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腹腔鏡下手術(旧:体腔鏡下手術)

ふくくうきょうかしゅじゅつ(きゅう:たいくうきょうかしゅじゅつ)

概要

図

当院泌尿器科の特色として腹腔鏡下手術が非常に盛んであることが挙げられます。腹腔鏡下手術は別名腹腔鏡手術、鏡視下手術ともよばれています。従来の開腹手術のように大きな切開創(傷)をつけて行う手術とは異なり、1-2cm程度の小切開を3-5個開け、体腔内に炭酸ガスを注入し、内視鏡下に細い手術器械を用いて、臓器の摘出や再建などを行う手術です。

後腹膜鏡手術

前立腺、腎臓、副腎など泌尿器科で手術を行う臓器は、腹膜の後方 (後腹膜腔)にあります。腹腔(腹膜の内側)のように元々空間があるのではなく、 これらの臓器は脂肪や結合組織の中に埋まっています。皮膚にカメラや操作用の器具を挿入するための小切開を加え、指で後腹膜腔の脂肪や結合組織を剥離して、さらに特殊な風船を使って体腔内にスペースを作り、内視鏡を入れて行う手術を後腹膜鏡手術とよんでいます。泌尿器科で手術する臓器は、上述したように後腹膜腔にある為、腹腔鏡で行う場合と、後腹膜鏡で行う場合があり、それぞれの場合に応じて方法を選択します。

ロボット支援手術

これまでの腹腔鏡下手術は、術者自身が手術器械を操作して組織の剥離や切断などを行っていましたが、近年、手術支援ロボットが手術器械を動かす腹腔鏡下手術が急速に普及してきています。これは、ロボットが自分の意思を持って手術を行うわけではなく、術者がサージョンコンソールと呼ばれる操作システムに座り、患者さんの体内に挿入されたロボット鉗子を操作して手術を行います。

図

図1.左:サージョンコンソール   右:ペイシェントカート

腹腔鏡下手術のメリット

現在、副腎、腎臓、尿管の癌などに対する腹腔鏡下手術が保険診療で認められています。前立腺癌に対する腹腔鏡下手術は認定施設のみで保険診療が認められており、当院も認定を受けています。腹腔鏡下手術のメリットとして、小さな切開創、少ない痛み、少ない出血、早い回復が挙げられます。他に鏡視下に手術を行うことで、細かい部位を拡大してTVモニターに映して手術を行うことから、通常見えない微小な操作が可能であり、手術が容易になります。当科においても下記のように多彩な種類の腹腔鏡下手術が行われています。

ロボット支援手術のメリット

2016年5月現在で保険適用となっているのは前立腺がんに対する前立腺全摘除、腎がんに対する腎部分切除術(2016年4月適用)といずれも泌尿器科領域での術式です。ロボット支援手術のメリットとしては、腹腔鏡下手術そのもののメリットに加え、ロボットによる手術の独自のメリットがありあます。まず、鉗子先端を人間の手首と同様に自在に動かすことができ、かつその可動域は人間以上です。さらには手ブレ補正機能がついているため、従来の腹腔鏡下手術よりも精度の高い動きが可能です。また、内視鏡も3Dハイヴィジョンであることに加え、従来の腹腔鏡手術ではスコピストという内視鏡を操作する助手が術者の指示により視野を動かしていましたが、内視鏡の操作もロボットを介して術者自身で行えるようになりました。操作精度の向上と、高精細で術者の思い通りの視野により、手術のクオリティ向上、合併症発生率の軽減が期待されています 。

治療

腹腔鏡下前立腺全摘術(ふくくうきょうかぜんりつせんぜんてきじゅつ)

当科で行われている代表的な腹腔鏡手術です。内視鏡を用いて前立腺、精嚢、精管を一塊として切除します。その際前立腺の内側を通る尿道は切断されてしまうので、内視鏡下に膀胱と尿道の切断端を縫い合わせます。

