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肺がん

はいがん

概要

日本人のがんによる死亡者数の中で、肺がんはがん死因の第1位で、男女別では男性で第1位、女性では第2位となっています。毎年7万人以上が肺がんで亡くなっており、この数字はすべてのがん死亡者数の1/5に相当します。男女比はほぼ3:1です。高齢者の増加とともに年々増加傾向にあり、2015年には全国で約13万5千人の人が肺がんになると予想されており、その中の3/4の患者さんが70歳以上の高齢者になるといわれています。肺がんの最大の原因は喫煙ですが、受動喫煙の影響も大きいことが知られており、ご主人がたばこを吸う人の家庭では、そうでない家庭に比べて、たばこを吸わない奥さんが肺がんになる確率は最大で1.91倍といわれています。喫煙以外では大気汚染やアスベストなどへの暴露も重要な要因と考えられています。また基礎疾患(もともと持っている病気)として、間質性肺炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD) などがあると、肺がんにかかりやすいことが知られています。

症状

肺がんは他のがんに比べて、比較的他の臓器に転移しやすく、症状としては大きく分けて、肺がんが周りに拡がっていくことで出てくる症状と、転移により冒された臓器(多くは脳、骨、肝臓・副腎など)の障害による症状とに分けられます。前者としては、咳や血の混じった痰、胸の痛み、息苦しさ、発熱などが代表的な症状ですが、がんの生じる場所によっては、しゃがれ声、しゃっくり、顔のむくみや動悸などを認めることもあります。後者としては骨への転移による痛みや、脳への転移による頭痛、吐き気、けいれんや意識障害などが認められることがあります。ただし、症状は比較的進行している患者さんに見られることが多く、初期にはむしろ全く無症状で、検診や他の病気で受診した際に、胸部X線写真などにより偶然に発見されることも少なくありません。

診断

肺がんの診断では、各種画像検査と組織(病理)診断を得るための検査を組み合わせて、最終的な組織型と病気の進行具合(病期)を決定し、それにしたがって治療方針を決定します。肺がんの組織型としては、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がんの4つが主ですが、小細胞肺がんは進展速度が速く、初期から他臓器へ転移しやすいなどの特徴があり、治療法も異なるため、それ以外のがんをひっくるめて非小細胞肺がんとして区別します。補助的な診断に、CEA、シフラ、ProGRP、NSEなどの腫瘍マーカーがあり、治療効果の判定、再発の予知に有効なことがあります。

  1. 画像検査(病期診断):画像検査により肺がんの部位、大きさ、拡がり(周囲への進展具合や他臓器への転移)およびリンパ節転移の有無を調べ、病期分類(表1)を行います。
    1. 胸部X線:最も基本的な検査です。
    2. 胸部CT(造影):X線ではわからないがんの正確な部位、大きさ、周囲臓器への拡がりやリンパ節への転移の有無などを調べます。
    3. 腹部CT(造影):肝臓や副腎などへの転移の有無を調べます。
    4. 頭部MRI(造影):脳への転移の有無を調べます。
    5. 骨シンチグラフィー:骨への転移の有無を調べます。
    6. FDG-PET:直径1cm以上であれば正診率は90%前後とされており、縦隔リンパ節の転移診断や遠隔転移のスクリーニングとして有用です。
  2. 組織診断:がんそのものから組織を採取して組織型を調べますが、その主な検査方法には次のものがあります。
    1. 気管支鏡:肺がんの診断には欠かせない検査で、直径4-6mm程度の円筒状の柔らかいファイバーを、口または鼻から挿入し、気管から気管支へと進めていき、生検鉗子等を用いて目的の場所から組織を採取します。超音波内視鏡、ナビゲーションシステム、ガイドシース法、自家蛍光電子内視鏡など、最新のツールを用いて診断向上に努めています。
    2. 経皮的肺生検(CTあるいはエコーガイド下):気管支鏡での組織採取が困難な場合は、CTあるいはエコー検査でがんを直接見ながら、生検用の針を体の外から刺して組織を採取することもあります。
    3. 最近、一部の抗癌剤では、上皮増殖因子受容体(EGFR)の遺伝子変異(異常)の有無や組織型により、その効果と副作用に差があることがわかってきたので、抗癌剤による化学療法を行う前に、遺伝子検査と組織型の診断をきちんと行うことが重要となっています。

表1. 肺がんの病期分類

表1

治療

肺がんの治療には、大きく分けて手術療法、放射線療法と化学療法(抗癌剤による治療)の3つの選択肢があります。実際には組織型と病期をもとに、これらを単独で、あるいは組み合わせて治療を行います(表2)。

