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小児の感染症と予防接種

しょうにのかんせんしょうとよぼうせっしゅ

よくみられる小児感染症

インフルエンザ(インフルエンザウイルス感染症)(通常の潜伏期間は1~4日)

冬に流行する、風邪の王様です。突然の寒気と高熱で発症し、だるさ、関節痛や筋肉痛、咳や鼻などの呼吸器の症状、時には腹部の症状を伴います。熱性けいれん中耳炎、肺炎、まれに脳症(発熱・意識状態の低下・けいれん)、筋炎などを合併することがあります。10代を中心として起こる異常言動や異常行動(まれに建物からの飛び降りなど)が合併症になることがあります。

経口薬のタミフル®やゾフルーザ®、吸入薬のリレンザ®、イナビル®、のいずれかを、発症の2日以内に開始すると、発熱の期間が短縮します。また、点滴のラピアクタ®という薬もあります(慶應義塾大学病院の外来では用いておりません)。ヒトに流行を起こすインフルエンザには、A H1N1型、A香港型、B型(山形系統、ビクトリア系統)の4つがあり、通常はこのうち少なくとも1つが、毎年変化して流行します。現在使われている不活化ワクチンには、必ずこの4つのウイルス成分が含まれていますが、特殊なインフルエンザ(ワクチンとかけ離れた型や、鳥インフルエンザなど)には効果がありません。毎年秋に任意で1~2回ワクチンを接種し予防しますが、効果が低いことがあるため、ワクチンを接種しても油断は禁物です。

RSウイルス感染症(潜伏期間は3~8日)

以前は秋から冬にかけて流行していましたが、徐々に夏から流行が始まるようになってきました。新型コロナウイルス感染症の流行が始まってからは特に流行の時期が大きくずれるようになっています。鼻風邪で終わることもありますが、乳幼児は鼻汁、咳、発熱、喘鳴(ぜんめい:ぜーぜー)を起こすことがあります。2歳までにほとんどすべてのお子さんがかかるといわれています。乳児や、心臓や肺に疾患をお持ちのお子さん、免疫抑制剤を使用されているお子さんは、特に注意が必要です。当院ではこのような患者さんが多いため、RSウイルス感染症のお子さんの入院には特に注意を払っていることをご理解ください。治療薬はなく、対症療法(症状に合わせた治療)を行います。早く生まれたお子さんや心疾患をお持ちのお子さん、ダウン症や免疫不全の患者さんは、流行期に合わせて感染を予防するための注射薬(シナジス®)を毎月受けることができます(年齢などの条件付き)。似たような症状を起こす春先から夏前のウイルスとして、ヒトメタニューモウイルスがあり、典型的には熱が4~5日続きます。

新型コロナウイルス感染症(潜伏期間 最近では3日前後)

新型コロナウイルス感染症とはSARS-CoV-2というウイルスによって起こる病気で、2019年12月に中国の武漢で発見されました。感染力が非常に強く、瞬く間に世界中に広がりました。感染者の鼻や口から放出される感染性ウイルスを含む粒子を吸い込んだり、ウイルスを含む飛沫が口、鼻、目などの露出した粘膜に付着したり、ウイルスを含む飛沫を直接触ったか、ウイルスが付着したものの表面を触った手指で露出した粘膜を触ったりすることで感染します。症状としては感冒やインフルエンザ、肺炎によく似た呼吸器症状が中心です。しかしながら呼吸器系以外にも身体が影響を受けることがあり、様々な症状が出る可能性があると言われています。治療としてはステロイドや抗ウイルス薬など、メカニズムの異なるいくつかの薬が使用されています。小児では成人に比べて使用できる薬の種類が限られていることに注意が必要です。現在も新たな治療薬やワクチンが日々開発されています。

上記にあげた様々なウイルス疾患の診断は、鼻に綿棒を入れて粘液を採取し、迅速抗原検査やPCR検査で行います。迅速抗原検査については、提出した検体の処理は簡便なのですが、発症から間もない場合には診断を確定できないことがあります。PCR検査については、精度は高いのですが、高価な機器を必要とし、治っても数週~数か月陽性が続くことがあります。

ロタウイルス感染症(潜伏期間は1~3日)

冬から春先にかけて流行する、嘔吐・下痢症(しばしば白色下痢)です。高熱が出ることもあります。乳児では脱水のため、場合によっては入院が必要です。まれに、脳症やけいれんを起こすことがあります。便を採取し、検査キットでウイルスを検出します。治療は対症療法です。乳児早期に飲む生ワクチンが、有効な予防方法となります。

ノロウイルス感染症(潜伏期間は1~2日)

