音声ブラウザ専用。こちらよりメニューへ移動可能です。クリックしてください。

音声ブラウザ専用。こちらよりメインコンテンツへ移動可能です。クリックしてください。

KOMPAS 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト
お探しの病名、検査法、手技などを入れて右のボタンを押してください。
慶應義塾
HOME
病気を知る
慶應発サイエンス
あたらしい医療
KOMPASについて

ホーム > 病気を知る > 心臓と血管の病気 > 心筋症 > 拡張型心筋症

拡張型心筋症

かくちょうがたしんきんしょう

概要

拡張型心筋症は進行性に心筋収縮能が低下し、左心室の拡大を起こして、心不全症状をきたす心筋疾患のひとつです。診断は特定心筋症(虚血性、弁膜症性、高血圧性、サルコイドーシスなど全身性疾患に伴うものなど)を除外することによって確定します。

概要

かつては原因不明とされていましたが、近年では1. 家族性(遺伝の影響による)、2.心筋炎、3.自己免疫(免疫系が間違って自分を攻撃してしまう)による原因が考えられています。

家族性は、心筋細胞を構成する蛋白質の遺伝子変異により発病し、全体の約2割程度を占めるとされています。心筋炎では主にウイルス感染を契機に、免疫異常を引き起こして心筋細胞の障害にいたります。急性心筋炎が治る過程で異常が起こるタイプ、あるいは自覚症状のない間に慢性的に心筋炎を起こす慢性心筋炎のタイプがあります。また、自己免疫によって心筋の蛋白質に対して様々な自己抗体があらわれ、心筋障害を引き起こすことが報告されており、拡張型心筋症の患者さんの8割以上にこれらの自己抗体を認めています。

病気の原因が何であっても、心臓の収縮能の低下に対する反応として、交感神経や血圧調節をつかさどるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(脚注1)をはじめとする神経体液性因子(脚注2)が活性化され、心拍出量を維持しようとする代償機能が働きます。しかし、これらの反応が過剰かつ慢性的に持続すると、長期的にはかえって心機能を悪化させるため、この悪循環を断ち切る事が現在の心不全治療の主軸となります。

脚注1)レニンという物質は腎臓の傍糸球体細胞(ぼうしきゅうたいさいぼう)で産生され、心不全の状態になると、レニン産生は増加します。レニンはアンジオテンシノーゲンという物質をアンジオテンシン1に変換し、これはアンジオテンシン変換酵素(ACE)により、アンジオテンシンIIに変換されます。アンジオテンシンIIは強力な血管収縮物質であるため血圧を上昇させ、また副腎を刺激してアルドステロンという物質の分泌を促進し、ナトリウム再吸収を促進することで循環血液量の増加をきたします。これらの一連の系をレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系と呼んでいます。

脚注2)心不全の代償機構として活性化される、交感神経系、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系、抗利尿ホルモンなどの神経・内分泌系をまとめて神経体液性因子といいます。

症状

心臓から全身へ血液を拍出するポンプ機能が低下し、肺や全身にうっ血を引き起こす状態を心不全といいます。肺にうっ血が起こると息切れ、呼吸困難が生じ、最初は歩行や階段昇降など労作時のみに感じる程度ですが、進行すると安静時もしくは睡眠時に横になっていても呼吸困難が出現するようになります。呼吸困難が急速に進行し、ピンク色の泡状の痰が出たり、意識レベルの低下をきたしたりして、緊急に治療を必要とすることもあります。

拡張型心筋症では、慢性的な心筋障害(収縮能の低下)により、前述の息切れや呼吸困難に加えて、全身の血液が停滞して両下肢や顔面の浮腫(むくみ)が出たり、むくみにより体重が増加したり、胃腸粘膜のむくみによる食欲低下などが起こります。

また、全身への血液供給の低下により、全身倦怠感、手足の冷感、尿量の減少などが起こります。不整脈による動悸、とくに致死性心室性不整脈による失神、突然死が起こることもあります。収縮力が低下した左心室内に血液の固まりである血栓が作られてしまい、流れていった血管の先で詰まってしまう塞栓症(脳梗塞など)を認めることもあります。

