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膵がん

すいがん

概要

膵がんの罹患率は加齢とともに上昇し、40歳を過ぎたころより急増しています。日本の膵がん罹患率は世界的にみると高く、悪性腫瘍による死因では男性の第5位、女性の第4位を占めています。膵臓には消化酵素を分泌する外分泌組織とインスリンなどのホルモンを分泌する内分泌組織があるため、膵がんの組織像は非常に種類が多く様々な形態をとってきますが、膵がんの約90%は膵管上皮から発生した浸潤性膵管がんです。一般的に浸潤性膵管がんの治療成績は決して良好とはいえず、治療に難渋することもしばしばです。2003年に発表された日本膵臓学会膵がん登録によると、通常型膵頭部がん切除約4,700症例の検討で5年生存率は13.0%、生存期間中央値は12.3ヶ月と報告されています。私たちはこの難治がんに対して、いかに最善の治療を提供することができるか積極的な姿勢に立ち、日々格闘しています。現在のところ切除が長期生存に至る唯一の治療法ですが、術後も高率に再発を来たすことや、診断時にすでに手術適応のない症例も少なくないため、抗がん剤や放射線治療なども含めた集学的治療により膵がん患者さんの治療にあたっています。

症状

腹痛、腰背部痛、食欲不振など、上腹部や背部のはっきりしない症状がほとんどです。膵頭部がんでは黄疸が出現することが多いですが、膵体尾部がんでは起こらないため、手術の可能な段階で膵体尾部がんを発見するのは難しいとされています。また糖尿病が高率に見られ、中年以降に発生した糖尿病や、急激に血糖管理が悪くなったりした場合には必ず膵がんを疑って精密検査を行うべきです。

診断

血液検査では膵酵素や腫瘍マーカー、血糖値などを調べます。画像検査としてはまず超音波やCTで腫瘍の存在部位と膵外浸潤の程度、肝/遠隔転移やリンパ節腫大、腹水の有無を診断します。がんの診断を確定するために、膵臓の病変部から直接組織を採取する超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診を行うことがあります。他臓器転移や広範なリンパ節腫大、局所過進展があれば手術適応はなく、抗がん剤治療などに移行します。切除の可能性があればさらにthin- slice CTやMRI、血管造影検査を行い局所浸潤の程度を厳密に調べます。門脈および主要動脈(上腸間膜動脈、腹腔動脈、総肝動脈)への浸潤の有無が術式を決定する重要な因子ですが、切除可能と判断されれば開腹して術中所見で最終的な術式を決定します。門脈/動脈の合併切除や上腸間膜動脈、腹腔動脈周囲神経叢の廓清程度は術後経過に大きく影響するため、腫瘍の進展範囲については慎重な検討が必要です。腫瘍により閉塞性黄疸を併発している場合には術前にPTBD(percutaneous transhepatic biliary drainage)チューブやENBD(endoscopic naso-biliary drainage)チューブを留置し減黄を行います。

治療

1.外科的切除可能症例に対する治療

膵臓は門脈という太い血管がすぐ後を通っており、この血管の右側を膵頭部、左側を膵体尾部と解剖学的に分類しています。これは同じ膵臓内でもがんのできる場所により症状が異なり、また手術術式も異なってくるからです。膵頭部にできるがんを膵頭部がんといい黄疸という症状が出る頻度が高いのですが、膵体尾部にできる膵体尾部がんでは黄疸は出にくく発見が遅れる可能性があります。膵臓の周りには神経が豊富で膵がんが神経に浸潤してしまい背部痛を生じることも少なくありません。手術術式は、膵頭部がんに対しては膵頭十二指腸切除術(あるいは全胃を温存する幽門輪温存膵頭十二指腸切除術)、膵体尾部がんに対しては膵体尾部切除術(膵尾側切除術)を施行し、頭部と体部にまたがった場合は膵全摘術になることもあります。門脈や腹腔動脈などに浸潤した症例でも個々に検討し、治癒の可能性があれば積極的に合併切除を施行しています。