へその下、下腹部に計5箇所の1cm前後の小切開をあけ、カメラ・器具を挿入する筒(ポートといいます)を取り付けて手術を行います。臍部の穴だけは前立腺を取り出す関係上、2cm程度まで切り広げることがあります。(創の大きさは前立腺の大きさによります。)

当手術のメリットとして、1)切開創が小さい事、2)出血量が少ない事、3)尿道を拡大して見ることができるために丁寧に尿道を縫うことができ、結果として尿道カテーテル留置期間が短い事、等が挙げられます。手術翌日から食事摂取可能、標準的には3~4日で尿道カテーテルが抜去され(開腹手術であれば1週間から10日間程度の留置が必要)、順調であれば術後5~6日で退院となります。

当手術特有の合併症として、尿失禁、男性機能不全が挙げられます。尿失禁は術直後にはかなりの高確率で生じますが、術後1年経過して尿取りパットを1日2枚以上使用する必要が出てしまう方の割合は3~5%です。また、前立腺の背側を左右に勃起に関わる神経血管束が走行している関係上、これを切除した場合、合併症として勃起不全が生じます。この神経は温存することが可能ですが、癌の存在する部位によって温存可能か否か決まります。両側温存した場合の男性機能が維持される可能性は約4~8割、片側温存した場合の可能性は約3~6割です。男性機能の維持を希望される場合には主治医とご相談ください。

腹腔鏡下の尿路再建には高度な技術が必要です。当院は国内では最多の症例を経験しております。

ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術(ろぼっとしえんふくくうきょうかぜんりつせんぜんてきじゅつ)

基本的な手術の流れは通常の腹腔鏡下前立腺全摘術と同じです。ポートの位置ですが、へその上、側腹部、肋骨の下に計6箇所の1cm前後の小切開をあけてポートを挿入して手術を行います。通常の腹腔鏡下手術に比べて全体的に頭側に傷の位置が移動します。
当院では2016年1月26日より、最新機種であるda vinci Xi○Rを導入してロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術を開始しております。通常の腹腔鏡下前立腺全摘術のエキスパートである術者が執刀しており、良好な手術成績をおさめております。詳しくは、KOMPASあたらしい医療「最新ロボット(ダヴィンチXi)を用いた腹腔鏡下前立腺全摘術」をご参照ください。

腹腔鏡下腎摘除術・腎尿管全摘除術(ふくくうきょうかじんてきじょじゅつ・じんにょうかんぜんてきじょじゅつ)

腎臓の腫瘍に対して、内視鏡を用いて腎臓そのものを取り出す手術を腹腔鏡下腎摘除術、腫瘍を含む腎臓の一部を取り出す手術を腹腔鏡下腎部分切除術、腎臓と尿管、及び膀胱の一部を一塊として取り出す手術を腹腔鏡補助下(ふくくうきょうほじょか)腎尿管全摘除術といいます。これらのどの術式を実施するかは、腫瘍の種類、位置、大きさによって異なります。

腹腔鏡下腎摘除術

側腹部に3~4個の小切開を開け、内視鏡下に腎臓をとりだします。とりだすものに見合った大きさまで小切開創の一つを切り広げることで(腎臓の大きさにもよりますが通常7cm程度)腎臓を体腔外に取り出します。腹腔鏡で手術を行うことのメリットは、1)傷が小さい事、2)出血量が少ない事、3)術後の回復が早い事です。術後は経過にもよりますが標準的には翌日から食事摂取可能、5~7日で退院となります。
腎機能を温存して手術を行うために、腎臓の腫瘍に対して部分切除術が選択されることがあります。施行は場所にもよりますが、腫瘍の大きさが4cm以下で比較的切除しやすい場所にあることが条件となります(逆に4cmより大きい腫瘍は腎摘除術の対象となります)。腎臓は非常に血管に富んだ組織であり、部分的に切除することは多くの出血を伴います。このため一時的に腎臓の血流を遮断し、その間に腎臓を部分的に切除、その後に血流を再開させます。血流を遮断できる時間は限られているため、内視鏡下でこの手術を行うことは非常に高度な技術が必要で、なおかつ腫瘍の場所・大きさなどの条件が揃わなければなりません。