症状

診断

心内腔の拡大と収縮不全を特徴とする心筋疾患のうち、他に原因を有する特定心筋症を除外することで診断します。つまり、虚血性心筋症、弁膜症性心筋症、高血圧性心筋症、アルコール性心筋症、薬剤性心筋症(抗ガン剤などによる副作用)、甲状腺や副腎の異常、脚気などの代謝性心筋疾患、膠原病やサルコイドーシスなどの全身性心筋疾患、他にも周産期にみられる産褥性心筋症といった他原因の心筋障害の除外が必要です。

  1. 胸部X線
    心拡大を認め、病状が悪化したときは、肺うっ血の所見が見られます。
  2. 心電図
    左房負荷、左室高電位、異常Q波、QRS幅延長など多彩な変化を認めますが、本疾患に特徴的な所見はありません。
  3. 血液検査
    BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)濃度は心不全の診断や重症度、さらに生命予後の評価にも有用であり、一般に治療後もBNP値が200pg/ml以上の高値例では心不全の再増悪による入院率が高いため、治療の強化を行います。
  4. 心エコー検査
    左室内腔の拡大と全体的な収縮不全を認めます。機能的僧帽弁逆流を認めることもあります。
  5. 心臓カテーテル検査
    虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)を否定するため、冠動脈造影検査などが検討されます。心筋の一部を採取して顕微鏡などで観察する心筋生検は他の心筋疾患の除外に有用です。拡張型心筋症に特異的な組織像はありませんが、心筋細胞の肥大、変性、間質の線維化を認めます。
  6. 心筋シンチグラフィー
    心筋血流SPECT検査(アイソトープ検査)で虚血性心筋症の鑑別や、正確な心機能の評価が可能です。
  7. 心臓PET検査
    心サルコイドーシスの診断に有用なことがあります。
  8. 心臓MRI検査
    放射線の被爆がなく、心臓の形態・機能診断を行うことができます。

治療

治療目標は、1.症状の改善、2.不整脈のリスク管理を行うことによって、心不全による入院を減らし、生活の質を向上させ、寿命の延長を目指します。基本は薬物治療ですが、必要に応じて、非薬物治療を組み合わせて行います。

  1. 日常生活の注意点
    適切量の塩分・水分管理、過労を避ける事が不可欠です。規則正しい服薬、血圧、体重測定などの自己管理が重要です。心不全を悪化させるものとして、貧血、感冒などによる発熱、不整脈があり、これらの徴候に注意します。
  2. 心不全に対する薬物治療
    慢性心不全では心機能低下に対する体の代償反応として、交感神経系およびレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系が持続的に活性化されています。これらの過剰かつ持続的な活性化は、左心室をボール状に変形・拡大させ、さらなる心不全や不整脈の悪化を引き起こします。薬物治療は、これら交感神経系およびレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の活性化を抑えることを目的とします。
    1. アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE-I)、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)
    2. β遮断薬
    3. アルドステロン拮抗薬
      ACE-IはアンジオテンシンIIの産生を抑制する薬剤であり、ARBはアンジオテンシンIIが受容体に結合するのを阻害する薬剤です。アンジオテンシンIIは血管を収縮させ、またアルドステロンという水や塩分の貯留を促進する作用をもつホルモンの分泌を亢進させます。ACE-IやARBはアンジオテンシンIIを抑制することによって、体液量を適切なバランスに保ち、心筋肥大を抑える効果があります。また、アルドステロンの受容体に競合するアルドステロン拮抗薬にも同様の作用があります。

