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髄膜腫

ずいまくしゅ

概要

髄膜とは頭蓋骨の内側で脳を囲んでいる軟膜、くも膜、硬膜の総称ですが、髄膜腫は、くも膜の表面を覆うくも膜細胞から発生する腫瘍です。硬膜に付着して発生する、最も頻度の高い原発性脳腫瘍で、脳腫瘍全体の26.7%に上ります。近年、増加傾向にありますが、髄膜腫になる人が増えているというわけではなく、脳ドッグの普及や、頭をぶつけるなどでCT、MRI検査をして、無症候性のものがたまたま発見される機会が増えたためです。

ほとんどは良性腫瘍で、ゆっくり大きくなるか、あるいは大きくならない場合もあります。また、基本的には他の場所へ転移することはありません。しかし、頻度は低いですが、中には悪性のものもあります。髄膜腫は、WHOの分類では悪性度により3段階のグレードに分けられており、ほとんどの髄膜腫はグレード1に属します。中間型悪性度を示すグレード2の異型性髄膜腫は約4~7%、グレード3の悪性髄膜腫は約1~3%の頻度です。

40~50歳代以降の中高年に多く、性別では女性の方が男性よりも多い傾向にあります。発生部位は、傍矢状洞(ぼうしじょうどう)部、円蓋(えんがい)部、大脳鎌(だいのうかま)が多く、頭蓋内にできる髄膜腫の半数以上を占めます。頭蓋底部では、嗅窩(きゅうか)部、鞍結節(あんけつせつ)部、蝶形骨縁(ちょうけいこつえん)、斜台(しゃだい)部、テント、中頭蓋窩(ちゅうとうがいか)、小脳橋角(しょうのうきょうかく)部、後頭蓋窩大孔(こうとうがいかだいこう)付近などにみられます。硬膜に接していませんが、脳室内、シルビウス裂内にも発生することがあります。なお、頭蓋底髄膜腫に関しては、別項に詳しくありますので、こちらをご覧ください。

症状

髄膜腫はゆっくりと成長するため、臨床症状も徐々に出現します。また、小さいものでは無症状のものも少なくありません。大きくなると、頭痛、けいれん発作、局所神経症状を起こすようになります。局所神経症状というのは、髄膜腫が脳を圧迫することで押された部分の脳の機能が低下して起こす症状のことで、腫瘍ができた場所によって症状の出方が異なります。例えば傍矢状洞部髄膜腫では、足に強い麻痺が出ますし、大脳鎌髄膜腫が脳の両側にまたがっていれば、両足の麻痺が出ることもあります。頭蓋底髄膜腫は、腫瘍付近の脳神経の圧迫症状が出現することが多くみられます。

診断

診断は主に画像検査で行われます。
頭蓋単純撮影で、腫瘍が付着している部位の骨が厚くなる像や、石灰化がみられることがあります。
CTでは脳組織とほぼおなじ色合いで写るものが多く、ヨード造影剤という薬を注射して撮影することで、均一に強く増強される像がみられます。腫瘍内の石灰化、腫瘍が付着している頭蓋骨の変化などを見ることができます。
MRIでは、T1強調画像で、脳と同じくらいの色合いで写りますが、やはりガドリニウムという造影剤を使うと、明瞭に写しだされます(図1)。腫瘍付着部の辺縁の硬膜に尾が付いたように見えるdural tail signを認めるのも特徴の一つです。T2強調像やFLAIR画像では、腫瘍周囲脳の浮腫像を認めることがあり、脳浮腫が強いほど腫瘍と脳の癒着が強いことが予想されます(図2)。一般的に、腫瘍と脳組織の境界は明瞭です。
脳血管撮影というカテーテルの検査をすると、髄膜腫に栄養を送っている腫瘍血管がはっきりと分かります。外頚動脈系からの血流の供給が、腫瘍が硬膜に付着している部分から入り、腫瘍の影が写しだされるsunburst appearanceが特徴です。腫瘍によっては、内頚動脈系から栄養されることもあります。脳血管撮影は、手術法を検討する上で重要な情報をもたらしますが、診断自体はMRIでほぼ確定できます。

図1

図1

図2

図2

治療

小さくて無症状のものは、その後大きくなるかどうか画像で経過をみます。特に高齢者では、腫瘍の成長が非常に遅く、大きくならない場合もあるからです。一方で、若年者の腫瘍の成長は早いことが多く、また腫瘍が大きく、腫瘍周辺の脳が浮腫を起こしている場合、放っておくと症状が悪化しそうな場合、画像上悪性が疑われる症例では、症状がなくても治療する必要があります。
治療の基本は摘出手術です。再発率は腫瘍摘出程度と相関するので、髄膜腫が疑われれば、付着部硬膜も含めた可能な限りの腫瘍摘出が目指されます。しかし、手術の難易度は腫瘍の発生部位や大きさによって異なり、傍矢状洞髄膜腫や頭蓋底髄膜腫などのように重要な血管や神経を巻き込んでいれば、術後合併症の可能性を考えて、腫瘍をあえて一部残すこともあります。一般に髄膜腫は放射線治療が効きにくい腫瘍ですが、腫瘍を完全に摘出できなかった場合には、再発予防のため残存腫瘍に対して定位放射線治療(リニアック、ガンマナイフ、サイバーナイフ、重粒子線など)が行われることもあります。腫瘍摘出が難しい場所にできたものを始めから放射線で治療することもありますが、手術ほど確実な方法ではありません。また、化学療法はほとんど効かないといわれています。
再発率は腫瘍の悪性度によって変わってきます。グレード1の良性髄膜腫では、手術で完全に摘出することができれば完全治癒を期待できます。対して、グレード2、グレード3の悪性傾向を示すものでは、30~80%が再発します。腫瘍の悪性度は、手術で摘出した標本を顕微鏡で検査して確定します。Ki-67というマーカーの陽性率が高いほど、腫瘍細胞が活発に分裂しているということを示し、値が3%以上だと再発の危険が高くなります。この場合も、手術の後に放射線治療を行います。

文責: 脳神経外科外部リンク
最終更新日:2018年3月23日

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