秋から冬にかけて流行する、嘔吐・下痢症です。わずかなウイルスで感染するため、人から人(吐物や便から口)への伝染性が非常に高く、お子さんからお年寄りまで幅広くかかります。通常、対症療法で2~3日で治まります。年明けから春先まで、汚染された食品からの食中毒も起こします。ワクチンはありません。

流行性ウイルス疾患(潜伏期間は麻疹10~18日、水痘10~21日、おたふくかぜ(ムンプス)16~25日、風疹14~21日)

いずれも、発症するとほぼ全員が同じような症状を起こす極めて伝染性の高いウイルス感染症で、生ワクチンで予防することができます。通常は一生に一度しか、かかりません。麻疹は高熱、感冒症状、頬粘膜にコプリック斑(周囲に発赤を伴う白色斑点)と、後に出現する全身の発疹を、水痘はかゆみを伴う全身の水疱(すいほう)を、おたふくかぜは耳下腺や顎下腺の腫(は)れを、風疹は数日間の微熱、発疹、リンパの腫れを特徴とします。主な合併症として、麻疹は肺炎や脳炎、水痘は皮膚への細菌感染、おたふくかぜは髄膜(ずいまく)炎、難聴や思春期以降の精巣炎・卵巣炎、風疹は関節炎が挙げられます。最近では、風疹は主に中年男性の病気で、流行すると妊婦に感染し、先天性風疹症候群(胎児へのさまざまな合併症)が増加するため、問題となっています。水痘にのみ抗ウイルス薬があります。

その他のウイルス感染症

エンテロウイルス感染症は夏に流行し、ヘルパンギーナ(発熱、喉(のど)が腫れて口の中に水疱ができる)や手足口病(手足口に紅斑や水疱ができる)が有名です。また、嘔吐・下痢症、髄膜炎(通常は無治療で軽快)を合併することや、まれに心臓の筋肉や脳に障害を来すこともあります。

アデノウイルス感染症は、種類によっては結膜炎、咽頭炎、肺炎、腸炎、膀胱(ぼうこう)炎などを起こします。発熱・喉の発赤・結膜炎を伴うものをプール熱(咽頭結膜(いんとうけつまく)熱)といい、発熱が5日程度続きます。

突発性発疹(とっぱつせいほっしん)はヒトヘルペスウイルス6ないし7型によって起こります。生後半年から1歳前後にみられ、数日間持続する発熱と解熱後の体の発疹を特徴とします。時には熱性けいれんを合併します。上記いずれも、合併症がなければ、対症療法で軽快します。無症状の家族からうつるとされています。

溶連菌(ようれんきん)感染症(潜伏期間2~5日)

発熱、咽頭痛を特徴とします。舌がイチゴ状にぶつぶつしたり、体に発疹が出ることもあります。喉を綿棒でぬぐって粘液を採取し、検査キットで菌を検出します。抗菌薬を使えば、1~2日で人には感染しなくなり、1~3日程度で症状も軽快しますが、非常にまれな合併症であるリウマチ熱(心臓や関節の炎症)の予防のために通常10日間内服します。回復期の合併症として、腎炎(じんえん:血尿や蛋白尿)、リウマチ熱などがあり腎炎を否定するため通常回復期に尿検査を行います。また、この菌は、とびひ(伝染性膿痂疹(のうかしん))の原因にもなります。

マイコプラズマ肺炎(潜伏期間1~4週間)

発熱、乾いた咳で発症します。持病を持たない健康な学童期前後のお子さんにみられる、最も代表的な肺炎です。喉を綿棒でぬぐって粘液を採取し、検査キットで菌を検出します。よく用いるペニシリンやセファロスポリン系抗菌薬が効かないため、主にマクロライド系の抗菌薬で治療します。

以上、人から人にうつる、代表的な小児感染症をあげさせていただきました。

体の部位ごとにみた小児感染症

呼吸器

鼻や喉を中心とする上気道炎、気管支や肺まで炎症が到達する下気道炎、声門の下部に炎症を起こすクループなどがあります。上気道炎の原因は、溶連菌を除くとほとんどウイルスです。下気道炎(肺炎や気管支炎)の原因としては、乳幼児ではRSウイルス、肺炎球菌、インフルエンザ菌、幼児後期から学童ではマイコプラズマという細菌の頻度が高くなります。クループは乳幼児に多く、夜間のケンケンした咳(イヌが吠える声、アシカやオットセイの鳴く声)を特徴とし、原因としてパラインフルエンザウイルスが有名です。ウイルスが原因の場合には抗菌薬は効果がありませんが、細菌が原因と考えられる場合には抗菌薬を用います。

