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言語聴覚療法

げんごちょうかくりょうほう

言語聴覚療法とは

病気や交通事故、さらには発達上の問題で言語、聴覚、発声、発音の機能が損なわれると、言葉によるコミュニケーションに問題が生じます。また、食べることに問題(摂食・嚥下障害)が起こることもあります。このような問題に対して、言語聴覚療法では障害された機能を評価して訓練を行います。
慶應義塾大学病院リハビリテーション科の言語聴覚療法の対象となる主な障害は表1に示すとおりです。

表1.言語聴覚療法の対象となる主な障害

 

対象障害

原因となる病気

成人

失語症

脳血管障害、脳腫瘍、頭部外傷など

運動障害性構音障害

脳血管障害、変性疾患など

嚥下障害

脳血管障害、脳腫瘍、頭部外傷、変性疾患、頭頸部がんなど

高次脳機能障害(記憶障害、注意障害、遂行機能障害など)

脳血管障害、脳腫瘍、頭部外傷など

発音・発声障害

舌がん、喉頭がんなど

小児

言語発達遅滞、摂食障害

発達の遅れ、頭部外傷など


言語聴覚療法の手順

言語聴覚療法を行うにあたっては、まず障害に応じた検査を実施します。これにより障害の有無やその程度、障害のメカニズムを明らかにします。次に訓練の内容や支援の方法を決定します。そして、患者さんやご家族に障害の状態および対応の仕方をなどについてご説明した上で、訓練を開始します。

言語聴覚療法の実際

  1. 失語症
    病気や事故で大脳の言語中枢が損傷を受けると失語症になります。失語症になると言葉を聞いて理解することや文字を読んで内容を理解すること、さらには話したり文字を書いたりして意思を伝達することに障害が出ます。このような患者さんに対しては、様々な検査を通じて評価を行い、障害された言葉の回復を図ります。
  2. 運動障害性構音障害
    話すのに必要な舌や唇の筋肉が麻痺などで動きが悪くなると、いわゆる呂律が回らなくなり発音が不明瞭になります。このような場合には、舌や唇の運動能力を改善する訓練や、例えば「今日は/朝から/忙しい。」というように、文節で息継ぎをしてゆっくり話す話し方の訓練をします。さらに障害が重い場合には、トーキングエイドなど意思伝達装置を使用します。
  3. 嚥下障害
    嚥下(えんげ)とは、食べることで食べ物を口から胃まで運ぶ運動です。嚥下に障害が起こると、食べ物や水分が口からこぼれる、たまに水分で咳き込むなどの比較的軽度のものから、常に食べ物や水分が気管に入る((誤嚥)ごえん)など重度のものまであります。嚥下障害が重度の場合には、肺炎や窒息など常に生命の危険にさらされます。また、栄養不足や脱水状態により新たな病気を起こしやすくなります。このような嚥下障害に対してはX線を使ったビデオ嚥下造影検査((図1))など様々な検査を行って、嚥下障害のメカニズムや、安全に食べることのできる最適な姿勢や食物形態((ゼリー状、ぺースト状など))を探り、訓練に結びつけていきます。
    図1.ビデオ嚥下造影検査

    図1.ビデオ嚥下造影検査

  4. 高次脳機能障害
    失語症以外の高次脳機能障害には、記憶障害、注意障害、失行・失認、遂行機能障害などがあります。これらの障害は、身体の麻痺や言葉の障害である失語症とは異なり、目に見えない障害であることから、患者さん自身も気づかないことがあります。このような場合には、種々の検査を行って問題点を明らかにし、患者さんや家族に症状をご説明した上で、障害そのものを改善する訓練や障害を代償する訓練および家庭や職場などの環境調整を行います。
  5. 発音・発声障害
    この点については、「慶應義塾大学病院の取り組み」のところで述べます。
  6. 言語発達遅滞・摂食障害
    子どもの障害は、原因や予後などに大人とは大きな違いがあります。子どもの障害の原因の多くは脳の問題であり、脳が胎生期や生後の発達期に障害を受け、その結果、身体や知能、感覚系などに機能の異常が出現します。慶應義塾大学病院言語聴覚療法室では、全体の発達をみながら、言語発達や摂食機能の獲得を促すための援助を行っています。言語以外においても、表情変化、身振り、手振り、視線、距離のとり方などのコミュニケーション行動はどのようになされているのか、また、口腔機能はどうなのか、それぞれ評価し訓練を行います。発達障害を持つ子どもたちの発達を促す上で、家族は非常に重要な役割を果たしますので、家族が子どもの障害を理解し、積極的に訓練にかかわることができるよう、家族への援助も行います。