      β遮断薬は、過剰に活性化された交感神経を抑制することによって、心筋細胞のエネルギー代謝を適正化し、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系を抑制し、危険な不整脈の出現を減らします。このような作用で、a/b/cの3剤は死亡や心不全入院を減らすことが大規模臨床試験で証明されています。これらの薬剤は血圧降下剤に属し、過量な投与は低血圧を来すので中止が必要です。β遮断薬は心不全の状態が安定した後に少量より開始し、少しずつ増量していきます。ACE-I、ARBは腎機能に影響を与える可能性があるので、高度腎不全の患者さんでは慎重な使用が必要です。これらの治療薬によって直ちに自覚症状が良くなるわけではありませんが、内服を続けることが重要です。3-6ヶ月以上かけて心臓の働きが良くなり、特にβ遮断薬の場合には不整脈による突然死を予防する作用もあります。決してご自身の判断で治療薬を止めないでください。
    4. 利尿剤
      肺や全身のうっ血症状を改善するのに最も有効な薬剤です。ただし、尿中カリウム排泄による低カリウム血症は不整脈の原因となるため、定期的に血液検査をし、必要に応じてカリウムの補充を行うこともあります。
    5. 強心剤
      心不全が悪化した際に、点滴による強心剤の投与を必要とすることがあります。重症心不全の患者さんでは、稀に内服の強心剤を併用することもあります。
  3. 心不全に対する非薬物治療
    1. 酸素療法
      心不全患者さんの中には睡眠中に無呼吸を呈する方(睡眠時無呼吸症候群)がよく認められます。無呼吸による低酸素血症、二酸化炭素感受性の亢進は換気状態を悪化させ、さらには交感神経を活性化します。在宅の夜間酸素療法により呼吸状態が改善し、心不全症状の改善を認めることが報告されています。
      また重症心不全の方には、マスク型の人工呼吸器(ASV)を使用していただくこともあります。ASVは、呼吸時に外から適切な圧力をかけることで、呼吸状態を改善させるとともに、心臓の拍出も助けることができます。前述の酸素投与を併用することもできます。
    2. 心室再同期療法
      薬物治療で改善しない重症心不全で、左室駆出率35%以下、心電図で広いQRS幅を認める患者さんが適応です。両心室よりペーシングを行い心筋収縮効率の改善を図り、治療が奏効する患者さんでは左室収縮能、生命予後が改善する事が証明されています。実際には組織ドプラ法などの心エコーを用いてより詳細に心筋収縮のタイミングのずれを測定して適応を検討します。(詳細は当科ホームページ:不整脈班の「デバイス」を参照してください外部リンク
      心室ペースメーカー療法
    3. 免疫吸着療法
      人工透析のようなカラムを用いて、拡張型心筋症の患者さんの血清に存在する抗心筋自己抗体の除去を行うことで心機能の改善を認めることが報告されています。日本では当院においてはじめて臨床応用を行い、現在は共同研究施設とともに治療を行っています。まだ確立された治療ではありませんが、拡張型心筋症による治療抵抗性心不全の場合に考慮すべき治療と思われます。
    4. 補助人工心臓、手術治療、心臓移植
      最大限の内科治療を行っても改善できない重症心不全患者さんが適応となります。日本では1997年に臓器移植法が制定され、2010年には臓器移植法が改訂されました。改定後に心臓移植件数は年間20-30例と増加しましたが、2012年12月までの心臓移植施行件数は146例と、日本ではまだまだドナー不足が深刻な状況です。日本での心臓移植は移植までの待機時間が海外に比べて非常に長いため(平均2年以上)、補助人工心臓治療により移植までの時間をかせぐこともあります。大きくなりすぎた心室に対する左室縮小形成術や重症僧帽弁逆流に対する僧帽弁形成術など、外科的治療も場合によっては行うことがあります。
  4. 不整脈に対する治療
    持続性心室頻拍や心室細動など致死性の不整脈が出現することがあります。実際にこのような不整脈が出現した、あるいは出現する可能性が高い患者さんでは、薬物治療のみでは不十分であり、植込み型除細動器(ICD)の適応となります。最近では、心臓再同期治療も可能なICD(CRT-D)を使用することができます。

さらに詳しく知りたい方へ

  1. 慶應義塾大学病院ホームページ外部リンク(患者さん向け)
  2. 慶應義塾大学医学部 循環器内科ホームページ外部リンク(患者さん向け)
  3. 日本循環器学会 循環器病の診断と治療に関するガイドライン外部リンク(医療関係者向け)
    拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン(最新版)が閲覧できます。
  4. 日本心臓財団ホームページ外部リンク(患者さん向け)
    病気の説明、セカンドオピニオンの質問・回答集が閲覧できます。

文責: 循環器内科外部リンク
最終更新日:2014年10月24日

▲ページトップへ

慶應義塾HOME | 慶應義塾大学病院