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脳卒中のリハビリテーション

のうそっちゅうのりはびりてーしょん

概要

脳卒中は、脳の血管に突然起こる障害の総称で、医学的には「脳血管障害」と呼ばれます。一般病名としては「脳梗塞」、「脳出血」、「くも膜下出血」などがこれに含まれます。我が国における脳血管障害は、死因としては以前は第1位でしたが、現在はがん、心疾患、肺炎に次いで第4位となっています。死因が第4位へと低下した背景には、脳卒中の発症に結びつく危険因子に対する啓発、救急医療を中心とした早期治療の充実、新たな治療法の開発など様々な要因が挙げられます。これらの充実によって、脳血管障害の死因としての順位低下は期待できますが、その一方で急速な高齢化社会の到来により、いわゆる脳卒中適齢期である高齢者の人口が増え、また、食生活の欧米化に伴う生活習慣病の患者さんも増加しています。高齢者や高血圧症、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病の患者さんは脳卒中になりやすく、死亡に至るケースは減少するとしても、脳卒中自体は今後も増えることが懸念されます。健康管理によって脳卒中の発生を予防し、また早期発見によって救急医療による死亡率を下げると同時に、リハビリテーション(以下、リハビリ)によってその人らしい生活が送れるように取り組むことが必要であるといえます。

症状

【障害の特徴】

どのような障害が現れるかは、脳血管の損傷を受けた部位によって異なります。
運動に関わる脳の部位に障害が起こると、体が思うように動かせない、麻痺する、力が入らないなどの症状がみられます。通常は脳の障害が起きた部位の反対側に運動機能障害がみられる(例:右脳に障害が起きた時には左側の運動機能に影響が出る)のが特徴で「半身麻痺」と呼ばれます。また半身麻痺で運動障害が起こるのと同様に、半身の感覚が麻痺したり、しびれたり、触覚、痛覚、温度覚が鈍ったりという感覚障害が起こります。そのほかには、意識自体がぼんやりとしてしまう意識障害、食べ物の飲み込みが難しくなる嚥下障害や言葉が話しづらくなる構音障害、認知症・失行・失認・注意障害などの高次脳機能障害、便秘・失禁などの自律神経障害、抑うつ・不安・感情失禁などの精神症状、と極めて多種多様です(図1)。

加えて、治療で安静を求められたり、麻痺などの運動機能障害によって自由に体を動かせなかった結果、長期間の寝たきりの状態を強いられると、関節が硬くなる関節拘縮(かんせつこうしゅく)や筋肉がやせ衰える筋萎縮、筋力低下などの体を使わないことによる運動障害や骨粗鬆症、床ずれ、認知症の進行などを来します。これらは廃用症候群(はいようしょうこうぐん)と呼ばれ、これが障害に加わることにより症状はさらに複雑になります。

障害はこれだけにとどまりません。世界保健機関(WHO)が提唱した考え方により3つのレベルに分けて考えると、先に述べたような障害は、疾患や病気そのものによって起こる障害で機能障害と呼ばれます。これらの機能障害のために生じる、たとえば手足の麻痺や感覚障害によって生じる起き上がり困難や歩行困難、言語障害のために生じる書字やコミュニケーションの障害などを能力障害と呼びます。さらに能力低下の結果、職業を失ったり、公共交通機関を利用できなくなったり、趣味活動が困難になるなどの社会レベルの障害を社会的不利と呼んでいます。

図1. 脳卒中の主な障害

図1. 脳卒中の主な障害

治療

【リハビリの役割】

リハビリ医学では、このような様々な障害にアプローチし、患者さんのより良い生活を一緒に目指します。リハビリテーション(rehabilitation)とは、直訳すれば「再適応」という意味です。すなわち「身体的のみならず、精神的、社会的など総合的な観点から病気や障害を受けた患者さんが、正常な生活を営むための能力を獲得するために行う治療および訓練」というのがリハビリの概念です。そのために、我々、リハビリ科の医師は、筋電図・神経伝導検査、歩行分析などの物理医学的診断法を用いながら、適切な障害の診断、機能回復の予測を行います。さらに、薬の処方や、運動療法、物理療法、作業療法、言語療法、義肢・装具の作製に携わり、必要に応じて神経ブロック療法などを行います。充分な診断・評価のもとに、患者さんに効率の良いリハビリ・プログラムを提供することができます。
このようにして、個々の患者さんの身体機能を最大限に伸ばし、日常生活の自立度(自分で行えること)を向上させ、脳血管障害の患者さんがより質の高い生活を営むことができるようにお手伝いしています。

