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ホーム > 病気を知る > 脳・脊髄・神経の病気 > 重症筋無力症

重症筋無力症

じゅうしょうきんむりょくしょう

概要

重症筋無力症 (MG:Myasthenia Gravis) は、末梢神経と筋肉をつなげる神経筋接合部の病気です。この部分にあるアセチルコリン受容体 (AChR) に対して、血液中にある自分自身の体を攻撃してしまう自己抗体が原因となる、いわゆる自己免疫疾患の1つです。ただし抗AChR抗体が検出されない場合もあります。
重症筋無力症は日本全国で20,000人以上の患者さんがいると推定され、厚労省特定疾患の1つで、年々増加傾向にあります。一般的には20-40代女性に多く発症しますが、小児から高齢者まで幅広く患者さんがいます。

症状

「疲れやすい」という易疲労性が最大の特徴になります。症状は日内変動(特に夕方に増悪します)や週、月単位で症状が変化する場合もあります。過度の疲労、ストレス、風邪などの感染症、薬剤、転居などの環境変化、女性であれば生理で症状が悪化する場合があり注意を要します。

病気のタイプには、「まぶたがさがる」(眼瞼下垂)や「ものが二重に見える」(複視)などの眼の症状に限局する眼筋型が全体の1/3を占めます。残りの患者さんは「手足の力がはいらない」、たとえば「ものがもちあげにくい」、「しゃがみにくい」、「あたまが重く感じる」などの全身の筋力低下と疲労感が出現する全身型になります。注意をしなくてはいけないのは、「ものがのみこみにくい」(嚥下障害)や「しゃべりにくい」(構音障害)、「呼吸が苦しい」などの症状が出る場合です。特に呼吸困難が強くなる場合には自分で呼吸ができなくなり人工呼吸器が必要となるクリーゼという状態に陥る場合が、最も重篤です。病気が発症した時点で、眼筋型であってもその後に全身型になる場合があります。

家族や同僚など周りの人からみて重症筋無力症の症状がどの程度なのか理解してもらえず、患者さんは大変つらい思いをすることがあります。担当医でさえ、重症筋無力症の症状を正確に判断するのはとても難しく、特に限られた時間しかない外来診療でどのような症状があり、またその程度はどうなのか客観的に評価するのは容易でありません。そこで慶應義塾大学神経内科の神経免疫外来では、患者さんに表(QMGスコア)をおくばりしています。ある項目については自宅での状態を患者さん自身につけていただき外来受診時に持ってきてもらいます。記録することで、患者さんの病状を正確に把握することができ、症状の変化を的確にとらえステロイド量の調節など治療方針に反映させています。

症状

診断

一番重要なのは臨床症状です。検査として、筋電図で末梢神経の連続刺激(少し痛い検査です)で振幅の減弱を確認します。アンチレックスという静脈注射をすることで一時的に症状が改善することを確認する方法(テンシロン試験)も有用です。

採血では抗AChR抗体を測定します(結果がでるのには1週間かかります)。しかしこの抗体が検出されない場合やその値と症状が関連するわけではないので、結果に対して一喜一憂する必要はありません。実際、ほとんど症状がなくなるくらいまで改善しても抗AchR抗体が極めて高値である場合や、クリーゼになるくらい重症な重症筋無力症でも抗体が極めて低いあるいは検出されない場合があります。当院では抗AChR抗体以外にも、いくつかの自己抗体を測定することにより病型や予後を判定することが可能であり、治療方針の選択に役立てております。

また重症筋無力症では胸腺という臓器に異常を認める場合があり、肺や呼吸器の症状がない場合でも胸部CTを撮影します。必要に応じて造影を行なう場合やMRIを行なう場合もあります。またいろいろな免疫系の異常が起こる場合があり、甲状腺機能亢進症、橋本病、甲状腺機能低下症、慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患を併発する場合もあります。

一般的には外来通院で確定診断がつけられますが、抗AChR抗体が陰性である場合や、上記の検査で明らかな異常がみられない場合には、入院して精密検査を行なう場合もあります。また眼の症状がない場合や、疲れやすいなどの症状が不定愁訴と判断され、すぐに神経内科に受診できず重症筋無力症の診断が遅れてしまう場合もあります。

