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小児の心臓の病気(先天性心疾患など)

しょうにのしんぞうのびょうき(せんてんせいしんしっかんなど)

概要

小児の心臓の病気は種類が多く、先天性心疾患、川崎病、心筋炎・心筋症、感染性心内膜炎、肺高血圧症、不整脈などが対象となります。代表的な病気について以下に一般的な説明をしますが、同じ病名であっても、年齢や病態によって患者さんそれぞれの症状が異なることが多いです。したがって、説明をお読みになられたうえで疑問を感じられた点やご心配な点などありましたら、遠慮なく医師にお尋ねください。

主な病気

先天性心疾患(せんてんせいしんしっかん)

赤ちゃんの約100人に1人は心臓や血管の形に何らかの異常をもっています。多くの種類の病気があり、同じ病名でも症状の重さは異なります。一部の患者さんで遺伝子や染色体の異常といった原因がわかる場合もありますが、ほとんどの方の原因はわからないことが多いです。先天性心疾患を心臓の働きにより大きく分けると、1. 心臓の機能が悪くなる心不全を主な症状とするタイプ、2. 酸素がめぐりにくくなり皮膚の色が悪くなるチアノーゼを主な症状とするタイプ、3. 両方を同時に起こすタイプ、があります。

具体的には、心不全とは全身に必要な酸素量を供給するために心臓に負担がかかり、その負担に心臓が耐えられなくなっている状態をいいます。心臓中隔(心臓の4つの部屋を隔てる壁)に孔があいていることにより血液が異常に流れる短絡や、弁の逆流、血液の通り道が狭くなる狭窄、血液のめぐりが心臓自体において悪くなる虚血などによって起こります。心不全の症状には、脈が速くなる(頻脈)、四肢が冷たくなる、尿が少なくなる(乏尿)、皮膚の色が白くなる(蒼白)、汗をかきやすくなる(多汗)、体重が増えないといった症状や、肺に血液がたまり呼吸数がはやくなる、息を吸い込むとき肋骨の間の一部が陥没する(陥没呼吸)、呼吸時にヒューヒューしたり(喘鳴)せきをする(咳嗽)、体全体に血液がたまることにより肝臓が大きくなる(肝腫大)、体がむくむ(浮腫)などがあります。心不全を起こす疾患として、心室中隔欠損症、房室中隔欠損症、動脈管開存症などがあります。

一方、チアノーゼとは静脈の血液が肺で酸素を取り込むことができないまま動脈の血液にまじって体に送り出される先天性心疾患で起こり、その結果体に流れる血液中の酸素が少なくなり(低酸素血症)、顔、唇、爪などの色が青紫色に見える症状を言います。チアノーゼを起こす疾患には、ファロー四徴症、完全大血管転位症、単心室症などがあります。完全大血管転位症や単心室症などでは、チアノーゼと同時に心不全を起こす場合もあります。

先天性心疾患では、血液が体、肺を流れる際の流れ方(血行動態といいます)の異常により、上に述べた心不全やチアノーゼが起こります。正常心臓の血行動態を図1に示します。

図1.正常な心臓の血液の流れ方

図1.正常な心臓の血液の流れ方

肺で酸素を取り込んだ赤い動脈血が肺静脈→左心房→左心室→大動脈→全身に流れます。そして、全身で酸素を使われた青い静脈血が上・下大静脈→右心房→右心室→肺動脈→肺に流れます。比較的頻度の高い先天性心疾患について、血行動態の異常を図示しながら別ページで説明します。

川崎病(かわさきびょう)

主に4歳以上の乳幼児に好発する全身の血管に炎症を起こす原因不明の病気です。以下の症状のうち4つないし5つ以上あてはまる場合に、川崎病と診断し治療します(例外もありますので不明点は主治医にお尋ねください)。1.5日以上続く発熱、2.両側眼球結膜の充血、3.口唇の紅潮・いちご舌、4.不定形発疹、5.手足の浮腫・紅斑、6.頚部リンパ節腫脹です。炎症が長引くと、心臓の筋肉に血液をおくる冠動脈に合併症(冠動脈拡張や冠動脈瘤(かんどうみゃくりゅう:こぶのように拡張してしまうこと))が生じることがありますので、炎症をなるべく早く抑えるために免疫グロブリン製剤(血液製剤)による治療を行います。重症例にはステロイド薬も併用します。冠動脈合併症がなくても症状改善後約2〜3か月間、抗血小板薬(通常、少量のアスピリン)を内服して冠動脈に血栓ができることを予防します。冠動脈合併症が起こった場合には、抗血小板薬や抗凝固薬の内服、心臓カテーテル検査などの精密検査が必要です。