2.手術適応のない症例に対する治療

診断時にがんが周囲の血管などに高度に浸潤してしまっている症例や、他臓器転移を認めた場合には原則的には手術適応はなく、抗がん剤治療や放射線治療が考慮されます。これまでの臨床試験の結果から、抗がん剤治療は膵がんによる疼痛などの症状を緩和するだけでなく予後も延長することが証明されています。従来はゲムシタビン(ジェムザール)や内服薬であるS-1(TS−1)による治療が標準治療とされてきましたが、最近になりFOLFIRINOX(5-FU、ロイコボリン、イリノテカン、オキサリプラチン)療法とゲムシタビン+アブラキサン療法という抗がん剤併用療法が、それぞれゲムシタビン単剤に比べて有意な予後の延長効果を示し、標準治療の一つとして行われるようになってきました。ただ、抗がん剤の併用療法は高い効果が期待される一方で副作用も強く出現するため、実際には患者さんの年齢や全身状態を考慮し、治療の効果とリスクを症例ごとに検討しながら治療方針を決めています。また、病変が局所にとどまっている症例では放射線治療も選択されることがあります。これまでの研究で放射線単独よりも抗がん剤を併用することで、より高い効果が期待されることがわかっているためゲムシタビンなどの抗がん剤と併用して施行されることが多くなっています。ただ、抗がん剤単独での治療と比べ、その上乗せ効果がどこまであるかは未だに意見の分かれるところであり、症例ごとに外科、内科、放射線科で相談し適応を判断しております。

早期膵がん発見の取り組み

膵がんの多くは進行がんとして発見され、手術の適応とならないことも少なくありません。いかに早期の段階で発見するかがきわめて大切であり、そのためには膵がんの初期症状を拾い上げ、精度の高い検査が必要となってきます。私たちは、US、CT、MRI/MRCP検査に加え、超音波内視鏡(EUS)、内視鏡的膵胆道造影(ERCP)、さらに管腔内超音波検査(IDUS)などを組み合わせ、極めて厳密な診断を行っており積極的に小膵がんの発見に努めています。また、膵がんのリスク因子として、膵がんの家族歴、糖尿病、慢性膵炎、膵嚢胞性疾患(後述)、肥満、喫煙、大量飲酒などがあげられます。こういった膵がんのハイリスクの方に対しては、定期的な採血や画像検査でフォローすることにより早期に病気を発見できるように努めております。

膵嚢胞性疾患

浸潤性膵管がんのほか、膵臓に発生する腫瘍としては膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN, intraductal papillary-mucinous neoplasm)や粘液性嚢胞腫瘍(MCN, mucinous cystic neoplasm)といった比較的良好な予後を特徴とし、過形成から浸潤がんまで幅広い組織像を呈する膵嚢胞性疾患と呼ばれるグループが存在します。最近これらに対し手術適応が確立されつつありますが、当施設では症例によっては機能温存を目指して膵横断切除などの縮小手術を行っています。また膵内分泌腫瘍やsolid-pseudopapillary tumor、漿液性嚢胞腫瘍(SCT, serous cystic tumor)といった腫瘍も上記疾患と類似した検査所見を示すことがあります。それぞれ悪性度が異なるため前述の画像検査を組み合わせて詳細な鑑別診断を行い、最適の治療方針を決定しています。

膵・胆道疾患に対する経乳頭的内視鏡治療の実践

膵・胆道系は、解剖学的にアプローチすることが難しい臓器でありますが、近年内視鏡技術の進歩は目覚しく、以前ならば手術が避けられないような疾患に対しても、経乳頭的内視鏡治療が可能となってきました。黄疸の原因となる胆管狭窄に対するステント治療など、様々な病態に対して積極的に内視鏡治療を施行し、安全かつ質の高い治療を行っています。

文責:一般・消化器外科外部リンク消化器内科外部リンク
最終更新日:2016年3月15日

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