【リハビリの流れ】

一般に脳卒中リハビリは、急性期、回復期、維持期に分けられます。 リハビリのチーム医療は、リハビリ科医の機能評価、目標設定、疾病管理、リスク管理、リハビリ治療計画、リハビリ処方に基づき、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、リハビリ病棟看護師、医療ソーシャルワーカー、義肢装具士などがそれぞれの専門性を発揮し、できるだけ速やかに患者さんの最大の能力を引き出すべく効率的に行われます(図2)。

図2. リハビリ医療のチーム

図2. リハビリ医療のチーム

急性期(発症直後から数週間くらい)

発症直後の治療と並行して、体の機能低下を最小限に抑えるリハビリが行われた結果、上半身を起こして座っていられる程度に回復するまでの期間を急性期といいます。この期間の日数は症状の重さによって異なります。ごく軽度では数日程度のこともありますが、1~2週間から数週間程度のことが多く、個人差があります。

脳血管障害が重症の場合、発症直後に起きた意識障害が数時間~数日間続くことがあります。近年では発症直後に医療機関を受診したときから、治療とともにリハビリが始まるという考え方が主流です。リハビリ開始が早ければ早いほど回復状況が良いことが知られています。容態が安定していれば最も早い場合で発症当日から開始されます。意識がほとんどなく自分から動けない場合でも、筋肉や関節の機能低下を防ぐため、ベッド上で関節を動かす運動など、リハビリの第一歩が始まります。

回復期(数週間から数ヶ月くらい)

入院中の医療施設または専門のリハビリ施設などで本格的集中的なリハビリが行われた結果、日常生活に必要な動作や機能が回復するまでの期間を回復期といいます。日数は症状の重さによって異なりますが、数週間の人もいれば数ヶ月以上かかる人もいます。

維持期(数ヶ月から6ヶ月め以降)

自宅などに戻って、回復期に取り戻した機能の維持を図り、日常生活の自立と社会復帰を目指す時期を維持期といいます。退院後も日常生活動作やそれを応用した動作などの訓練を自然に取り入れることが機能の維持につながります。

【リハビリテーションの目標と内容】

何を目標にどんなリハビリテーションを行うかは、患者さんの状態ごとに異なります。そこで医師らは、急性期から身体障害の回復具合や日常生活動作の様子をチェックして個々の患者さんの症状に合わせたリハビリメニューを処方していきます。脳卒中の急性期・回復期・維持期を通じて掲げられるリハビリテーションの目的は次の3点を柱とします。1)脳の機能を回復する、2)残された機能を強化する、3)環境を整える。たとえば、脳卒中で右手が麻痺した場合、まずは1)のように最大限の機能回復をめざします。そしてたとえ発症前と同じ状態に戻らなかった場合でも2)のように左手などの使える機能を強化して、患者さんの生活の質の向上を図ります。また右手に力が入らなくても使える品物をそろえたり、にぎりやすい蛇口やドアノブに替えたりします。これが3)の環境を整える、にあたります。症状が重く、車椅子が必要になった場合の住宅改修なども含まれます。つまり、リハビリテーションとは単なる動作練習や筋力トレーニングだけではなく、患者さんの病後の生活全般をより良いものにすることを目的としています。

【回復の見通し】

残念ながら、現在の医療技術では病気の重さによって脳血管障害による機能障害を完全に回復させることは困難ですが、残された機能の強化や環境設定により、多くの患者さんは日常生活が自立して行えるようになり、社会参加を果たすこともできるのです。ただし発症初期の日常生活動作(ADL)自立度が低い場合、重度の運動麻痺が後遺症として残っている場合、非常に高齢である場合、重度の半側空間無視(高次脳機能障害のリハビリテーションへ)がある場合、バランス障害が強い場合、併存疾患(脳卒中とともに治療を受けている病気)が多い場合は身体障害の回復が不良で家庭復帰率が低いという研究報告があります。

慶應義塾大学病院での取り組み

  1. 慢性期の手の麻痺に対する集中訓練
    脳卒中の後遺症として手の麻痺は日常生活の支障になることも多い大きな問題です。脳卒中の方の多くは麻痺した手をうまく使えない、手を挙げよう、伸ばそうとすると逆に曲がってしまうといった場面に出くわします。リハビリテーション科では、手指が思うように伸ばせない、物をうまくつかめない、などの手の麻痺に対して、電気刺激や運動イメージなどを用いた先進的なリハビリテーション治療を行っています。
  2. ビデオ嚥下造影検査
    検査の詳細については、ビデオ嚥下造影検査をご覧ください。
  3. 痙縮に対する神経ブロック療法/ボツリヌス療法:
    詳細については、神経ブロック療法をご覧ください。

さらに詳しく知りたい方へ

文責: リハビリテーション科外部リンク
最終更新日:2018年12月5日

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