治療

重症筋無力症の治療法が確立し予後は著しく改善しており、重症筋無力症が原因で死亡するということはなくなり、平均寿命を全うできます。しかし、ステロイド治療が長期間必要であり、その副作用により生活の質(QOL)が著しく障害される場合や重篤な合併症に苦しむ場合もあります。
近年、重症筋無力症の治療は大きく変化しており、日本の中でも施設や担当医によりその治療選択に大きな差があるのが現状です。担当医がどのような判断基準で治療選択を行なっているのか、きちんとした説明を聞き納得して治療を受ける必要があります。以下、慶應義塾大学神経内科の神経免疫外来での治療方針をご説明いたします。

抗コリンエステラーゼ阻害薬

これは、筋力を改善する作用がありますが、病気そのものを治す治療ではなく、対症的な療法に相当します。メスチノン(60mg)とマイテラーゼ(10mg)があり、後者の方がより強力です。おなかがごろごろしたり、涙・唾液が多くなるなどの副作用がありますが、自然と慣れてきます。持続時間はメスチノンが2-4時間、マイテラーゼは4-8時間持続します。決まった時間に服用していただくのが基本ですが、重症筋無力症の症状に慣れてきた場合には自己調節も許可しています。ただし、一日3錠を上限として、薬を多く飲みすぎないように説明しています。逆に少ない量でも効果のある場合や副作用が強くでてしまう時には半分にして飲んでもらう場合もあります。

副腎皮質ステロイド

重症筋無力症に対する最も基本的な治療法です。どの症例がステロイド治療の適応になるのか、またその内服量はどの程度などか統一した見解はなく、施設により大きな違いがあります。
ステロイドには副作用も多くその使用には充分な注意が必要です。重症筋無力症の場合は少なくても年単位でステロイドを飲んでもらう必要があり、副作用を最小限に抑えるため、必要かつ可能なかぎり少量で重症筋無力症を治療できるように最大限の努力をしています。副作用の予防には消化管潰瘍や骨粗しょう症の予防薬を併用しています。また体重増加、高脂血症、糖尿病、高血圧の予防のため食生活をはじめとする日常生活にも注意が必要です。完全に効果が出るまでには数ヶ月かかるため、症状改善までは時間を要することをご理解ください。自己判断によるステロイドの増量、減量、中止は決してしないでください。

免疫抑制剤

ステロイド治療が無効な場合や副作用が出現した場合にタクロリムスやシクロスポリンを併用しております。ステロイドほど多くの副作用があるわけではありませんが、長期服用による免疫力の低下の可能性もあり安易な使用は避けるべきです。効果が期待でき、かつ副作用が起きないように注意しまがら使用しております。

免疫グロブリン静注(IVIg)と血液浄化療法

自己抗体に直接作用するかあるいは除去することで作用を発揮するため、早期の効果発現が期待できます。中等症以上の全身型重症筋無力症重症筋無力症でIVIgが使用される頻度が多くなりました。5日間連続の点滴治療になりますので入院治療が原則です。即効性はあまり期待できませんが、投与から2-3ヶ月にかけて少しずつ効果が出てきて、免疫療法全体の底上げ効果になります。

血液浄化療法はクリーゼ直前の状態、急速に進行する球麻痺、呼吸管理中の気管切開回避などより即効性を期待する場合に行います。抗AChR抗体が陽性の重症筋無力症重症筋無力症ではTR350を用いた免疫吸着療法を1日おきに3回を1クールとして施行しています。抗AChR抗体が陰性の重症筋無力症重症筋無力症の場合には血漿交換を行っています。

拡大胸腺摘除術

胸腺腫のある場合には必ず外科で摘除術を行います。胸腺腫がない場合でも全身型、一般的には16-60歳の場合には拡大胸腺摘除術の適応が考慮されます。しかし、胸腺腫のない拡大胸腺摘除術の効果については疑問があり、確実に効果があるとは言えません。現在アメリカを中心としてその効果も検証する大規模な研究が行なわれています。すべての患者さんにおいて拡大胸腺摘除術の適応を充分に検討し、そのメリット、デメリットを説明した上で最終判断を行なっております。全身型だから一律に拡大胸腺摘除術を行なうということはありません。

慶應義塾大学病院での取り組み

当外来では常時250人以上の患者さんが通院しておられ、日本で最も多くの患者さんが通院されている外来のひとつです。確かに重症筋無力症は難治性の疾患ではありますが、治療を適切に行なえば日常生活の影響も最小限で済み、健康な人と変わりない生活が送れます。薬による副作用を最小限におさえ、患者さんの生活の質を維持できることを目指し、それぞれの患者さんにとってベストな治療は何であるかを熟慮しながら日々の臨床と研究を行っております。

文責: 神経内科外部リンク
最終更新日:2016年8月26日

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