不整脈(ふせいみゃく)

心臓は血液を全身に送り出すために絶え間なく収縮を続けています。この収縮のリズムの異常が不整脈です。頻脈(頻拍)とは、心拍数が異常に増加し、脈が異常に速くなること、徐脈とは心拍数が異常に減少し、脈が異常に遅くなることをいいます。小児では、日常の生活のなかで症状があることは少なく、学校での心臓検診で初めて異常を指摘されることが多いです。次のような不整脈が学校心臓検診でよく見つかり、前述の先天性心疾患に関連する不整脈もあり、注意が必要です。

  1. 期外収縮
    本来のリズミカルなリズムよりも1テンポ早く収縮してしまうものを指し、心房性期外収縮と心室性期外収縮があります。無症状であれば治療が不要である場合が多いです。症状がある場合は運動負荷心電図やホルター心電図を行って、頻拍性不整脈がないかどうかを確認します。期外収縮の頻度が増加する場合は運動制限を考慮しますが、期外収縮が運動で消失する場合も多く、その場合は治療や運動制限は不要で、定期的な観察のみ行います。
  2. 1度房室ブロック
    心房と心室の間でリズムが伝わりにくくなった状態です。症状はなく心電図で初めて発見されます。運動負荷心電図で心房から心室までのリズムの伝わりが正常化する場合は問題ないことが多く、運動によって2度房室ブロック(後述)になる場合には、ホルター心電図による高度の徐脈の有無の確認と経過観察・運動制限が必要です。
  3. 2度房室ブロック
    心房からの刺激が一部心室に伝わらない状態です。心電図の形によってウェンケバッハ型とモービッツII型の二種類に分けられますが、ウェンケバッハ型の場合は特に運動制限や治療の必要はありません。運動負荷で症状が悪化する方や心拍数の増加が悪い方、症状がある方には運動制限や治療が必要です。
  4. 3度房室ブロック
    心房からの刺激が心室に全く届かない状態をいいます。心房とは別に心室が独自のリズムで収縮し、脈拍が遅くなります。運動しても心拍数の増加が悪い場合は運動制限が必要で、脈拍が非常にゆっくりな場合や、失神、めまい、疲れやすさなどがある場合にはペースメーカーの植え込みが必要です。
  5. WPW症候群(Wolff-Parkinson-White syndrome)
    心房と心室の間の刺激が伝わる伝導路について、本来の伝導路とは別の通り道(副伝導路)が生じることで、乳児では心拍数220以上・学童では180以上にもなる頻拍発作を引き起こす病気です。心電図で特徴的な波(デルタ波)がみられることから診断されます。動悸、胸部不快感、失神などの症状を来し長時間持続すると心不全につながります。頻拍発作時の治療には、バルサルバ手技(息ごらえ)・冷水や氷を顔にあてる・頸動脈洞マッサージといった迷走神経を刺激することで心拍数を減少させる治療や、可能であれば薬を血管から静脈注射することで治療します。心不全の緊急時には電気的除細動を行います。これらの発作を予防するためには抗不整脈薬の内服が必要で、発作を繰り返す場合は心臓カテーテルによって副伝導路の高周波焼却術が行われます。ただし、学校検診で指摘されたWPW症候群のすべての方が、頻拍発作を起こすわけではありません。頻拍発作がない場合には、特別な治療、運動制限は必要ありません。睡眠不足、過労、ストレスが発作の誘因となることがあるので、注意が必要です。
  6. 先天性QT延長症候群
    心電図の波形でQT時間が延長することから診断されます。カリウム・ナトリウムイオンチャネルという蛋白の異常が原因であることが知られています。前述の心室性期外収縮が頻回に生じた後に頻拍発作(専門的には多形性心室頻拍(torsade de pointes:TdP)といいます)や心室細動を来し、失神や突然死をおこしうる病気で、小児期の命に関わる不整脈として重要です。頻拍発作の予防にはβブロッカーといった抗不整脈薬が用いられます。発作時には抗不整脈薬の静脈注射や電気的除細動が必要です。一方学校検診で指摘されたQT延長症候群のすべての方が、発作を起こすわけではありません。発作がない場合には、特別な治療、運動制限は必要ありませんが、睡眠不足、過労、運動時の水分・塩分補給不足、水泳中(特に潜水)が発作の誘因になることが多いので、注意をすることが大切です。

