減らすことができます。

アメリカ、イギリス、カナダのそれぞれの腎臓病学会は、血液透析、腹膜透析、腎臓移植療法の適切な割合はどのくらいであるかというアンケートを実施したところ、腹膜透析はいずれの国の専門家も30数%であるという結果を複数の国際的一流雑誌に発表しています。すなわち腹膜透析には血液透析に比べても遜色ない利点があるということが国際的に認められているのです。しかし、現在(2006年)日本では、血液透析が96%、腹膜透析が3.4%という割合で、極端に腹膜透析の割合が少ない現状にあり、患者さんのニーズを十分に満たしているとはいいきれません。血液透析、腹膜透析、腎臓移植を組み合わせて、お互いの欠点を補い、またお互いの長所を生かせるように考えて管理していくことが重要です。

慶應義塾大学では、血液透析、腹膜透析、腎臓移植の3つの療法のいずれにも対応できる体制をとっており、これらの療法を組み合わせて腎不全の病状を管理することが可能です。



慶應義塾大学の取り組み

ここでは、慶應義塾の腹膜透析に対する取り組みに関して説明いたします。

  1. 担当医にすぐに相談できる体制
    在宅療法である腹膜透析は、血液透析と異なり、病院に週に何度も通わなくて良いという利点を持っていますが、このことは同時に患者さんが不調や心配な点を訴えたり、コミュニケーションをはかる機会が少ないという欠点にもつながります。この欠点を補うため、慶應義塾ではホームページ上に腹膜透析患者さんだけがアクセスできる担当医とのコミュニケーションシートを開設しています。これにより、患者さんやその御家族は、心配なことや疑問がわいたときに担当医に質問することができます。

  2. 専門外来の開設
    腹膜透析の管理には特殊性があります。一般の外来の患者さんと一緒に受診していたのでは、患者さんにとっても、病院スタッフにとっても非効率的なものとなってしまいます。慶應義塾では、専門の医師、看護スタッフをそろえたCAPD専門外来を2008年11月から開設しています。これにより、腹膜透析特有の検査や診察ポイントをもれなく集中的に行うことができます。

  3. 適格なCAPD療法選択
    慶應義塾では、透析療法を選択する際、血液透析、腹膜透析の利点、欠点を十分に説明し、患者さんやその御家族とともに十分に検討したうえで療法選択を行っています。そのため現実的に無理のない腹膜透析導入をめざし、さらにその上で専門スタッフによる集約的管理を行っております。

  4. APD(自動腹膜透析装置を用いた腹膜透析)の活用
    慶應義塾では、残腎機能に応じて過不足ない透析量を設定しています。導入当初は、残腎機能も高く、一日2~3回の腹膜透析液交換で済みます。しかし徐々に残腎機能が低下してしまい、最終的には腹膜透析液の交換が4回~5回必要になります。これでは、QOLの低下は避けられません。この対策として当院では積極的にAPDを活用しています。APDにより腹膜透析を夜間睡眠中に集中させることができ、QOLを維持できるという腹膜透析のメリットを最大限に引き出すことができるのです。

文責: 腎臓・内分泌・代謝内科外部リンク
最終更新日:2011年12月28日

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