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多発性硬化症

たはつせいこうかしょう

概要

多発性硬化症(multiple sclerosis: MS)は、中枢神経系(脳・脊髄・視神経)に空間的・時間的に多発する脱髄(だつずい)疾患で、20~30代の若い年代で発症しやすいことが知られています。ここでいう「空間的・時間的」というのは「中枢神経系内で場所を変えて再発する」、「1ヶ月以上の間隔をあけて再発する」という意味で多発性硬化症の1つの特徴です。

まだ詳しい病因の解明はなされていませんが、中枢神経系の構成成分の1つである髄鞘(ずいしょう)に対する自己免疫反応が重要と考えられています。神経細胞は、電気活動を適切に行うことで、その機能を果たしています。神経線維は電線の構造と似ていて、軸索(じくさく)といわれる芯の周りを髄鞘が絶縁体のように被っています。この髄鞘が炎症により壊れて中の電線がむき出しになった状態を脱髄といいますが、多発性硬化症では髄鞘に炎症が生じ、脱髄が引き起こされます。

多発性硬化症は、緯度の高い地域に多くまた欧米人に多いといった地域差や人種差があり、我が国では比較的まれな疾患と従来考えられていましたが、平成27年の疫学調査では推定患者数が19,000人を超えており、以前と比べると患者さんは顕著に増えています。また、女性に多い傾向が見られます。

中枢神経系の中でも特に視神経と脊髄に脱髄が多発するタイプが日本では多く、視神経脊髄型多発性硬化症(optico-spinal MS: OSMS)と呼ばれ、欧米人に多い通常型多発性硬化症(conventional MS: CMS)と区別されてきました。この視神経脊髄型多発性硬化症の中には多発性硬化症とは異なる病態と考えられている視神経脊髄炎(neuromyelitis optica: NMO)が含まれており、血液中の抗アクアポリン4(AQP-4)抗体や抗ミエリン・オリゴデンドロサイト糖蛋白(MOG)抗体を測定することで区別することができるようになってきています。

また本疾患は特定疾患に認定されており医療費助成制度の対象となっています。

症状

病変は中枢神経系である脳・脊髄・視神経のどこにでも起こりえるため、様々な症状が出現します。また症状の程度は患者さんによって違います。
起こりうる症状として以下のようなものがあります。

  • 視神経の症状:視力の低下、視野の異常、目を動かすと眼球が痛くなるなど
    これらの症状は両眼または片眼に生じ、急速に進行したり再発を繰り返したりすることがあります。
  • 脊髄の症状:手足に運動麻痺やしびれ、感覚低下が生じます。
  • 排尿・排便障害:自律神経の障害によって起こります。
  • レルミッテ徴候:頭を前に曲げると痛みが生じ、背中から足に向け下降します。発作的に起こります。
  • 有痛性強直性けいれん:持続性の短い痛みを伴い手足が強直します。
  • 脳の症状:物が二つに見える、呂律(ろれつ)障害、顔のしびれ、運動失調、精神症状、けいれんなど

診断

多発性硬化症と診断するには下記のような検査を行います。

脳脊髄液検査

脳や脊髄の周りにある脳脊髄液の性状から、中枢神経系の炎症の有無を間接的に評価する検査です。髄液中の細胞数、タンパクの量や内容、免疫グロブリン産生の状態を調べます。

MRI

多発性硬化症の特徴である空間的多発性を評価します。活動性が高いときは造影剤 (ガドリニウム)を用いると病変部が染まるため、通常は造影剤を注射して行います。なお、喘息の既往のある患者さんには、造影剤の使用は控えさせていただいております。
MRI所見も多岐にわたり、また撮り方によって病変の見え方や意味合いが異なります。T2強調画像やFLAIR (フレア)画像で白いプラークと呼ばれる脱髄巣が確認され、T1強調画像では脱髄病変に不可逆性の変化がおこると黒くうつりT1ブラックホールと呼ばれます。

誘発電位

脱髄による神経の伝導の異常を検出する検査です。
視神経では視神経誘発電位(visual-evoked potentials: VEP)を、脳幹病変では聴性脳幹反応(auditory brainstem response: ABR)を、感覚神経では体性感覚誘発電位(somatosensory-evoked potentials: SEP)を行います。神経が障害されていると自覚症状がなくても異常が見つかることがあります。