心筋症(しんきんしょう)

心臓の筋肉(心筋)の異常によって心臓のポンプ機能が正常に働かなくなる病気です。肥大型心筋症は心筋が異常に太くなり心室壁が厚くなることで心臓がうまく広がらず血液を受け入れにくくなります。小児期には無症状のことが多いですが、運動中に失神して見つかることもあります。病気が進行すると呼吸困難、胸の痛み、動悸などがみられます。心エコーで心筋が厚くなっている点と左心室の内側の容量が狭くなることで診断できます。病状により、運動制限、内服治療(βブロッカーといった抗不整脈薬)が必要になります。

一方、拡張型心筋症は心筋が収縮しづらくなり心室が拡大する病気です。1歳未満の乳児期に発症することもあり、ミルクの飲みが悪い、体重が増えない、顔色が悪い、疲れやすいといった心不全症状を伴います。心エコーで心室内腔の拡大と収縮の低下を確認できます。病状により、運動制限、内服治療が必要です。重症例は心臓移植の対象となることがあります。

感染性心内膜炎(かんせんせいしんないまくえん)

心臓の内側を覆う膜(心内膜)に感染が生じる病気です。先天性心疾患に合併する場合が多く、それ以外では極めてまれです。先天性心疾患により血液の通り道が狭くなったり、本来通らない場所を血液が流れたり、逆流したりといった異常な血流によって心内膜が傷つき、菌が血液に入ること(菌血症)をきっかけに損傷部位へ菌が定着してしまうことが原因です。虫歯(う歯)などの口腔内感染症や抜歯をした場合、肺炎、中耳炎、腎盂腎炎や中心静脈カテーテルの留置も誘因になります。この感染症にかかった場合は、細菌の塊が血管につまったり、心臓の弁が壊されることによる心不全などの合併症を伴い、10~20%の割合で命を落としうる重篤な感染症であることから、治療は入院のうえ、抗菌薬による治療を最低4週間続ける必要があります。これらを予防する目的で、先天性心疾患をもつ患者さんは菌血症をおこしうる処置(抜歯・手術)をする1時間前に抗菌薬を必ず内服するようお願いしています。先天性心疾患をもつ患者さんにおいて、発熱、微熱、疲れやすさなどが1週間以上持続する場合には、疑うべき疾患として重要です。

肺高血圧症(はいこうけつあつしょう)

肺動脈が拡張しにくくなる異常や固くなる異常により肺動脈の血圧が上昇し、肺に血液を送る右心室のポンプ機能低下から心不全をきたす病気です。肺に血液を送る右心室のポンプ機能低下による浮腫や肝臓の腫大、右心室が拡大して左心室が押されることにより左心室のポンプ機能が低下する低心拍出症状(疲れやすさ・失神など)がみられます。先天性心疾患に合併する場合もあり、専門的な治療が必要です。

診断

病気の診断・病状把握のためには、問診、診察の他に、以下のような検査を併せてすすめていきます。

  • 胸部X線
    心胸郭比(胸郭に対する心臓の大きさ)や、心陰影から心臓の各部分(左心室・右心室・右心房・左心房・肺動脈・大動脈)について、また、肺血管陰影の増減や肺うっ血像について確認します。
  • 心電図
    心拍数・電気軸・リズム・波形を基に、不整脈の有無や心筋肥大を確認します。
  • 心エコー
    先天性心疾患や川崎病・心筋症の診断、状態評価、心臓の構造と機能について確認します。
  • 心臓カテーテル検査
    心臓各部分の酸素濃度・圧力を測定する詳しい検査です。また、造影剤を用いて血液の流れ、血管の狭窄・拡張、弁逆流、心室形態・機能などの評価を行います。手術実施の可能性や手術後の状態の評価に重要です。
  • CT
    心臓の立体的な構造と肺・縦隔等との位置関係について検査します。
  • MRI
    CTと同様に立体構造について確認します。また、心室容積・心筋重量計測などの心機能評価を行います。
  • 血液検査
    心臓から分泌されるホルモンのBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)で心不全の程度の評価を行います。心筋障害マーカーのトロポニンTやH-FABP(ヒト心臓由来脂肪酸結合蛋白)で心筋梗塞について評価します。

文責: 小児科外部リンク
最終更新日:2024年2月29日

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