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真性赤血球増加症・本態性血小板血症

しんせいせっけっきゅうぞうかしょう・ほんたいせいけっしょうばんけっしょう

概要

血液中を流れる主な細胞は、赤血球、白血球、血小板ですが、これらの血球は、骨の中の骨髄という組織で、造血幹細胞という細胞から作られます。この造血幹細胞に異常が起こり、必要がないのにもかかわらず、これらの血球がどんどんと産生される病気を骨髄増殖性腫瘍(myeloproliferative neoplasms:MPN)といいます。

骨髄増殖性腫瘍の中にあって、主に赤血球が増える病気が真性赤血球増加症(Polycythemia vera:PV)、主に血小板が増える病気が本態性血小板血症(Essential thrombocythemia:ET)です。真性赤血球増加症は真性多血症とも呼ばれます。真性赤血球増加症、本態性血小板血症いずれも、100万に数人の割合で発症するまれな病気で、なぜ起こるかはいまだに分かっていません。しかし、遺伝性疾患ではないので、子孫に影響することはありません。診断時の平均年齢は60歳で、20歳未満の人にみられることはめったにありません。真性赤血球増加症は男性に多くみられ、本態性血小板血症は女性に多くみられます。

症状

真性赤血球増加症と本態性血小板血症は、無症状で、健康診断などで偶然、検査異常値として発見されることが多いです。しかし、病気が進行すると、真性赤血球増加症では、赤血球の数が著しく増加するので、皮膚が赤くなる(特に顔の皮膚:赤ら顔)、眼の結膜が充血する、入浴後に全身がかゆくなる、血圧が高くなるなどの症状や所見がみられるようになります。また、赤血球が著しく増えると、血液の流れが悪くなり、頭痛、耳鳴り、めまい、視界のゆがみ、手や足の冷感や痛みなどの症状が現れます。ひどい場合には、血管の中で、血の塊(血栓)を作り、脳梗塞や心筋梗塞を起こすこともあります。本態性血小板血症でも、著しく血小板の数が増加すると、血栓ができやすくなり、真性赤血球増加症と同様の症状を起こすことがあります。また、本態性血小板血症では、血小板が増えすぎることで、逆にその機能が低下し、鼻血や歯茎に血がにじむ、あざになりやすいといった出血傾向がみられることもあります。真性赤血球増加症や本態性血小板血症では、肝臓や脾臓が腫れて、腹部の張りを感じることもあります。

診断

血液検査で、赤血球や血小板数が増えている場合に、真性赤血球増加症や本態性血小板血症を疑い検査を行います。赤血球、血小板を増加させる真性赤血球増加症、本態性血小板血症以外の様々な原因がないかを確認することと、骨髄増殖性腫瘍の中に含まれる病型の1つである慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia:CML)や骨髄線維症ではないことを確認することが必要です。

具体的には、真性赤血球増加症では、動脈血酸素飽和度の測定、赤血球を作るのに必要なホルモン(エリスロポエチン)の測定が必要です。本態性血小板血症では、炎症の指標(CRP)が正常で、鉄の不足がないことを確認することが大切です。また、どのくらい血が固まりやすくなっているかを調べるために、血小板凝集能検査を行うこともあります。いずれの場合にも、骨髄検査を行います。そして、骨髄に線維化がないことと、慢性骨髄性白血病に特徴的な染色体の異常(フィラデルフィア染色体)、あるいは遺伝子の異常(bcr-abl(ビーシーアールエーブル)遺伝子)が見つからないことを確認します。

近年、骨髄増殖性腫瘍ではJAK2(ジャックツー)遺伝子変異という特徴的な遺伝子の異常が多くみられることが分かってきました。真性赤血球増加症 では95%以上の患者さんに、本態性血小板血症 でも50%程度の患者で検出されていて、新たな診断基準の一項目となっています。この検査は採血や骨髄検査で行うことができます。

治療

真性赤血球増加症では、症状を伴う場合に、赤血球の数を減らす治療をします。瀉血(しゃけつ)といって、献血と同じように、約500mlの血液を抜き取ります。しかし、赤血球の増加が著しく瀉血が頻回になる場合、血栓による症状や既往がある場合、高齢者(70歳以上)である場合には、内服の抗腫瘍薬であるハイドレキシウレアを投与して、赤血球数を低下させます。本態性血小板血症では、血小板の数が100万/μlを超えるような場合には、アスピリンやチクロピジンなどの抗血小板薬(血小板の機能を低下させる薬)を投与して、血小板の働きを抑えます。また、血栓による症状や出血傾向がある場合や、高齢者である場合には、ハイドロキシウレアもしくはアナグレリドを投与し、その数を減らします。ハイドロキシウレアを服用している場合には、足の皮膚に潰瘍(かいよう)ができる副作用に注意する必要があります。一方、アナグレリドには不整脈を中心とした心障害、出血などの副作用に注意が必要です。

いずれの治療も、病気そのものを治すことはできませんが、コントロールすることによって、合併症(症状)の起こるリスクを減らすことができます。また、いずれの疾患も、予後は比較的良好ですが、長い経過の中で骨髄線維症に移行することがあります。またまれに急性骨髄性白血病に進行することもあります。その場合には、症状に応じた治療が必要になります。

生活上の注意

食事、運動、旅行などの日常生活全般についての制限はほとんどありません。治療の有無に関わらず、定期的に血液検査を受けることが重要です。屋外で仕事をする場合には、水分を十分に摂取して、脱水症にならないよう注意することが必要です。本態性血小板血症で、出血症状が強い場合や、抗血小板薬を服用している場合には、外傷に気をつける必要があります。また、抜歯や手術が必要な場合には、あらかじめ主治医に相談することが大切です。

慶應義塾大学病院での取り組み

真性赤血球増加症や本態性血小板血症などの骨髄増殖性腫瘍の原因となる遺伝子の変異を解析して、将来的に、病気の診断や、治療方針の決定に役立てるための研究を行っています。多施設共同による全国調査である骨髄増殖性腫瘍の実態調査の研究にも参加しています。

さらに詳しく知りたい方へ

文責: 血液内科外部リンク
最終更新日:2018年1月15日

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