消化器

嘔吐、下痢、腹痛、時には発熱を伴います。夏にはカンピロバクター、サルモネラ、病原性大腸菌などの細菌やエンテロウイルスによるもの、秋から春には上述のノロウイルスやロタウイルスによるものが有名です。血便が出たときには、細菌性を疑います。いずれも対症療法が中心です。

脳神経

頻度が多いものとして、熱性けいれんがあげられます。その他、髄膜炎や脳炎・脳症が有名です。髄膜炎は、発熱、頭痛、嘔吐、首を前に曲げられないなどを特徴としますが、乳幼児では発熱・不機嫌・元気がないなどで気づくこともあります。また、細菌性髄膜炎、脳炎・脳症では、けいれんや意識状態の低下がみられます。細菌性髄膜炎は主に肺炎球菌、ただし乳児早期ではB群連鎖球菌や大腸菌などの細菌によって発症し、入院の上、大量の抗菌薬を投与しなければなりません。不活化ワクチン(ヒブ・肺炎球菌の各ワクチン)の普及で、インフルエンザ菌(ヒブ)や肺炎球菌による髄膜炎は減少しています。

注)冬に流行するインフルエンザと、上記のインフルエンザ菌とは、全く別のものです。

ウイルス性髄膜炎は、エンテロウイルスやムンプス(おたふくかぜ)ウイルスなどによって発症し、対症療法で通常は軽快します。脳炎・脳症の原因としては、単純ヘルペスウイルスやインフルエンザ、ヒトヘルペスウイルス6が有名で、早期に治療を開始する必要があります。

尿路(尿の通り道)

乳幼児が発熱のみで他の症状を伴わない際に考えるべき疾患として尿路感染症があり、尿路である腎臓~尿管~膀胱に細菌(大腸菌など)が繁殖します。尿検査と血液検査で診断をします。尿の流れの異常、尿路や腎臓の形や機能の異常を伴うことがありますので、感染症自体が抗菌薬で治っても、画像の検査をする必要があります。

皮膚

傷口や、かきむしった虫刺されの跡などから菌(溶連菌や黄色ブドウ球菌)が侵入し繁殖することがあり、抗菌薬を用います。また、乳幼児では、ブドウ球菌の毒素によって皮膚が剥離(はくり)する病気(ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群:SSSSという病気です)があり、その場合には通常入院が必要です。

長期入院患者さんにみられる感染症

栄養点滴、人工呼吸器、尿道カテーテル(尿を出やすくするために挿入する管)、中心静脈カテーテル(太い静脈に留置して、そこから栄養や輸液を入れる点滴の管)を使用している患者さんや手術患者さんでは、時に点滴部の感染、肺炎、尿路感染、手術部位の感染を起こします。原因として黄色ブドウ球菌(メチシリン耐性、いわゆるMRSAなど)、表皮ブドウ球菌、緑膿菌(りょくのうきん)、環境菌などの特殊な菌が多く挙げられます。これらの菌は、元々多くの抗菌薬に効きが悪いという性質を持つため、その治療も複雑で長期にわたることがあります。

小児への予防接種(ワクチン)

お子さんへの予防接種には、指定された年齢範囲で、指定された施設で接種するもの(定期接種)と、そうでないもの(任意接種)があります。また、微生物を生きたまま弱毒化してある生ワクチンと、完全に不活性化してある不活化ワクチン・トキソイド、またウイルスを構成する遺伝情報をメッセンジャーRNAという形で接種する新しいタイプのmRNAワクチンがあります。

長期の免疫力をつけるためには、生ワクチンでは1~2回の接種で良いのですが、不活化ワクチンでは3回以上あるいは毎年の接種を必要とします。接種当日は、問診の上、発熱などがないことを確認します。

慶應義塾大学病院では?

医学的理由(免疫抑制剤や抗がん剤を使用中、元の病気が安定せず接種を見合わせるように言われている等)がないにもかかわらず、定期接種であるワクチンを接種していない方がそれらの病気で受診し、周囲への予防策を取る必要が出た場合には、厳しい対応を取らせていただいています。特に当院では、ワクチンを接種したいのに、重い病気にかかっていて接種できない方を多く診ていることをご配慮ください。
特別な事業として、当院小児科感染外来では、小児外科で継続的に診察を受けている肝移植後のお子さんに対し、免疫機能を吟味した上で生ワクチンを接種しています。移植後の定期診察を当院小児外科で受けている方に限って接種していますが、2022年12月現在、約70名に対し300以上の接種が概ね有効かつ安全に行われています。

文責: 小児科外部リンク
最終更新日:2023年1月24日

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