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こどものこころの問題

こどものこころのもんだい

はじめに

「まず腕白小僧を育てなければ、かしこい人間を育てることはできない」社会学者ルソーは、子どもには、こころゆくまで友達と遊んだり親に甘えたりする子どもらしい生活が必要だと唱えています。

日本では、部活・塾・お稽古事に通い、その合間にゲームやインターネットをするという忙しい毎日を送る子どもが増えています。2011年3月11日の東日本大震災は、親子が安心して生きていく基盤を大きく揺るがしました。 ゆとりのない孤独な育児環境により、虐待やDVは増加し続けています。今こそ親子を本気で守る親心が求められています。

子どものこころの問題のとらえ方

小学校4年生のみきちゃんは、「ものが見えにくくなった」と訴えて病院を受診しました。眼科で検査をすると、見える範囲は通常の半分しかありませんでした。

お父さん、お母さんは共働きで、みきちゃんは学童から戻り二人の帰りを待つ毎日でした。帰ってくるとお父さん、お母さんは夫婦喧嘩を始め、時には手があがります。みきちゃんは学校の出来事を聞いてもらえず、二人の喧嘩がおさまるのをおびえて待つのでした。

お母さんに、みきちゃんの話を聞いてほしい、喧嘩は、みきちゃんが分からないようにしてほしい事を伝えました。お母さんはその話をお父さんと分かち合い、話し合いました。二人の喧嘩はぐっと減り、お母さんはみきちゃんのお話を聞いてあげました。3回目の受診で、すっかり目が見えるようになりました。

問題や症状にはいろいろな意味や機能があります。こころの問題の診断と治療には、お子さんの資質、発達段階、生活史、家族、学校の状況などの関係性を理解することが大事です。問題は、お子さんやご家族のSOSであったり、学校生活のストレスのはけ口であったり、さらに専門家に相談するための入場券の役割を果たしています。

子どものこころの問題は特に思春期に複雑になります。不安・恐怖・抑うつなどの感情障害、強迫症状、拒食や過食などの摂食障害、抜毛・チックなどの習癖、腹痛、頭痛、不眠などの心身症状があります。行動の障害には暴力・反抗などの行為障害、家出・徘徊・万引き・窃盗・器物破壊などの社会的逸脱行動、リストカット・薬物依存・性的逸脱行動などの自己破壊行動があります。これらの背景には虐待、DVが潜んでいることがあります。小中学校の不登校は全国で12万人になり、いじめや自殺の問題も深刻化しています。

診断評価

子どものこころの問題は、1)診断分類、2)発達段階、3)家族機能などから評価します。

診断分類

  1. 健康な反応:こころの発達は不連続で、一見問題行動と誤解されやすい健康な反応があります。例えば、1歳半の癇癪、小学校高学年の娘の父親への拒否反応など。両親があわてずに見守れば、お子さんは次の安定した発達段階に進むことができます。
  2. 反応性障害:いじめ、失恋、祖父母の死など、人生の負の体験に対するこころの反応です。原因を適切に解決したり、時間が経過すればよくなります。
  3. 神経症障害:長期のストレスにより神経過敏な反応が定着し、治りにくくなったものです。
  4. 発達障害:生まれ持つ資質や、乳児期の病気や虐待などのトラウマが積み重なり、対人関係や集団適応の発達にかたよりが生じたものです。人格発達障害と広汎性発達障害に大別されます。後者は自閉症、アスペルガー、注意欠陥多動障害、学習障害などです。お子さんのもって生まれた敏感さや不器用さなどのために、赤ちゃんの時から育てにくく、お母さんは、なぜこんなに無関心なのだろう、頑固なのだろう、敏感なのだろうとわが子にしっくりしない思いを抱きます。育児のしにくさから親子はぶつかりやすくなります。お子さんは集団になじめずに孤立し、自信を失い、悲観的、被害的になりがちです。
  5. 精神病性障害:ささいな刺激によりコントロールの悪い激しい情動に襲われ、現実が見えなくなる状態を言います。人との刺激が状態を悪化させるので、対人ストレスを減らし、お子さんのペースにあった生活にします。適切な投薬も有効です。
  6. 脳器質性障害:神経病や他の脳の炎症、外傷に伴う精神症状などがあります。長期的な療育指導やリハビリテーションを含む支援が有効です。