慶應義塾大学病院での取り組み

1)悪性腫瘍に対する言語聴覚療法

がんの罹患率は増加する傾向にあります。それに伴い治療方法も進歩し、がん患者の生存率は増加しています。そして、がんそのものや治療により様々な障害を生じ、その障害と向き合って生活をしていかなければならない患者さんが増えてきています。私たちはそうした患者さんに対して、生活の質の向上を目的に様々な言語聴覚療法を提供しています。

  1. 悪性腫瘍に伴う嚥下障害
    脳腫瘍そのものやその術後、頭頸部がん(おもに舌がん、咽頭がん)、食道がんの術後など、またこれら腫瘍に対する放射線・化学療法中またはその後に嚥下障害を生じることがあります。例えば、頭頸部がんは飲み込みに必要な器官の一部もしくは大半を手術で切除することも多いため、術後に重篤な嚥下障害を生じることがあります。そこで、残った器官の能力を最大限利用して上手に飲み込む方法を言語聴覚療法で習得していきます。食道がんの術後には、嚥下障害に加えて声のかすれ(音声障害)が生じることがあります。声のかすれがひどいと、うまく咳ができず、誤って気管に入ってしまった食物などをしっかり喀出(かくしゅつ:吐き出すこと)することができません。そこで、言語聴覚療法で効率よく咳をする方法や気管に食物を侵入させないような飲み方を習得します。また、放射線・化学療法では治療が進むにつれて障害が出てきて、治療後もその障害が一定期間続くことがあります。その期間、症状に合わせて訓練内容を変えながら、患者さんに合ったリハビリプログラムを提供しています。いずれの場合も透視下で行う嚥下造影検査で、飲み込みの状態を細かく評価して患者さんの状態にあったリハビリプログラムを検討し、必要に応じて再評価を行っていきます。
  2. 悪性腫瘍に伴う発音障害
    脳腫瘍や頭頸部がん術後に、舌がうまく動かせないことなどにより発音の障害が出ることがあります。このような場合に、どのようにしたらより明瞭な音を作ることができるかを訓練で習得していきます。ただ、脳腫瘍による神経のダメージが大きい場合や舌がんなどにより発音に必要な器官を大きく切除した場合、訓練だけで機能の回復を図るのは限界があります。そこで、補綴物(ほてつぶつ)という義歯に似たようなものを口腔内に装着し、口腔内の形状を変化させることで発音の改善を図る試みも行っています。これは口腔外科と連携して行っています。
  3. 悪性腫瘍に伴う発声障害
    喉頭がんで喉頭を摘出すると、声を失い話すことができなくなります。そこで、声に代わる第2のコミュニケーション手段として代用音声訓練を行います。代用音声には、電気式人工喉頭(図2)、食道発声、気管食道ろう発声があります。慶應義塾大学病院言語聴覚療法室では、術後に声を失うことによる患者さんの不安を軽減することを目的として、術前に代用音声の説明を行います。術後は早期から訓練を開始し、まず習得が容易な電気式人工喉頭の使用訓練を行い、次いで食道発声訓練を行います。さらに食道発声の習得が困難な患者さんには、耳鼻咽喉科と連携して気管食道ろう発声の適用を検討します。
図2.電気式人工喉頭

図2.電気式人工喉頭

2)覚醒下手術

脳腫瘍が言語機能や運動野などの脳機能の重要な部位に隣接している場合に、障害を残さずにかつ最大限に病変を切除するために、慶應義塾大学病院脳神経外科では覚醒下手術を行っています。言語聴覚療法室では、まず術前に言葉や注意などの高次脳機能の評価を行います。次いで覚醒下手術に立ち会い、患者さんが覚醒した段階で呼称やカウンティング(1~30ぐらいまで声を出して数える)などの課題を実施し、切除部位を決定するための情報を提供します。さらに術後は高次脳機能の再評価を行い、必要な場合には訓練を実施します。

さらに詳しく知りたい方へ

  • 高次脳機能障害のリハビリテーション(第3版) / 本田哲三編集 ; 武田克彦 [ほか] 執筆
    東京 : 医学書院, 2016.5
  • よくわかる嚥下障害(改訂第3版) / 藤島一郎編著
    大阪 : 永井書店, 2012.9

文責: リハビリテーション科外部リンク
最終更新日:2018年3月1日

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