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気分障害

きぶんしょうがい

概要

感情は、主観的な印象で、快不快を基調とし、喜びと悲しみ、苦しさと楽しさなど相反する二極性を持つものです。気分とは、この感情の持続的な状態を指します。
気分障害は、気分が正常の範囲を超えて高揚したり、落ち込んだりすることが、一定の期間継続するものです。気分障害にはうつ病性障害(以下うつ病)と双極性障害(そうきょくせいしょうがい、躁うつ病)が含まれます。
うつ病は、1990年時点ではすべての疾患の中でも、健康な生活を障害する疾患の第4位にあたるとされました。この先2020年には、虚血性心疾患についで第2位に上昇すると予想されています。日本の年間自殺者数は1998年には3万人を超え、その後も高い数で推移しています。うつ病の生涯有病率は狭義では約5~17%、広義では約20~25%にも達し、ごくありふれた疾患と言ってよいでしょう。
また、双極性障害は、見落とされがちであることや、抗うつ薬服用によりかえって症状の悪化があることなどから最近注目されています。その生涯有病率も約2~8%と、以前に比べて多い数字が近年報告されています。

気分障害の診断は、血液検査や画像検査から、直接行うことが出来ません。患者さんご本人の臨床症状や、ご家族のお話から判断します。また、診断が確定した後の治療としては、薬物療法と心理社会療法との2つに大きく分かれます。治療の場は外来治療と入院治療とがあります。

うつ病

症状・診断

抑うつ(よくうつ)気分や興味または喜びの消失に加えて、様々な症状を呈します。例えば、食欲の減退や増進、不眠や睡眠過多、精神運動の制止や強い焦燥、疲れやすさ、集中力の低下、自殺への思い、などです。例外はありますが、これらの症状が2週間以上続いたときにはうつ病とされます。この抑うつ状態の期間を、専門用語では大うつ病(だいうつびょう)エピソードと呼びます。

頭痛、口渇、便秘・下痢、呼吸困難感、心悸亢進などの身体症状を伴うことも多く、うつ病患者さんの実に6割以上がまず内科を受診するとのデータもあります。ただしこれは、まず身体的に問題がないことを確認してから、精神神経科の診断と治療が開始されるという観点からは望ましいことです。
また、慢性疾患にはうつ病が合併しやすいことが知られています。がんの約20~38%、糖尿病の約25%、冠動脈疾患の約16~19%にはうつ病が発症します。
几帳面・完璧主義・真正直、がんばり屋で自分の中に閉じこもる方が、うつ病になりやすいと言われます。
症状が重くなると、妄想を持つことがあります。その内容は自分が病気であるというもの(心気妄想、しんきもうそう)、お金がないというもの(貧困妄想、ひんこんもうそう)、何か罪を犯してしまったというもの(罪業妄想、ざいごうもうそう)、の3つが代表的です。
しかし、近年わが国ではうつ病が多様化しており、うつ病の概念が広がり過ぎたことも指摘されています。双極性障害(後述します)やパーソナリティ障害など他疾患との鑑別も大切です。

治療

処方される薬は、ベンゾジアゼピン系薬剤を中心とする抗不安薬、抗うつ薬と抗精神病薬の3つに大きく分かれます。抗不安薬は服用して数十分で効き目が出ることが多いですが、大量を長期間続けることの問題も指摘されています。一方で抗うつ薬は、服用してから効果があるまでに数週間から数か月かかりますが、うつ病への薬物療法の中心となることが多い薬です。また、抗精神病薬は本来、統合失調症の治療薬ですが、一部の薬剤は抗うつ薬と併用をすることで症状の改善が得られる場合もあります。
抗うつ薬には、三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、SSRI(エスエスアールアイ、選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(エスエヌアールアイ、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)などの種類があります。十分な量を十分な期間服用することが大切です。