発達段階

問題行動はお子さんの発達段階により理解します。長期化する思春期の問題行動は、しばしば幼児期の積み残しです。思春期にはどの子も大人の心身に成長発達しながら、幼児期の自分に別れを告げ、自己の同一性(アイデンティティ)の確立にむけて試行錯誤する時期です。

  1. 前思春期:(小学校高学年) 身長と頭囲のぐんと増す成長スパート期です。性ホルモンにより二次性徴が発現し、お子さんは生意気に母親に反発し、かつ幼児のように甘えます。この依存と自律の矛盾した態度は母親を戸惑わせます。お子さんは本気で自分を守ってくれる母親を確認しています。
  2. 思春期初期:(中学生頃) 女子は初潮発来、男子は声がわりに伴い、同性友達と親密になります。
  3. 思春期中期:(高校生) 二次性徴が完成し、自己嫌悪と自己愛の間でこころが揺れます。
  4. 思春期後期:(高卒後) 自己の価値観、職業、伴侶を探りながら自己同一性を確立します。

家族機能評価 (図1)

お子さんの問題は家族が関係性をふりかえり、成長するよい機会になります。健やかな家族においては、「父母連合・世代境界・性差境界」の家族機能が働いています。お父さんがお母さんをしっかり支え、父母が仲良く一枚岩で協力しあうとどんな問題も解決しやすく、家庭はお子さんが安心して育ちやすい場になります。

  1. 父母連合:父母が一枚岩となり子どもの問題にとりくむ。
  2. 世代境界:父母は親としての責任と自覚をもち子どもを父母問題に巻き込まない。
  3. 性差境界:息子は父、娘は母を性役割モデルとし、異性の親子は近親相姦的にならぬよう適度の距離を保つ。
図1 家族機能評価

図1 家族機能評価

こどものこころの問題への対応

お子さんの治療には次の基本姿勢が役立ちます。

  1. ありのままのその子を受けとめる:お子さんを理解するには、まず人として尊重し、ありのままを受けとめることから始めます。そこから信頼が芽生え、子どもは少しずつ、言葉にならぬ苦しみを打ちあけます。
  2. 子どもとの治療同盟:治療ではお子さんと話し合いのルールを決め、発言の秘密を守ります。お子さんがつらい気持を誰かに理解されたと実感できることが問題解決の鍵です。
  3. 悪循環をほぐす:多くの問題行動は悪循環に陥っています。その悪循環には父母・家族関係だけでなく、学校も関連していることが多くあります。
  4. 日常生活をみなおす:過密スケジュールを改善し、睡眠・覚醒・食事のリズムを整え、インターネットやゲームの時間を減らすなど、安心感とゆとりのある生活にします。
  5. 集団の苦手な子こそ暖かく包む:気持の調節が不器用なお子さんにとって、家庭は大事なよりどころです。ご両親が園や学校の先生たちと率直に相談し、皆で一丸となりお子さんをかわいがりましょう。わかりやすい生活の枠組みを作り、対人関係や集団行動のスキルを気長に育みましょう。
  6. 学校と連携し、家族を支える:お子さんは自信を失う瞬間、ふと見捨てられる不安を抱き、親にぶつけて試します。ご両親がおどおどしてふりまわされると、お子さんの不安と怒りはかえってエスカレートします。父母、教師、治療チームの緊密な連携により、お子さんを安心させ前向きにしていきます。

ご両親はお子さんのこころの問題により、傷つき落ち込みがちです。特にお母さんはそうですので、周囲はくれぐれもお母さんを責めないようにしましょう。お母さんが罪悪感をもつと、お子さんの状態はこじれます。そんな時はお父さんをおよびして、ご両親が一枚岩となってお子さんのつらい本音をうけとめて頂きます。ゼロから育てなおすつもりで、ご両親がお子さんを丸ごと受け止めてくださると、どの子もつらい本音を出して、ほっとします。幼い頃から甘え足りない、遊び足りない、仲間と腹の底から笑いあったりけんかしたりする体験が少ない、よその子や兄弟と比較されて落ち込んだりなどの問題が、思春期の症状の背景となることもあります。お子さんの問題をきっかけに、親子であらたに心を開いて話し合い、暖かい家族や親子関係を作り直していけばよいのです。

おわりに

こどものこころの問題は多様です。症状や問題行動には、お子さん独自の意味や機能があります。どの子も自分なりにひたむきに生きのびようとしています。ストレスの多い現代に生きるお子さんたちに、私たち大人がご両親とともに、親身な応援をしていきたいと思います。

文責: 小児科外部リンク
最終更新日:2014年8月6日

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