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小児の排便障害(ヒルシュスプルング病、鎖肛を含む)

しょうにのはいべんしょうがい ひるしゅすぷりんぐびょう、さこう

ヒルシュスプルング病

赤ちゃんの便秘の中には、直腸の動き(蠕動運動)に必要な神経節細胞が、生まれつき腸の壁に存在しないことによって起こる病気があります。これは報告者の名前をとって「ヒルシュスプルング病」と呼ばれていますが、「先天性巨大結腸症」ともいいます。この病気の約85%は肛門から直腸までに病変があります。約5,000人に1人の発生率です。一部にはRetという遺伝子の異常により起こる場合があります。

【診断】

診断は、肛門周囲の組織から回収した検体の病理検査(顕微鏡での神経節有無の観察)、腹部レントゲン撮影、直腸肛門内圧検査、注腸検査で診断します。

【症状】

ヒルシュスプルング病は、90%に胎便排泄の遅延を起こし、放置すると排便のできない腸閉塞状態で敗血症を続発し、命にかかわる病気です。その一方で便秘のみの経過で発見される例も10%あります。

【治療】

ブジーという医療器具をお尻から入れてガス抜きをしたり、腸を洗ったりする処置によって一時的に症状の改善がみられることが多いですが、大腸から小腸に及ぶ広範囲で神経節細胞がない場合には、直ちに人工肛門を作る必要があります。慶應義塾大学病院では1994年から米国と同時に腹腔鏡手術を開発し、それ以来ほとんどの症例で人工肛門を作成せずにお臍と他の2か所の5mmほどの傷で根治手術が行われています。これまで生後6~8か月で根治手術が行われていたこの病気は、現在生後1~2か月で人工肛門を作らずに小さな傷で済む手術が行われるようになりました。そして、手術後の排便機能についても従来の開腹手術よりも優れていると考えられています。

ヒルシュスプルング病類縁疾患

ヒルシュスプルング病が神経節細胞の先天的な欠如であることに対し、神経節細胞が未熟であったり、数が少ない場合、ヒルシュスプルング病類縁疾患を起こします。まれな病気です。

【症状】

ヒルシュスプルング病と同様に、排便の得られていない状態が続くと敗血症を起こし、命に関わる疾患です。

【診断・治療】

この疾患の病変は、多くの場合広範囲にわたり、しかも腸管のどの部位が機能を持っているかについての判定が極めて困難です。そのため大量の腸を手術で摘出することもあり、中心静脈栄養に頼らなければ生きていけないことも問題となります。中心静脈栄養を中心とした、長期にわたる患児の成長発達についての継続した治療が必要となります。これらの治療がうまくいかない場合は、現在の医療で行える治療方法は、小腸の移植手術です。(慶應義塾大学病院は脳死小腸移植の認定施設です。)(小児小腸移植の項参照)

鎖肛

生まれつき肛門に異常があるお子さんは鎖肛と呼ばれ、小児外科医による専門的な治療が必要です。5000人に1例の頻度で発症が知られています。鎖肛にはその形と直腸の盲端の位置により分類が行われており、それぞれ低位、中間位、高位に分類されます。高位の鎖肛の中には、膀胱や尿道とつながりがあるものがあったり、尿道と膣と直腸が一つの出口となっている重症型(総排泄腔異常)があります。鎖肛において排便に必要な筋肉の検査は手術前に行われるMRIによって行われますが、これに加えて当院では外肛門括約筋の分布と機能を筋電図検査を用いて行っています。約半数に奇形を合併していることも知られています。

【診断】

肛門部の観察によって行います。

【症状】

肛門の孔がなく排便を出す方法がないため、腹部膨満から経口摂取不良、さらには敗血症を起こします。

【治療】

低位型は人工肛門を作成することなく、新生児期に手術が行われますが、中間位や高位鎖肛では人工肛門が必要で、その後も再手術が必要となります。高位鎖肛の重症型(総排泄腔異常)では、女児の場合、初潮の際の膣形成など、年齢に合わせた長期にわたる医療機関での治療が必要となります。お子さんにとって一生必要な排便機能を損なうことのないように治療を行うには、排便に必要な筋肉をできるだけ損傷せずに利用して手術を行う必要があり、経験とともに極めてデリケートな手術手技が要求されます。

慶應義塾大学病院での取り組み

以上3つの疾患を含む排便障害を主訴とする病気の治療中には、排便機能評価を行うことが重要です。当院ではスコアによる臨床的評価指標と、直腸肛門内圧検査やMRIなどの画像評価を組み合わせて客観的評価を積極的に行っています。

文責: 小児外科外部リンク
最終更新日:2020年10月21日

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