治療

多発性硬化症の治療では、病気が悪くなった時(再発期)と症状が落ち着いている時(寛解期)とで治療法が変わります。
再発期では炎症を押さえ込むための治療が中心となります。

ステロイドパルス療法

再発時の基本となる副腎皮質ホルモン(ステロイド)の大量点滴静注療法のことです。通常1日1,000mgのメチルプレドニゾロンを3日間点滴投与します。症状の改善が乏しい場合は繰り返し行う場合もあります。

血漿交換療法

ステロイドパルス療法を繰り返しても重篤な麻痺やその他の症状が残存する場合は発症から3か月以内であれば有効である場合があります(1日おきに7回まで)。
寛解期:再発の予防と様々な神経症状に対して対症療法を行います。

インターフェロンβ

再発予防にはインターフェロンβ(IFN-β)が有効とされていて、30%程度自覚症状のある再発が減少します。
国内で適用となっているのはIFN-β1a(商品名:アボネックス® )とIFN-β1b(商品名:ベタフェロン® )の2つです。前者は、筋肉注射を週1回行い、後者は隔日に皮下注射を行います。いずれも導入時には十分な指導を受けていただき、患者さんに自己注射をしてもらいます。入院せずに導入することも可能です。

グラチラマー酢酸塩(商品名:コパキソン®

欧米では古くから使用されてきましたが、国内では比較的最近認可された薬剤です。再発予防効果はIFN-βと同等と考えられています。毎日1回皮下注射を行います。IFNβ同様に、導入時には十分な指導を受けていただき、患者さんに自己注射をしてもらいます。

フィンゴリモド(商品名:ジレニア® ・商品名:イセムラ®

経口薬で、1日1カプセル内服します。再発は50%程度減少し、また長期的には脳萎縮を抑える効果があることが分かっています。多発性硬化症の活動性を抑える効果はインターフェロンβよりも強いと考えられていますが、副作用もあることから、個々の患者さんの病状に併せて適否が判断されます。飲み始めの数日間は脈が減少する副作用が生じるため、心電図を監視するため、数日間の入院が必要です。

ナタリズマブ(商品名:タイサブリ®

点滴製剤で、4週間に1回、1時間程度の点滴を病院で受けていただきます。再発は60%程度減少し、その効果は他剤に勝ると考えられていますが、多くの患者では長期使用により重篤な副作用を呈することが知られているため、第二選択薬剤となっています。

フマル酸ジメチル (商品名: テクフィデラ®

経口薬で、1日2回朝夕食後にカプセルを服用します。最近認可された薬剤ですが、複数のプラセボ対照ランダム化臨床試験で再発予防効果が確認されており、その効果はグラチラマー酢酸塩に勝ると考えられています。副作用として、発赤や胃腸症状が報告されています。

その他

免疫抑制剤を使用することもあります。また、治験が行われている治療薬が複数存在し、近い将来には治療の選択肢が拡充することが期待されます。さらにリハビリテーション療法も併用し、よい状態を保つようにすることが重要です。

生活上の注意

日常生活に特に制限はありませんが、再発の誘因として感染症、過労、ストレス、出産後などに比較的多くみられますので症状の変化に気をつけてください。
また疲労を感じやすくなったり、体温が上がると症状が一時的に悪くなったり(Uhthoff徴候)することがありますので無理をしないようにしましょう。

さらに詳しく知りたい方へ

  • 難病情報センター外部リンク
    多発性硬化症で検索してください。
  • MSキャビン外部リンク
    その他MSキャビンでは患者さん向けにわかりやすく病気のことをまとめた小冊子や書籍を刊行しています。
  • MSゲートウェイ外部リンク(バイエル薬品株式会社)
    ベタフェロンの発売元のバイエル薬品の患者さん向けのサイトです。
  • 多発性硬化症サポートナビ外部リンク(バイオジェン・アイデックス・ジャパン)
    アボネックスの発売元のバイオジェン・アイデックス・ジャパンの患者さん向けのサイトです。
  • MSラウンジ外部リンク(武田薬品工業株式会社)

文責: 神経内科外部リンク
最終更新日:2017年11月24日

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