腹腔鏡下腎尿管全摘除術

主に腎盂・尿管(腎臓から膀胱につながるまでの部位)に発生した腫瘍に対して行われる術式です。腹腔鏡で腎臓の動静脈を切断し、腎臓をまわりの組織から剥離した後、腎臓から膀胱までつながる管である尿管、及び膀胱の一部ごと下腹部にあけた傷から引っ張り出して摘出する術式です。腎盂腫瘍・尿管腫瘍は同じ側の尿管を残すと再発する可能性が高いため、腎臓から膀胱につながる尿管、膀胱の一部までを一塊にしてとるこの術式を施行します。腹腔鏡で腎臓周囲を処理することができるため、上腹部の傷は腹腔鏡の為の小切開3箇所となります。下腹部にも腎臓を体外に出すのに必要となる切開(腎臓の大きさにもよりますが6cm程度)を作ります。腹腔鏡の補助がなければ上腹部から下腹部にわたってかなり大きな傷が必要となるため、患者さんにとってはより小さな負担で手術ができるようになりました。

腹腔鏡下副腎摘除術(ふくくうきょうかふくじんてきじょじゅつ)

主に副腎の腫瘍に対して行われる手術です。副腎とは様々なホルモンを産生する臓器で、腎臓の頭側に存在します。副腎に腫瘍ができてしまった場合、従来であれば大きな切開をあけて手術を行う必要がありましたが、現在では腹腔鏡を用いることで、側腹部に3-4個の小切開をあけるだけで手術を行うことができます。メリットとしては上述の術式と同じで、1)傷が小さい事、2)出血量が少ない事、3)術後の回復が早い事が挙げられます。標準的には翌日から食事を開始し、順調であれば術後3~5日程度で帰宅することができます。ただし、副腎腫瘍の性質により術後ホルモン補充療法が必要で、通常より入院期間を必要とする場合があります。

単孔式腹腔鏡下手術(たんこうしきふくくうきょうかしゅじゅつ)

従来の腹腔鏡手術を更に発展させた単孔式腹腔鏡手術を、当院では副腎疾患、腎臓疾患、前立腺疾患を対象に2009年から導入しています。単孔式腹腔鏡手術は文字通り、従来3-5ヶ所の体表面の切開創から腹腔鏡手術に必要なカメラや鉗子などの手術器具を体腔内に入れ手術をしていたものに対し、"単孔"すなわち一つの傷から全ての道具を入れて手術を行う手術方法です。本術式は従来の腹腔鏡手術に比べて、切開創が少なくなるため、より傷が目立たず、更に手術後の疼痛が少ないという利点があります。また、切開創を臍に置くことで、副腎などの小さな臓器を対象とした手術の場合は、図2でお示しするように手術後、体の表面に全く傷が残らずに手術を行うことも可能となっています。

図2.左:単孔式手術(臍からのアプローチ) 右:副腎摘出術後の臍の様子(傷がない。)

図2.左:単孔式手術(臍からのアプローチ) 右:副腎摘出術後の臍の様子(傷がない。)

慶應義塾大学病院での取り組み

腹腔鏡下手術は日本泌尿器科学会の認定医により施行される必要があります。当院泌尿器科には4名の腹腔鏡下手術認定医が在籍しています。腹腔鏡下前立腺全摘術の症例数は日本最多を誇ります。

2015年度の手術実績は以下の通りです。

腹腔鏡下前立腺全摘術

44例

腹腔鏡下腎摘除術

25例

腹腔鏡下腎尿管全摘除術

11例

腹腔鏡下副腎摘除術

24例

ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(2016/1/26~5/30)

19例

文責: 泌尿器科外部リンク
最終更新日:2017年3月17日

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