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ベーチェット病 (Behçet's disease: BD)

べーちぇっとびょう

概要

ベーチェット病は、腔粘膜のアフタ性潰瘍、外陰部の潰瘍、皮膚症状、眼症状を主症状とする全身の炎症性疾患で、時には腸管や血管、神経も障害されることがあります。トルコの眼科医ベーチェットが最初に報告したことからこの名前が付けられました。長い経過の中で、消長を繰り返すのがこの病気の特徴ですが、眼病変は失明の原因となり、腸管、血管、神経の病変は生命にかかわることもあるので、十分注意が必要です。

ベーチェット病の原因は現在も明らかではありません。発症には遺伝素因と、環境要因の両方が関与するとされています。例えば、遺伝素因の1つとして、ヒト白血球抗原(HLA)の中でHLA-B51というタイプを持っていることは、ベーチェット病発症のリスク因子の一つとして考えられています。日本では約2万人の患者さんがいると推定され、性別による発症の偏りはありませんが、男性の方が重症化しやすく、内臓病変を持つことが多いとされています。発病年齢は20~40歳に多く、30歳前半がピークです。最近は症状が以前よりも軽症化し、新たな患者さんが減少する傾向にあります。

世界的にみると、日本で患者数が最も多く、韓国、中国、中近東、地中海沿岸諸国にみられることからシルクロード病とも呼ばれています。日本では北海道、東北に患者さんが多く、北高南低の分布を示します。

厚生労働省では、難病とされる、原因が分かっていない病気のいくつかについて、国の事業として年1回調査をし、重症度に応じて医療費の補助を行っています。そのような調査の対象になっている病気のことを「特定疾患」と呼んでおり、ベーチェット病もそのひとつです。

症状

ベーチェット病は様々な症状の組み合わせで判断されます。その症状は、全身性で多岐にわたりますので、ここでは4つの代表的な症状(主症状)について触れたいと思います。

口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍

最初に出現することが多いとされる症状で、口唇(図1)、頬、舌、歯肉、口蓋など粘膜面に境界のはっきりした潰瘍ができます。強い痛みを伴うのが特徴的で、ほぼ必発(98%)の症状と考えられています。

図1

図1.

皮膚症状

下腿伸側や前腕に結節性紅斑がみられます。赤く腫れて硬く触れ、痛みを伴います。またにきびに似た皮疹が顔や首、胸部、背中にできます。さらに皮下には血栓を伴って静脈が炎症を起こす血栓性静脈炎がみられることもあります。皮膚は刺激性に対して敏感な状態になっており、注射で針を刺した後に発赤、腫脹、小膿疱を形成することがあります。この現象は、針反応と呼ばれています。

眼症状

この病気で最もコントロールの難しい重要な症状のひとつです。両眼が傷害されるのが一般的です。眼の前側の病変として、虹彩・毛様体に炎症が起こって蓄膿が生じ、まぶしい、視野がぼやけるなどの症状がみられます。後側の病変として、網膜脈絡膜炎を起こし、視力低下から失明に至ることもあります。

外陰部潰瘍

男性では陰嚢、亀頭に、女性では陰唇、膣の粘膜に痛みを伴う潰瘍ができます。口腔にできる潰瘍と同様に痛みが強いのが特徴です。ほかの疾患によってできることもあるので、区別することが大事です。

そのほかの症状として関節炎や、頻度はまれですが副睾丸炎を起こすこともあります。また、血管、神経、腸管に病変を起こすこともあります(これらを副症状ともいいます)。

診断

日本では厚生労働省ベーチェット病診断基準外部リンクを参考に、上記の症状から総合的に診断されることが多いです(下図参照)。しかし、ベーチェット病は特定の検査で診断ができる疾患ではなく、あくまで症状の組み合わせで診断していること、また症状も他の疾患でもみられるもので、診断の確定が難しいことがあります。また、病型としては主症状がすべてそろったものを「完全型」、そろわなかったものを「不全型」と分類し、血管、神経、腸管が障害されている症例では、それぞれ血管型、神経型、腸管型と分類され、特殊病型と総称されます。

図2 ベーチェット病の診断と病型

治療

ベーチェット病の治療方針としては、(1)症状が出現した時の急性炎症を抑える治療、(2)症状の出現を抑える(発作予防)の治療とに分かれます。それぞれの患者さんで症状が異なるため、病態の重症度、後遺症を残す可能性を考慮し、局所治療か、全身性の薬剤投与を行うべきかを決めます。

  1. 日常生活への影響が少なく、後遺症も少ない症状(粘膜病変、関節病変)
    局所療法や、対症療法が主体となります。内服薬としてコルヒチンが用いられることもあります。
  2. 日常生活が障害され、後遺症が残る可能性があるもの(主に眼症状)
    局所の免疫抑制療法、ならびにアザチオプリン(イムラン®、アザニン®)、シクロスポリン(ネーラル®)などの全身的な免疫抑制薬の投与が主体となります。
    最近ではTNF阻害薬のひとつであるインフリキシマブ(レミケード®)が難治性眼病変および腸管型・神経型・血管型ベーチェット病に、アダリムマブ(ヒュミラ®)が難治性の腸管病変に投与されるようになりました。
  3. 生命が脅かされる危険性があるもの(主に特殊病型の重症例)
    中等量~大量ステロイド投与が主体となります。

生活上の注意

感染症や喫煙、外界からのストレスが誘引となることが報告されています。衛生面での管理、禁煙をすること、バランスのとれた食事内容、ストレスの軽減をおすすめします。全身の休養が重要と考えられます。


慶應義塾大学病院での取り組み

当院リウマチ内科には約50人のベーチェット病の患者さんが通院されています。ベーチェット病に関する病因解明など研究にも積極的に取り組んでいます。眼科や皮膚科、消化器内科、神経内科などと連携を取りながら、適確な診断、治療を心がけています。

さらに詳しく知りたい方へ

文責: リウマチ・膠原病内科外部リンク
最終更新日:2019年3月5日

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