  1. 手術療法
    早期の非小細胞肺がんに対する治療の中心は手術であり、現時点においては治癒をもたらす可能性が最も高い治療法です。しかし、手術が行われるのは肺がん患者全体のおよそ30%程度です。
    1. 適応:手術が行われるためには「癌を取りきることが可能な病期(表1)」であることと、「手術に耐えられ、かつ術後の生活の質が保たれると予想される全身状態」であることが必要です。80歳以上の高齢で手術を受ける患者さんもいます。
    2. 術式:標準的な手術は病巣を含む肺葉切除とそれに伴う領域リンパ節(肺門及び縦隔リンパ節)の郭清(切除)です。
    3. 成績:非小細胞肺がんに対して手術を受けた患者さんの5年生存率はIA期では80%以上ですが、II期やIII期では未だによくありません。最近、術後の予防的な化学療法が生存率を改善することが確認され、II、III期の患者さんでは術後に化学療法を追加するのが標準となっています(表2)。またI期の場合も経口抗癌剤であるUFTの内服により、生存率が改善したと報告されています。

表2. 肺がんの標準的治療
* 限局型:腫瘍が放射線照射が可能な範囲に限局しているもの、進展型:限局型の範囲を超えて進展したもの

表2
  1. 放射線療法
    1. 通常の放射線治療
      直線加速器(リニアック)と呼ばれる大型の機械で、体の外から体内の病巣部に放射線をあてます。通常は、1日1回、土日と祝日を除いた毎日(週5回)の治療を約6週間かけて行います。治療が必要な範囲の形に合わせた照射範囲に対して正確に放射線をあてるために、専用のコンピュータを用いて、最適な計画を選択します。化学療法と組み合わせることもあります。
    2. 定位的放射線治療
      患者さんの体を専用の枠でしっかりと固定して位置のずれがないようにして、病巣に対し多方向から放射線をピンポイントに集中させる方法です(図1)。病巣が小さく、他への転移がない場合、適応となることがあります。通常の放射線治療に比較し周囲の正常組織への放射線量を極力減少させることが可能です。約1週間程度通院、もしくは入院していただき治療を行います。手術に比べると症例数は少ないですが、90%前後の腫瘍制御が期待されます。
図1

図1. 定位的放射線治療のコンピュータイメージ

  1. 化学療法
    1. 適応:基本的には手術や放射線療法が適応とならない、進行した肺がん患者さんが対象となりますが、上述のように術後に予防的に行う場合や放射線との併用で行う場合も増えています。いずれにしても化学療法に用いる抗癌剤は、多くの副作用を伴うため、適応となるのは全身状態が比較的良好な患者さんです。75歳以上の高齢者であっても全身状態が良ければ適応はありますが、抗癌剤の選択を含め、注意が必要です。
    2. 抗癌剤の選択:これまでに化学療法を受けたことがない肺がん患者さんにおける標準的な化学療法(一次治療)は、プラチナ製剤と1990年以降に開発された新規の抗癌剤との2剤を用いた併用療法とされています。多くの患者さんでは、一次治療が無効な場合や、有効であっても後に再発した場合には、二次治療以降の治療も行われます。薬剤としては抗癌剤の他に、新しい分子標的治療薬(がんなどに特異的に発現している物質を標的とした薬剤)であるイレッサ®、タルセバ®(いずれもEGFR遺伝子変異を伴う症例で有効)、ザーコリ®(ALK染色体転座を伴う症例で有効)やアバスチン®(血管内皮増殖因子に対する抗体薬で、腫瘍を兵糧攻めにして効果を発揮)などもがんの特徴に応じて使用されます。
    3. 成績:手術および放射線治療の適応がないと判断された進行した非小細胞肺がん(IIIB、IV期)で、化学療法を受けることができた患者さんの当院での1年および3年生存率は、それぞれ71%、34%(2009年度集計)でしたが、新しい治療薬の開発により最近ではさらに改善してきています。

生活上の注意

肺がんの最大の要因は喫煙であり、禁煙による予防が何より重要です。当院では禁煙外来も開設していますので、自分で禁煙できない方は受診してください。また間質性肺炎など呼吸器の病気を持っている方も肺がんになりやすいので、早期発見のため、定期的な外来受診を続けてください。

慶應義塾大学病院での取り組み

癌によって気管や気管支が狭くなってしまった患者さんには手術治療や気管支鏡を使った治療(ステント療法やレーザー治療など)を行っています。
比較的早期の症例には胸腔(内視)鏡を応用した侵襲の少ない手術(video-assisted thoracic surgery:VATS)を積極的に行っています。
抗癌剤の使用に関しては、より安全で効果の高い使用方法を見つけるために、他の関連施設と協力して、いくつかの臨床試験を行っています。また分子標的治療薬の効果を予測するための事前の遺伝子検査も実施しています。

さらに詳しく知りたい方へ

日本肺癌学会/各種ガイドライン/肺癌診療ガイドライン(2013年版)/非小細胞肺癌
肺尖部胸壁浸潤癌 III期非小細胞肺癌(切除不能) 外部リンク
IV期非小細胞肺癌の1次治療外部リンク
IV期非小細胞肺癌の2次治療以降外部リンク

日本肺癌学会/各種ガイドライン/肺癌診療ガイドライン(2013年版)/小細胞肺癌
小細胞肺癌(LD-SCLC,PCI)外部リンク
進展型小細胞肺癌1次治療外部リンク
再発小細胞肺癌外部リンク

文責:呼吸器外科外部リンク呼吸器内科外部リンク放射線治療科外部リンク
最終更新日:2014年6月25日

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