薬物療法以外には、認知行動療法、心理療法などがあります。また、一般的な注意として、十分な休息をとること、重大な決断は先に延ばすこと、周囲ははげまさないようにして見守ること、などが挙げられます。
修正型電気けいれん療法は、全身麻酔下で頭皮から電流を流し、けいれんを起こします。数種類の薬物療法が無効で、症状が重い場合に実施することがあります。有効性が確かめられており、副作用も少ない治療法です。

うつ病は再び症状が出現することの多い病気です。回復後1年に約20%の患者さんに再び症状が出現します。さらに、何度も繰り返すことよって、その割合は約40~50%に上がります。薬物療法の継続が大切で、もし中止すると半年後に再び症状が出現する危険性は2倍になります。

双極性障害

症状・診断

気分が高揚したり、いらいらします。その他にも、誇大的になる、睡眠の減少、喋り続ける、いくつもの考えが浮かぶ、注意が散漫になる、活動的になる、買いあさりや失敗することがわかっているような投資をするなどの症状が見られます。このような症状が4日以上続く軽い躁状態を軽躁病(けいそうびょう)エピソードと呼び、1週間以上続き入院が必要なほど重症な躁状態である場合に躁病(そうびょう)エピソードと言って区別します。さらに、1日のうちでも抑うつ状態と躁状態が見られることがあり、この期間のことを混合性(こんごうせい)エピソードと言います。
うつ病では大うつ病エピソードだけが出現しますが、双極性障害では加えて上記3つのエピソード(躁病、軽躁病、混合性)のうちの1つ以上が見られます。そして、典型的には抑うつ状態と躁状態とを繰り返します。
双極性障害は診断するのが難しい病気です。まず、躁状態のときには、周囲は困っていても患者さん本人は快適に感じていることが多いのです。そのため、患者さんは自ら受診することが少なく、過去に躁状態があったかどうか医師が質問してもなかなか見つからないために、家族などの患者さんをよく知る人からの情報が診断に有用となることもあります。また、双極性障害の患者さんは典型的には抑うつ状態と躁状態とを繰り返しますが、抑うつ状態の期間の方が長いのです。そのため、双極性障害の患者さんが外来で診察を受けるときには抑うつ状態で、過去の躁状態を見つけることができず、うつ病と診断されていることがあります。

治療

中心となる薬は、気分安定薬と抗精神病薬です。我が国では、リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピン、ラモトリギンが使用できます。ラモトリギン以外の薬剤は、血液中の薬物濃度が測定できますので、飲み始めしばらくは検査が数回必要です。また、その後も一定期間ごとに採血することで効果と安全性が確かめられます。ラモトリジンは内服により皮膚の湿疹が出現する場合がありますので、出現した際には医師と早めに相談する必要があります。また、他の気分安定薬との飲み合わせが問題になることあるために、内服している薬を医師に報告し、安全に内服できるように相談することが重要です。これらの薬剤は躁状態を抑える効果、抑うつ状態を改善させる効果、いったん安定した気分を維持させる効果があります。一部の抗精神病薬は、上記の気分安定薬と同様な効果が証明されており、気分安定薬との併用、抗精神病薬のみで使用されることがあります。
双極性障害の患者さんが抗うつ薬を服用すると、かえって気分が不安定になったり、躁状態になってしまうことがあります。抗うつ薬服用は慎重にしなければいけません。
先に述べたように、双極性障害の患者さんは自分では躁状態を過少に評価してしまいます。一方で、ご家族は患者さん本人の抑うつ状態を過少に考えてしまう傾向があるようです。自分を客観的にみつめるためにも、その日の気分や行動を簡単に日記にする、睡眠時間を記載するなどが有効です。

慶應義塾大学病院での取り組み

外来治療とともに、入院治療も行っています。ただし、当院当科は開放病棟であり、閉鎖病棟は持っていません。そのため、抑うつ状態で自殺の危険性が高い、躁状態で他人へ危害を加える可能性があるなど、症状の重い患者さんで閉鎖病棟がふさわしい方には、関連のある精神科病院をご紹介しています。

さらに詳しく知りたい方へ

文責: 精神・神経科外部リンク
最終更新日:2017年1月24日

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